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あのハリウッドスターも乗った!? 2ストエンジンを搭載するホンダ史上初の本格オフロード市販車「エルシノアMT250」

バイクのニュース / 2023年8月7日 19時40分

1973年に発売されたホンダ史上初の本格オフロード市販車「ELSINORE MT250(エルシノアMT250)」は、開業黎明期以来の2スト開発へ舵を切った先で出会った俳優スティーブ・マックイーンとのストーリーにも注目です。

■ホンダ初の本格オフロード市販車、2ストエンジンは南カリフォルニアの香り

 ホンダファンには馴染み深い(かもしれない)、その湖はアメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスの東部にあります。「エルシノア湖」と、その脇を南北に貫くインターステーツ15号線の周辺は、現在でも世界的オフロードバイクシーンの中心地です。

1973年に登場したホンダ初の本格オフロード市販車、2ストロークエンジンを搭載する「ELSINORE MT250」1973年に登場したホンダ初の本格オフロード市販車、2ストロークエンジンを搭載する「ELSINORE MT250」

 1960年代から70年代にかけて、エルシノア湖の周辺でダートバイクレース「エルシノアGP」が行なわれました。元々エルシノア湖はハリウッドセレブの隠れ家的な場所でしたが、バイク好きの映画スターであるスティーブ・マックイーンも「エルシノアGP」に参加するほど、オフロードバイクシーンは盛り上がりを見せていました。

 当時、ホンダは本格的なオフロードバイクをラインナップしていなかったので、アメリカの現地法人からはオフロードモデルの開発を求める声が届いていました。

 モトクロス世界GPでは先鋭化が進み、2ストロークエンジンを搭載するマシンが主流でしたが、ホンダには「生産するのは4ストローク車」という社是とも言える拘りがありました。

 そこで社内の有志が密かに2ストロークのモトクロス車を製作し、レースに参戦。やがて社長である本田宗一郎の知る所となりましたが「やるなら世界一の物を作れ」という言葉とともに、2ストローク車の開発が承認されたと言われています。

ロードバイクと同じくスピードメーターとタコメーターの両方を装備ロードバイクと同じくスピードメーターとタコメーターの両方を装備

 1972年にはホンダ初のモトクロス専用車として、2ストローク車のファクトリーマシンが開発され、レースに参戦しました。最初は苦戦するもレースを通して性能が磨かれ、ついに優勝。そのマシンのレプリカとも言えるモトクロス専用車「CR250M」、「CR125M」が一般ユーザーにも販売されました。

 翌年、そのモトクロス専用車に公道を走行するためのライトやウインカーなどの保安部品を装備したバイクが、「エルシノアMT250」です。逆に言えば、保安部品を外せばレースに出場できるほどの性能を持った本格的なオフロードバイクでした。

 エンジンは「CR250M」がベースの6ポートピストンバルブ方式。低速域から高速域まで幅広いトルクバンドと共に、2ストロークならではの優れたレスポンスを発揮したとされています。

 シリンダーやピストンには放熱効果や耐久性にすぐれたアルミ合金を採用。クランクケースカバーには軽量で高剛性なマグネシウム合金が使用されました。

 バッテリーを外してもエンジンが始動できるマグネトー点火方式も「エルシノアMT250」らしい装備です。それに公道市販車向けに使い勝手の良い分離給油方式へ変更されました。

 ホイール径はフルサイズのフロント21インチ、リア18インチで、サスペンションのストロークも長めに設定されていました。また前後フェンダーは軽く柔軟性のある樹脂素材でした。

アルミ製キャップの燃料タンクには「ELSINORE」の文字だけで「HONDA」のロゴはないアルミ製キャップの燃料タンクには「ELSINORE」の文字だけで「HONDA」のロゴはない

 ところで、1972年に「エルシノアMT250」に先行する「CR250M」をカリフォルニアでテストしていた時のこと。ホンダのテストスタッフはプライベートで走りに来ていたスティーブ・マックイーンと遭遇(したと言われている)。マックイーンはまだ極秘テストの段階だったプロトタイプを試乗し、その縁で「エルシノアMT250」のCMに出演した……と言われています。

「エルシノアMT250」は名車と呼ばれながらも、オイルショックの影響もあり1975年には4ストロークエンジンを搭載する「XL/XR」シリーズにその座を譲ります。

 一方、レーシングモトクロッサーの「CR」シリーズは水冷化された1981年型まで「ELSINORE」のステッカーが残りました。

 ホンダコレクションホールに展示されている「エルシノアMT250」の燃料タンクには、「ELSINORE」のロゴだけでホンダのマークがありません。これは開発陣が「4ストのホンダ」のイメージを守ろうという忖度によるものでした。

 しかし本田宗一郎は、2スト車にもホンダのロゴを入れるように指示。デザイナーは急遽「HONDA」の文字にウイング(羽根)を組みわせたロゴを製作し、後期型にはホンダのウイングステッカーが使用されました。以降、ホンダのバイクにはウイングのステッカーがポピュラーになったと言われています。

軽量化を徹底した片ハブのフロントドラムブレーキ。オフロードに適したノビータイヤ(ブロックタイヤ)を履く軽量化を徹底した片ハブのフロントドラムブレーキ。オフロードに適したノビータイヤ(ブロックタイヤ)を履く

 ホンダ「エルシノアMT250」(1973年型)の当時の販売価格は20万8000円です。

■ホンダ「ELSINORE MT250」(1973年型)主要諸元
エンジン種類:空冷2ストローク単気筒ピストンバルブ
総排気量:248cc
最高出力:23PS/6500rpm
最大トルク:2.6kg-m/5500rpm
全長×全幅×全高:2160×890×1130mm
車両重量:118kg(乾燥)
燃料タンク容量:8.5L
タイヤサイズ(F):3.00-21
タイヤサイズ(R):4.00-18
フレーム型式:セミダブルクレードル

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)

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