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昭和の遺物「3ない運動」は子供の命の責任を学校が負えと言っているようなもの

バイクのニュース / 2023年9月7日 11時50分

道路交通法で16歳から取得可能の運転免許を校則で禁じ、所持や運転を禁じる運動を「3ない運動」と言います。生徒の命を守るために始まった交通安全運動は半世紀を経て、免許取得を禁じる校則の見直しが多くの地域で始まっています。しかし、すべての全日制公立高校で免許所持を禁止する静岡県は、その対象を免許不要の電動キックボードにも拡大する方向です。なぜいまだに根強いのか。赤池誠章参議院議員が県教育委員会に話を聞きました。

■自動車工学科でさえ、免許取得できない徹底ぶり

 静岡県では、県内の定時制を除くほぼすべての高等学校が、生徒の運転免許取得と運転を禁じています。その対象は、二輪免許から普通免許まで徹底され、2023年7月1日に施行された免許不要の「特定原付」まで広がる勢いです。文部科学大臣政務官を務め、国政では参議院で文教科学委員長だった赤池誠章参議院議員が8月30日、同県教育委員会に改善を求めるヒアリングを行いました。

18歳未満が立ち入れない法規制がある場所と同列で、免許取得禁止が書かれている生徒手帳の一例18歳未満が立ち入れない法規制がある場所と同列で、免許取得禁止が書かれている生徒手帳の一例

「静岡県の教育委員会は“3ない運動”を推進するような学校との連携は一切やっていないというわけですが、全日制の公立学校75校すべてが校則で禁じています。私はこのヒアリング前に工業系の自動車工学科のある私学高校でも話を聞いたのですが、そんな専門性のある学校ですら、免許はとれない。その徹底ぶりに驚きました」(赤池氏)

 1980年代から始まった3ない運動の根拠となる全国宣言を、全国PTA連合会がやめたのは2012年で、今から10年以上前のことです。赤池議員は免許取得禁止に根拠がなく、学校判断に委ねられているというだけで、運動の成果や影響についての見直しが行なわれていないことを問題視します。

「免許所得を禁じる県条例があるわけでもない。明確な基準もなく、ただ長年続いている。ずっとそういうものだから、という風習とか慣習、踏み込んで言うと悪弊のようなものになっている気がします」

 3ない運動は「免許を取らせない」「買わせない」「運転させない」という、当初は生徒の命を守るための明確な交通安全運動でした。

 その後、適切な交通安全教育が確立されないまま暴走族の流行もあり、生徒指導の側面を強めていきます。免許取得が学校に知れると、今でも停学や退学処分もありうると言います。

「生徒の命を守るというと聞こえはいいですが、この3ない運動は子どもたちの命を、先生に責任を負えと言ってることと同意になってませんか。これが生徒指導の側面があるとしても、生徒の24時間すべてを先生が指導しなければならない、という時代じゃない。

 学外で起きる交通事故に責任を持てない先生に、子どもの命を預けることが、果たして生徒の命を守ることになるのでしょうか。被害者になることばかり考えているが、昨今は加害者になることも考えていかなければならない。こういう現実に向き合わないから、学校の先生が学外の交通のあり方について、良いとか悪いとか校則で縛らないといけなくなる」

 免許取得を禁じる校則は、生徒手帳に記載されています。静岡県内のある高校では、免許取得を飲酒、喫煙、パチンコ店の立ち入りなどと同じ違法行為として禁じています。

■免許取得は、飲酒や喫煙と同じ違法行為なのか

 校則で免許を持てないのであれば、静岡県で、高校生のバイク事故は起きないはずです。しかし過去5年を振り返ると、2018年の52件をピークに年間約30件ほど(死亡事故はありません)。コロナ禍の外出自粛の影響もあり、事故件数は減っています。

「3ない運動」を根拠に学校に生徒の命を任せるのは、時代に逆行すると訴える赤池誠章参議院議員(撮影/中島みなみ)「3ない運動」を根拠に学校に生徒の命を任せるのは、時代に逆行すると訴える赤池誠章参議院議員(撮影/中島みなみ)

「こうした不幸な事故を防ぐためには、免許取得者に交通安全教育をすべきですが、教育委員会が何とかしなきゃいけないという現状認識は薄い感じがしました。隠れて免許を取得した高校生が起こした事故かどうかは分からない。定時制高校ではバイクの運転が認められて、そこでは講習もやっているから、というのが理由のようですが、それではいけない」

 静岡県が現状維持を続ける中で、教育委員会が主導して免許取得を禁じていた埼玉県、群馬県など各地で3ない運動の見直しが進んでいます。大阪府は学校の自主的判断として校則で取得を禁じていましたが、校則そのものが見直されることになりました。

 現状維持を続ける静岡県でも、まずは議論の場を作ることが時代の要請だと、赤池氏は語ります。

「校則は学校のルールと言っても、こども家庭庁ができて、子供たちの声を聞いて合理的な校則を作るべきだとし、文部科学省も校則の見直しを促しています。教育委員会も各学校に任せるというのではなくて、やはり協議する場を作らないといけない。

 今回は、県会議員や文部科学省にも同席してもらっている。県議の岩田徹也さんは、自動車整備会社の社長でもありこの分野に明るい。県議会としても関心を寄せていただき、ぜひ継続的に取り組んでいただきたいとお願いしました」

 赤池氏は、今後も生徒の運転免許取得と交通安全教育について、各地でヒアリングを続ける予定です。

「長年やってきたことを当然視する風潮ってのは、すごくあちこちで感じて、それを誰が決めてるか分からない。守れって言うだけで、いったい何のために守らなきゃいけないのか。生徒や先生にたちへの現代的な影響とか、議論をする場もないんだなってことを実感しました」

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