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【マン島TTレース】2023年全日程終了 なぜ最終レースは「シニアTT」と呼ぶのか?

バイクのニュース / 2023年6月23日 8時0分

現存する世界最古のバイクレースとして知られる「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」が2023年5月29日~6月10日の日程で開催され、全日程が終了しました。土曜日の最終レース、実質「スーパーバイクTTレース2」は、なぜ「シニアTT」と呼ばれるのでしょうか?

■レース専用サーキットが無かった時代に始まったTTレース

 2023年の「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」(以下、TTレース)は6月10日、土曜日に最終レースとなる「シニアTTレース」が開催され、2週間にわたるTTウィークを終えました。

昨年来1000ccクラスで圧倒的な強さを見せたピーター・ヒックマン選手。2週間にわたるTTレース最終日のタフなレースを制した(写真/小林ゆき)昨年来1000ccクラスで圧倒的な強さを見せたピーター・ヒックマン選手。2週間にわたるTTレース最終日のタフなレースを制した(写真/小林ゆき)

「シニアTT」での注目選手は、昨年から1000ccクラスで絶対的な強さを見せるピーター・ヒックマン選手(BMW M 1000 RR)、伯父のTTレース最多勝利記録にあと1勝に迫るマイケル・ダンロップ選手(HONDA CBR1000RR-R Fireblade SP)、ここのところ毎レース確実に表彰台に登るディーン・ハリソン選手(KAWASAKI Ninja ZX-10R)、そしてBSB(ブリティッシュ・スーパーバイク選手権シリーズ)でランキング上位かつ今年TTに復活参戦しているジョシュ・ブルックス選手(BMW M 1000 RR)らです。

 TTレースは世界一過酷なバイクレースと言われます。その由縁は、市街地から山間地、線路の横断まで様々な条件や地形の道路を、1周約60kmもの長距離で設定している公道サーキットだということだけでなく、2週間の会期中、多いと1人4クラス・計8レースものレースに参戦することにあります。

 周回数はクラスによって3周から6周。「スーパーバイク」と「シニアTT」は6周となっており、およそ360kmもの距離を1人で走るスプリント耐久レースなのです。

 ちなみに現在のMotoGPは、だいたい1レースで100km強の距離となっています。つまりライダーはもちろん、マシンも2週間にわたるTTウィークの最後まで持つかどうかが結果に直結するのです。

 そんな2023年のTTレースの最終レースである「シニアTT」を征したのは、昨年も圧倒的な強さを見せたヒックマン選手(Monster Energy by FHO Racing BMW)でした。もっとも長いストレートである「サルビストレート」の最高速度は、じつに時速199.311マイル(318.9km/h)を記録。1周のラップタイム16分42秒367と、平均時速135.507マイル(216.811km/h)の記録を更新しての優勝でした。

参戦選手の国旗を掲げるためにスタート地点に移動するスカウトの少年少女たち。昨年からグランドスタンド前の「スコアボード」が廃止されたため、スカウトが活動する場はスタート時と表彰式の国旗掲示だけとなった(写真/小林ゆき)参戦選手の国旗を掲げるためにスタート地点に移動するスカウトの少年少女たち。昨年からグランドスタンド前の「スコアボード」が廃止されたため、スカウトが活動する場はスタート時と表彰式の国旗掲示だけとなった(写真/小林ゆき)

 ところで、なぜTTレースの最終レースは、実質「スーパーバイクTTレース2」なのに「シニアTT」と呼ばれているのでしょうか? それにはTTレースの歴史的な紆余曲折があったレース格式の変更が関係してきます。

 TTレースが始まったのは、まだレース専用サーキットがこの世に存在しなかった1907年のことです。

 モータースポーツの黎明期に画期的な「コース・マーシャル制度」(=地元の組織力に優れる漁夫や炭鉱夫たちをコース管理の担当として採用、モータースポーツに関わることにステイタスを持たせた)を発足させたり、スカウトの少年少女たちにスコアボード(=どのライダーがどの位置にいるか、何周走ったかを示すボード)を担当してもらい、世代を超えてモータースポーツ文化を醸成するなど、歴史を重ねた結果、世界大戦後に始まった現在の「MotoGP」シリーズに続くこととなる「オートバイロードレース世界グランプリ選手権シリーズ」の第1回目の地として選ばれたのでした。

 TTレースのクラス分けは、もともと「単気筒」と「2気筒」に分けられていました。

 現在のTTマウンテンコースが使用されるようになった1911年からは、排気量別に「ジュニア」と「シニア」に分けられ、1922年にはさらに「ライトウエイト」クラスも加わりました。モーターサイクルの技術的革新と普及が進み、1924年にはさらに「ウルトラ・ライトウエイト」クラスも加わったりしました。

 そして戦後、世界GPシリーズの1戦となってからも、排気量別のカテゴリーとして「ライトウエイト」「ジュニア」「シニア」などクラス分けはTTレースならではの呼び方が使用されていました。

ウィナーズ・エンクロージャーでお決まりポーズを決める上位3選手(写真/小林ゆき)ウィナーズ・エンクロージャーでお決まりポーズを決める上位3選手(写真/小林ゆき)

 また時流に合わせて、入門クラスの「クラブマン」や、市販車改造クラスの「フォーミュラ」、「プロダクション」などが加わるなどしましたが、「シニア」はあくまで最終日の最終レースとして開催されていました。

「シニア」が単なる排気量別クラスとしての意味合いではなく、現在のTTレース最高峰レースとしての意味を持つようになるのは、TTレースが世界GPシリーズから外れた1977年のことでした。

 この年、現在の世界スーパーバイク選手権シリーズ(WSBK)の元となる「フォーミュラ1」や「フォーミュラ2」、「フォーミュラ3」クラスがTTレースに加わりました。しかしながら、世界GPを走る500ccマシンによる「シニア」クラスも続行。それがいつしか、最終日の最終レースの意味合いを持つようになり、TTウィークに開催される大排気量以外のクラスの上位選手も出場できるようになったり、スーパーバイクレギュレーションになってからも2ストローク500ccの世界GPマシンが参加できたりしたことから、「シニア」はTT最高峰の意味を帯びるようになりました。

「シニアTTレース」はレギュレーションにより、主催者が認めればスーパーバイク規格ではないマシンでも出場できる。ベテランのマイケル・ルッター選手は、ホンダ「RC213V」で出場した(写真/小林ゆき)「シニアTTレース」はレギュレーションにより、主催者が認めればスーパーバイク規格ではないマシンでも出場できる。ベテランのマイケル・ルッター選手は、ホンダ「RC213V」で出場した(写真/小林ゆき)

 現在の「シニア」は、事実上「スーパーバイクレース2」ですが、スーパーバイクとシニアは主催者が認めたマシンなら規定以外のマシンも出場できる、とレギュレーションに明記されています。これにより、今年はベテランのマイケル・ルッター選手がホンダ「RC213V」で出場しました。

 世界でもっとも過酷なレースのひとつであるTTレースの最高峰「シニアTT」は、2023年のエントリー台数は61台、予選を経て44台がスタートリストに載り、完走したのは31台でした。

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