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カワサキ「Ninja ZX-4R」試乗【前編】 乗って分かったネガティブな要素と開発者の声

バイクのニュース / 2023年7月22日 7時10分

2023年7月15日から発売が始まったカワサキのニューモデル「Ninja ZX-4R SE」「Ninja ZX-4RR KRT EDITION」に豊富な経験を持つジャーナリスト 伊丹孝裕さんが試乗しました。どのような印象を受けたのでしょうか。

■期待値の高い「Ninja ZX-4R」の実力は?

 先にネガティブな話をしておきましょう。2023年7月15日から発売が始まったカワサキのニューモデル「Ninja ZX-4R SE」(以下ZX-4R)と「Ninja ZX-4RR KRT EDITION」(以下ZX-4RR)のことです。先頃、袖ケ浦フォレストレースウェイ(千葉県)で開催された試乗会に参加できたため、そこで体感した素性の一端を報告しておきます。

カワサキ「Ninja ZX-4R SE」を試乗する筆者(伊丹孝裕)カワサキ「Ninja ZX-4R SE」を試乗する筆者(伊丹孝裕)

 もちろん、ZX-4R/RRに対する期待値は高いものでした。なにせ「Ninja ZX-25R」(249cc・以下ZX-25R)とほぼ共通の車体に、399ccの直列4気筒を搭載しているのです。ZX-25R用エンジンのボア×ストロークを拡大し、それに合わせて足まわりを強化したメーカー謹製チューニングマシンと表現してもよく、4輪に例えるなら、かつてのホットハッチやボーイズレーサーがそれに近い存在と言えるでしょう。

手前からカワサキ「Ninja ZX-4RR」「Ninja ZX-4R SE」手前からカワサキ「Ninja ZX-4RR」「Ninja ZX-4R SE」

 スリムでコンパクトな車体、そこに押し込められたパワフルな高回転ユニット、俊敏なフットワーク。それらのパフォーマンスをフルに引き出し、スペックでは太刀打ちできるわけもないビッグバイクをコーナー毎に追い詰めていく。ZX-4R/RRにはそんなイメージがほとばしり、いい大人がわくわくせずにはいられません。

 そのイメージはしかし、半分その通りで、半分肩透かしでした。前を走る仮想リッタースーパースポーツにコーナリングで迫っていこうにも、実際にはそれがとても難しい。進入や旋回スピードをやすやすとは稼がせてくれないからです。

■その理由は……

兄弟モデルといえる「Ninja ZX-25R」とは異なりフロントにダブルディスクを採用するカワサキ「Ninja ZX-4RR」「Ninja ZX-4R SE」兄弟モデルといえる「Ninja ZX-25R」とは異なりフロントにダブルディスクを採用するカワサキ「Ninja ZX-4RR」「Ninja ZX-4R SE」

 まず、大きな理由が明確に重いということ。ZX-25Rの車重184kgに対し、ZX-4Rは190kg、ZX-4RRは189kg。エンジンの構成パーツ、大型化されたマフラー、前後ともワイドになったタイヤなど要因はいくつもありますが、たったそれだけの差といえば、その通り。しかしながら、シングルディスクだったフロントブレーキがダブルディスクになったことの影響は、思いのほか大きかったのです。

 無論、増大したパワーに備えて制動力を引き上げるのは当然であり、安全装備として確実に機能しています。ダブルディスク化といっても、単にZX-25R用のそれを1枚追加したわけではなく、ディスクを小径化(310mm→290mm)するなど、重量と慣性モーメントの増大は最小限に留められているのです。

 それを踏まえてもなお、車体をリーンさせる時の手応えはかなり強く、一定のバンク角に達してもフロントタイヤが外へ逃げたがるのがもったいない。旋回前に描いたイメージよりもラインが大きくなりやすく、要するにインにつきづらい。

カワサキ「Ninja ZX-4RR KRT EDITION」を試乗する筆者(伊丹孝裕)カワサキ「Ninja ZX-4RR KRT EDITION」を試乗する筆者(伊丹孝裕)

 コーナーの大小によって、旋回特性が大きく変わったりするわけではありません。したがって、ある程度慣れれば、それを見越した組み立てができるものの、モデルのキャラクターからすれば、車体を鋭く倒し込み、可能な限りコンパクトなラインでクリッピングに向かい、パワーバンドをキープしたまま立ち上がりでは矢継ぎ早にシフトアップしていく。そういうアップテンポなリズムに乗りたい気持ちとは裏腹に、動きが終始スローなのです。

 もっとも、その重さが車体の安定性に転化されていればいいのですが、フロントタイヤの接地感はむしろ希薄で、やや遠いところにある感覚。これは動き過ぎるサスペンション、それにともなう車体姿勢、タイヤのキャラクターなども要因でしょう。

 SHOWA製のフルアジャスタブルリヤショック「BFRC-lite」を装着するカワサキ「Ninja ZX-4RR KRT EDITION」 SHOWA製のフルアジャスタブルリヤショック「BFRC-lite」を装着するカワサキ「Ninja ZX-4RR KRT EDITION」

 コーナリングの初期段階でフロントフォークがやや入り過ぎること、その領域での減衰力が弱めなこと、リヤショックもやはり味つけがソフトなこと、旋回中の姿勢が尻下がりに感じられること。いざスロットルを開ける段階ではそれらが影響し合い、腰砕け感とタイヤのグリップ不足を誘発。ここからという時に開け切れない場面が幾度かありました。

 これはスタンダードモデルのZX-4Rでも、SHOWA製のフルアジャスタブルリヤショック「BFRC-lite」を装着するZX-4RRでも基本的に同様で、ただしZX-4RRの方は、ZX-4Rよりもひと踏ん張りしてくれます。

■開発ライダーに率直な印象を伝えてみると……

カワサキ「Ninja ZX-4R」シリーズの開発陣カワサキ「Ninja ZX-4R」シリーズの開発陣

 さて、こうしたネガティブな印象のあれこれを、開発ライダーのひとりに率直にぶつけてみたところ、次のように答えてくれました。

「重さに関しては、おっしゃる通りだと思います。ただし、ブレーキはシングルではもたないのも事実なので、たとえばディスク厚は弊社でこれまでに実績のない4.0mm厚(ZX-25Rは4.5mm厚)を幾度もテストして選択。重量と制動力のバランスを図っています。振り回せる250と異なり、400の乗り味は、どちらかといえば600に近づいていくため、その手応えを上質さと捉えて頂けるとありがたいです。実際、サスペンションのダンピングとフロントのバネレートは上がっていますし、そのぶん、ライダーひとりひとりの要求に応えてくれる懐の深さがあります。走る楽しみはもちろんですが、自分好みのハンドリングを作る楽しみも堪能して頂きたいですね」

筆者:600に近づくということは、速さも相当なものなのでしょうか?

「オートポリスでZX-25RとZX-4R/RRを比較した場合、ZX-4R/RRの方が余裕で10秒以上の差をつけますね。ノーマルのままでもかなり攻められるポテンシャルがありつつ、それでいて日常を犠牲にしない手頃なスーパースポーツになっています。私自身、サーキットだけでなく、ワインディングもしばしば楽しみますが、600や1000だとどうしても跳ねてしまうような場面でも、400なら躰への負担も少なく、緊張も強いられないはず。足まわりをよく動かすことによって、まずは乗りやすさを体感して頂き、その先は個人の好みでセッティングしていく。そういう間口の広さがZX-4Rと、特にZX-4RRの魅力だと考えています」

■後編ではエンジンを中心とした、ポジティブな要素をお伝え

 なるほど、確かにZX-4R/RRはサーキットありきで開発されたわけではなく、日本はもとより欧米でも東南アジアでも展開されるグローバルモデル。あらゆる道路環境を想定し、あらゆる体格とスキルのライダーが触れることを思えば、このハンドリングもひとつの落としどころだったのでしょう。

 ただし、せっかくグレード展開にもかかわらず、その差があまりにも小さいところがややもったいなくも感じられます。

カワサキ「Ninja ZX-4R SE」と筆者(伊丹孝裕)カワサキ「Ninja ZX-4R SE」と筆者(伊丹孝裕)

 ZX-4RとZX-4RRの間にある、走りに直接関わる部分での違いは、リヤショックのみ。プリロード調整だけのZX-4Rに対し、ZX-4RRは伸び側と圧側ダンパーの調整もできるところは大きな加点ですが、懐の深さ、間口の広さを謳うのなら車高調整があるに越したことはなく、タイヤもよりハイグリップなものを選択して然るべきではないでしょうか。

 国内へ投入される今シーズンのニューモデルの内、その注目度は群を抜いて高いのがZX-4R/RRです。ネガティブな要素で丸々一本の記事を書いてしまい、期待を膨らませている読者に対しては、申し訳ないところ。次回はエンジンを中心とした、ポジティブな部分に触れていくつもりなので、お楽しみに。

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