【MotoE第8戦サンマリノ大会】ドゥカティ電動レーサー「V21L」による新時代 チャンピオンはマッテア・カサデイ選手が獲得
バイクのニュース / 2023年9月14日 13時10分
電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』第8戦サンマリノ大会が2023年9月8日、9日にイタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行なわれ、レース1でマッテア・カサデイ選手が優勝を飾り、2023年MotoEチャンピオンに輝きました。
■新チャンピオン誕生で2023年シーズンを終える
電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』(以下、MotoE)は、電動バイクによって争われるチャンピオンシップです。2023年シーズンからはドゥカティがマシン供給メーカーとなり、全18人のライダーが専用に開発された「V21L」という電動レーサーを走らせました。2023年シーズンのMotoEはMotoGPのヨーロッパ開催グランプリに併催で1大会2レース開催、全8戦16レースが行なわれました。
【MotoE第8戦サンマリノ大会】優勝でチャンピオンを決めたマッテア・カサデイ選手(#40)
第8戦サンマリノ大会は2023年シーズンの最終戦で、この大会でチャンピオンが決定します。タイトル獲得の可能性を残すのは実質3人のライダーに絞られ、前戦カタルーニャ大会でランキングトップに躍り出たマッテア・カサデイ選手、21ポイント差のランキング2番手につけるジョルディ・トーレス選手、22ポイント差のランキング3番手につけるマッテオ・フェラーリ選手でした。
予選ではカサデイ選手がポールポジション(1番手)を獲得。トーレス選手は2列目5番手、そしてフェラーリ選手はタイヤの空気圧違反のためにファステストラップが取り消され、10番手となりました。この時点で、タイトル争いはほとんどカサデイ選手とトーレス選手の一騎打ちになったのです。
しかし、チャンピオンは予想外の形で決まりました。レース1でトーレス選手がジャンプスタート(※レッドシグナルが消灯する前にマシンが前進すること)を喫し、ダブル・ロングラップ・ペナルティを受けたのです。
ロングラップ・ペナルティとはレース中にコースのアウト側に設定された専用エリアを通過しなければならないペナルティで、これによって数秒のタイムロスとなるもの。ダブル・ロングラップ・ペナルティを受けたトーレス選手は、わずか8周の周回数の中で2度、4周目と5周目にこのペナルティを消化し、10番手に後退しました。
レース1前のグリッドでは、カサデイ選手は「勝つことに集中していた」と語っていた
一方、カサデイ選手は序盤からトップを守っていました。最終ラップには2番手のライダーがカサデイ選手に激しく迫りましたが、これを振り切り、わずか0.021秒差で優勝。カサデイ選手が2023年のチャンピオンに輝いたのです。
2023年シーズンの前半戦、チャンピオンシップをけん引していたのはトーレス選手やフェラーリ選手でした。しかし、カサデイ選手は後半戦のイギリス大会で今季初優勝を飾ると、怒涛の勢いで優勝を重ねました。その勢いは、2019年王者のフェラーリ選手、2020年、2021年王者のトーレス選手をしのぐものでした。
チャンピオン会見で、カサデイ選手は「シルバーストン(イギリス大会)前、自信を感じていたんだ」と、語りました。
「僕たちは100パーセントではないけれど、ポテンシャルがあるのは分かっていた。そして、(シルバーストンで)勝ったんだ。それに、サマーブレイクですごくトレーニングをしたんだよ。でも、シルバーストンの2週間前、友人とビーチにいたら片方の肩を脱臼してしまって2、3日調子が悪かった。“ああ、バイクに戻ったときにトップを走れないかもしれない……”なんて考えていたんだ。でもトレーニングを続けて、自分の目標に向かって取り組み続けた。そしてシルバーストンでバイクに戻ったら、すごく速さがあったというわけなんだ」
タイトルの可能性を残したジョルディ・トーレス選手(左)のグリッドには、Moto2ライダーのジェイク・ディクソン選手(右)が駆けつけた
チャンピオン獲得がかかる朝、そしてグリッド上ではどんな心情だったのか、とカサデイ選手に尋ねました。トーレス選手のようなベテランライダーでさえも、チャンピオンがかかったレースではミスを犯してしまうのです。
「今朝は5時に起きたよ。(レースまで)すごく長い時間だった……」と笑ったカサデイ選手。そのあとに「起きたらちょっとナーバスだったけど、ここ(サーキット)に来たら集中しようと努めた。グリッドでは勝つことに集中したよ。レース1でチャンピオンシップを締めくくるというのが僕の目標で、そしてそれを成し遂げたんだ」と続けました。
レース1でタイトルを決める心積もりだったというわけです。確かにカサデイ選手の最終ラップは、一歩も引かないという気迫を感じさせるものでした。
カサデイ選手はレース2でも優勝争いを演じ、3位表彰台を獲得しています。
パルクフェルメでバーンナウトするカサデイ選手。オマージュらしきフラッグのデザインについて会見で聞いたところ、「ワンピースが大好きなんだ!」とのこと!
ドゥカティの電動レーサー「V21L」による新しいフェーズに入ったMotoEは、24歳のイタリア人ライダーという新しいチャンピオンを生み、2023年シーズンを終えました。
■FIM Enel MotoE World Championshipとは……
2019年にスタートした電動バイクによるチャンピオンシップ。2019年から2022年まではWorld Cup(ワールドカップ)として開催されていたが、2023年よりWorld Championship(世界選手権)となった。MotoGPのヨーロッパ開催グランプリのうち数戦に併催され、2023年シーズンは土曜日に各2レース開催で全8戦16レースが予定されている。バイクはドゥカティ「V21L」のワンメイクで、タイヤはミシュラン。9チーム18名のライダーが参戦し、日本人ライダーとしては大久保光選手がエントリーしている。
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