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『伊豆スカイライン』バイク通行止め問題 14年目の「伊豆セーフティドライブ作戦」でどう変わった?

バイクのニュース / 2023年7月18日 10時10分

かつての『伊豆スカイライン』は、乗用車を追い越そうとしたバイクが反対車線に出た瞬間に、対向車と正面衝突するなどの痛ましい事故が問題になっていました。この夏、戻りつつある利用者と共に、再び懸念されるバイク事故の増加。「伊豆セーフティドライブ作戦」14年目を迎えた現場をたずねました。

■「バイク通行禁止」がささやかれた“伊豆スカ”を抜け出すことはできたか?

 約40kmの自動車道で毎年数十件の死傷事故が発生していた静岡県『伊豆スカイライン』。事故多発でバイクの通行禁止も検討されかけた県東部を代表する観光道路は、どうなっているのでしょうか。「伊豆セーフティドライブ作戦」は、痛ましい事故をゼロにしたい、危機感を募らせた警察とともに事故抑止に挑んだ地元ライダーの象徴的イベントでした。

「伊豆セーフティドライブ作戦」の出発式には地元の大仁警察署、三島警署だけでなく、交通機動隊も加わった「伊豆セーフティドライブ作戦」の出発式には地元の大仁警察署、三島警署だけでなく、交通機動隊も加わった

 2023年7月15日午前、3連休初日は重たい雲に小雨が混じる曇り空でしたが、東京方面からの玄関口となる熱海峠料金所では、多くのツーリング・ライダーが通行料金支払いの列を作っていました。

 一方、この伊豆スカイラインのほぼ中間、伊豆半島の山側と海側の分岐点となる「亀石峠IC」(伊東市宇佐美)の本線上にある駐車場には、交通機動隊の白バイ、地元警察署のパトカー、道路関係者、「事故ゼロ小隊」の制服に身を包んだライダー約40人が車両と共に整列し、出発の合図を待っていました。

 彼らが目的としたのは、ともすれば上昇しがちなバイクの走行スピードを抑えるためのペースメイク走行です。先頭に数台の白バイ、そのあとに地元ライダーが自分のバイクで続き、制限速度で走ります。

 地元の代表は伊豆市在住で献身的に事故削減に取り組むモータージャーナリストのカズ中西さん。「事故ゼロ小隊」の小隊長です。伊豆スカイランを走るライダーの変化をこう話します。

「最近の事故は、一言でいうと“スピードを出し過ぎて曲がれない”。初心者の場合は、気が付いた時には止まれないほどスピードが上がっている。リターン・ライダーは昔の感覚で走ったけど、身体が付いていかない」

「運転に慣れない人に、どうしたら自分の運転に注意してもらえるか。目的は同じでも、今までとは違う形で」と、訴えます。

 不慣れな運転が原因の事故は、乗用車でも増えているようです。伊豆スカイラインを管理する静岡県道路公社東部管理センターの芹沢仁所長はこう話します。

「レンタカーが増えている感じを見ると、運転に不慣れなのか、料金所で支払いのために並ぶ車両に追突するなど、初心者にありがちな事故が増えています」

■地元ライダーが県外ライダーの安全を祈願、ゆとりあるツーリングを

 大仁警察は伊豆スカイラインを管轄する地元警察署のひとつです。高橋文典署長は、「事故抑止対策を始めたきっかけをこう説明します。

2022年に静岡県内で起きた観光目的のバイク事故死傷者数の内訳(県警本部交通企画課)。静岡県東部(伊豆地域)のバイク事故は、県外ライダーが半数以上を占めていた。ツーリングに無理な計画を立てていないだろうか2022年に静岡県内で起きた観光目的のバイク事故死傷者数の内訳(県警本部交通企画課)。静岡県東部(伊豆地域)のバイク事故は、県外ライダーが半数以上を占めていた。ツーリングに無理な計画を立てていないだろうか

「この作戦も今年で14年目になる。経緯は平成20年(2008年)ごろ、伊豆スカイラインの本線上で死亡事故も含めて30件ほどの交通事故が発生していました。事故の原因は二輪車の速度超過や無理な追い越し。多方面から二輪車の安全対策を強く求められたことから始まりました」

 東西に長い静岡県は、伊豆半島を中心とする東部、県庁所在地である静岡市のある中部、ライダーにはなじみ深い浜松市、磐田市などを含む西部に分かれます。

 県警本部交通企画課の岡澤尚浩管理官は、伊豆スカイラインのある東部の交通抑止の難しさを、次のように説明します。

「2022年中の県内の事故を分析すると、伊豆スカイラインのある東部の二輪車の事故は、半数以上が県外ライダーの事故。県内ライダーの起こす事故が多い中部、西部とは大きな違いがあります」

 14年間続く「伊豆セーフティドライブ作戦」では、事故ゼロ小隊の地元ライダーが、パーキングで休憩中の県外のライダーに、伊豆スカイラインだけでなく、無事に自宅に帰るまでがツーリングと話しかけていました。

「こういう話を嫌がるライダーもいるのですが、そういう時にはまず相手の話を聞く。そこで初めてこちらの話も聞いてもらえる」(カズ中西さん)

 こうした地道な活動が実を結びます。昨年の伊豆スカイラインでのバイク事故を、前述の髙橋署長は次のように説明しました。

「その後、みなさんの献身的な対応により、昨年の本線における交通事故は8件にまで減少し、死亡事故はなかった。熱心、献身的な対応に切に感謝申し上げます」

 ただ、伊豆スカイラインを管理する東部事務所は「(無謀運転で)たいへん怖い思いをしたという苦情はたびたびある」(芹沢所長)と言います。1年を通してみると、バイク事故は8月から再び上昇に転じる傾向があります。

 伊豆スカイラインでは0件ですが、2023年静岡県内のバイク乗車中の死亡事故は、新東名、東名の高速道路の事故を含めて5人、前年同日比で2人増えています。ゆとりある運転で安全確保が必要です。

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