【MotoE第1戦フランス大会】ドゥカティ電動レーサー「V21L」の初戦、レース2は2019年王者が優勝
バイクのニュース / 2023年5月22日 12時15分
電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』第1戦フランス大会が5月12日、13日にフランスのル・マン-ブガッティ・サーキットで行なわれ、レース1はジョルディ・トーレス選手、レース2はマッテオ・フェラーリ選手が優勝しました。レース2で優勝を飾ったフェラーリ選手は、ロングラップ・ペナルティを消化して終盤にトップを奪うというレースを演じてチェッカーを受けました。
■早くも新型マシンの性能が示される
電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』(以下、MotoE)第1戦フランス大会が5月12日、13日にフランスのル・マン-ブガッティ・サーキットで行なわれました。
MotoEは、電動バイクによって争われるチャンピオンシップです。2023年シーズンからマシンサプライヤーが変わり、ドゥカティがMotoEのために開発した「V21L」という電動レーサーを供給しています。シーズンはフランス大会を皮切りに、9月中旬のサンマリノ大会まで、MotoGPのヨーロッパ開催グランプリに併催で全8戦が予定されており、各大会で土曜日に2レースが行なわれます。
MotoE第1戦フランス大会。レース2で優勝したマッテオ・フェラーリ選手(#11)
フランス大会は、ドゥカティの電動レーサー「V21L」によって争われる初めてのレースとなりました。金曜日のプラクティス1で早くもオールタイムラップ・レコードを更新するトップタイムが記録され、「V21L」の性能が示されます。
そんな今大会のレースで優勝争いを演じたのは、ジョルディ・トーレス選手、マッテオ・フェラーリ選手、エクトル・ガルソ選手というMotoE参戦経験を持つライダーたちです。トーレス選手は2020年、2021年のMotoEチャンピオンであり、フェラーリ選手は2019年の開催初年度からMotoEに参戦し続ける2019年MotoEチャンピオン。2023年でMotoE参戦通算3シーズン目となるガルソ選手はタイトルこそ獲得していないものの、2019年に3度、表彰台に立っています。
フェラーリ選手(#11)は最終ラップでジョルディ・トーレス選手(#81)からトップを奪った
2023年からマシンがドゥカティの「V21L」になり、これまでなかったトラクションコントロールなどの電子制御が追加され、車両重量も225kgと軽量になりました(2022年で使用された電動レーサー、エネルジカ・モーター・カンパニー「エゴ・コルサ」の車両重量は247kgだった)。
電動バイクの特性や通常よりも重い車両重量による走り方、そして攻め方を知るトーレス選手は、「V21L」による今季のMotoEについて「オーバーテイクが激しくなるだろう」と、接戦を予想していましたが、初戦のフランス大会はMotoEマシンの攻め方を知っているライダーたちが激しい優勝争いを繰り広げたレースとなりました。
中でもフェラーリ選手は、電動バイクレースらしからぬ終盤の強さを発揮しました。土曜日12時10分からスタートしたレース1では、ガルソ選手とトップ争いを展開します。しかし、タイヤのパフォーマンスが低下し始め、ライダーの転倒が相次いだレース中盤、トップを走行していたフェラーリ選手も転倒を喫してリタイアとなりました。フェラーリ選手が転倒した区間は、その前周に転倒したライダーがいたために黄旗が振られており、このためフェラーリ選手はレース2でロングラップ・ペナルティ(※レース中、コース外側に設定されたエリアを通過しなければならないペナルティ。通常よりも大回りとなるため、ペナルティを消化すると数秒ロスのラップタイムとなる)を科されました。
2019年のMotoEチャンピオン、フェラーリ選手。チャンピオン候補であることを強烈にアピールするレースだった
しかし、フェラーリ選手は16時10分にスタートしたレース2で、レース1のように序盤にトップに立つと、後ろのライダーを引き離すハイペースを刻みました。そして、2番手のライダーに1秒以上のギャップを築いて5周目にペナルティを消化すると、3番手でレースに復帰します。そして残り2周で2番手に浮上してトーレス選手の背にぴたりとつけ、最終ラップの高速コーナーである2コーナーで、トーレス選手の防御を許さないスピードでインに入り、トップを奪い、優勝を飾りました。ペナルティを受けてなお、他を圧倒するレースでした。
驚くべきは、フェラーリ選手が序盤から少し遅れる程度のハイペースを保って後半も走り続けたことです。6周目には1分40秒101というベストラップを叩き出し、これは、オールタイムラップ・レコードを更新するタイムでした。
電動バイクのレースの場合、タイヤ摩耗ばかりではなく、バッテリー残量が減ってパワーが低下することで、8周という短い周回数の間にも後半にかけてタイムが落ちていきます。この特性を考えれば、序盤にハイペースを刻んだフェラーリ選手がレース終盤もトップを争うペースを維持していたことは、驚異というほかないでしょう。
2023年シーズン初戦で優勝し、幸先の良いスタートを切ったフェラーリ選手
レース後、フェラーリ選手はパルクフェルメでレース2をこう振り返りました。
「まず、チームに感謝したい。彼らはレース1からレース2にかけて、すごく懸命に作業をしてくれたんだ。バイクはレース中、素晴らしくよく走っていた。今回はグレシーニ・レーシングにとって通算200度目の表彰台で、特別な贈り物になった。とてもうれしく思っている」
「レース1でミスしたからロングラップ・ペナルティを科された。残念だったけど、どのラップでも全力を尽くしたんだ。この結果にはとても満足しているよ」
MotoE第2戦イタリア大会は、MotoGP第6戦イタリアGPに併催で、6月9日、10日にムジェロ・サーキットで行なわれます。
■FIM Enel MotoE World Championshipとは……
2019年にスタートした電動バイクによるチャンピオンシップ。2019年から2022年まではWorld Cup(ワールドカップ)として開催されていたが、2023年よりWorld Championship(世界選手権)となった。MotoGPのヨーロッパ開催グランプリのうち数戦に併催され、2023年シーズンは土曜日に各2レース開催で全8戦16レースが予定されている。バイクはドゥカティ「V21L」のワンメイクで、タイヤはミシュラン。9チーム18名のライダーが参戦し、日本人ライダーとしては大久保光選手がエントリーしている。
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