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「カマキリ」と呼ばれ異彩を放つダブルプロリンクの輝き!! ホンダ「RC125M」完全勝利への道

バイクのニュース / 2023年9月25日 19時40分

1970年代に始まったモトクロスバイクによる各メーカーの覇権争いが繰り広げられる中、ホンダは1980年から「プロリンク」で大躍進の狼煙を上げ、大進化の時代に“技術の鬼”ホンダが本気で作った超革新的モトクロスバイクが「RC125M」です。

■前後共にリンクサスペンションを採用

 ホンダのレース用ファクトリーマシンの車名は「RC」の頭文字で呼称されます。モトクロスの排気量125ccクラス用ファクトリーマシンは、排気量とモトクロスの頭文字「M」を加えて「RC125M」のように呼ばれます。

見た目のインパクトが強烈なダブルプロリンクを装備したファクトリーマシン、「カマキリ」の愛称で呼ばれた1981年型のホンダ「RC125M」見た目のインパクトが強烈なダブルプロリンクを装備したファクトリーマシン、「カマキリ」の愛称で呼ばれた1981年型のホンダ「RC125M」

 1981年の「RC125M」だけでも何種類もの仕様が存在しますが、ここで紹介するバイクは「カマキリ」の愛称で呼ばれ、モトクロスファンのみならず、ベテランのバイク好きにもお馴染みの1台です。

 一度見たら忘れない、他のバイクとは全く異なるフロント周り。ホンダのチャレンジ精神を具現化したようなフロントサスペンションは「ダブルプロリンク」と呼ばれています。

 1960年代後半から1970年後半までの約10年間で、モトクロス用バイクは一気に進化しました。とくに注目すべきは、サスペンションストロークが約100mmから300mmまで伸びたことです。この長さはタイヤの作動範囲=路面からの衝撃を吸収できる余裕幅でもあり、ジャンプの高さや飛距離も大幅に伸びていきます。

 さて、フロントサスペンションの前に「プロリンク」について説明します。

フロントサスペンションにダブルプロリンクを装備する1981年型の「RC125M」フロントサスペンションにダブルプロリンクを装備する1981年型の「RC125M」

 伸びたストロークに対応するため、リアショックアブソーバー(以下、リアショック)は前傾(レイダウン)したり、前方に設置(フォワード)されました。しかしストロークが300mmとなると、それも限界に至ります。

 大幅な構造改革が望まれる中で、リアショックの1本化は他社に先行されたものの、ホンダはその取り付け下部にリンクを追加し、ジャンプでの着地等でもしっかり踏ん張りながら、小さなギャップにも作動性の良い「プロリンク」を開発し、その後のホンダの快進撃の大きな力となります。

 この1本リアショック+ボトムリンクはモトクロスのみならず、世界中の多くのバイクに採用され、スポーツバイクの定番的リアサスペンションシステムとなりました。

 一方、この特殊なフロントサスペンションですが、そのベースは欧州のエンジニアが試作した「リビフォーク」です。1979年にモトクロス世界GPで試作版リビフォークのバイクに世界チャンピオンのロジャー・デコスタ選手が乗っています。

 翌1980年、そのデコスタ選手がホンダに移籍してリビフォークを紹介。ホンダはパテントを取得してファクトリーマシンに採用し、「ダブルプロリンク」が誕生します。

 通常のテレスコピック式のフロントフォークに比べると複雑な構造に見えますが、前輪は数カ所のリンクを介して直線的にストロークします。その様子がカマキリの前足の曲げ伸しに見えることから、「カマキリ」の愛称で呼ばれています。

ホイールを保持するアーム。重心をさげるためショックユニットを下部アームに設置ホイールを保持するアーム。重心をさげるためショックユニットを下部アームに設置

 長いモトクロスの歴史の中でも注目度の高い1台ですが、実戦への投入は僅かです。最初に我々の目の前で走行したのは、1980年の全日本選手権最終戦、鈴鹿サーキットのMXコースでした。

 当時のホンダチームは仕様の違うバイクを何台も用意していたので、練習や予選でダブルプロリンク車が走っていても、決勝では保守的な仕様のバイクを選ぶことが多かったようです。

 写真の「RC125M」は、ホンダコレクションホールに展示されている、1981年の北海道大会で東福寺保雄選手のライディングで優勝した1台です。

 東福寺選手はこのレース前の水曜に練習走行で転倒し、肋骨を骨折しました。しかしチャンピオンを獲得するためには欠場はできません。その時に何台も用意されたマシンの中からチョイスしたのが、ダブルプロリンク装着車でした。

 ストローク初期が柔らかく、路面からの身体への衝撃を緩和してくれるダブルプロリンク装着車は、骨折の痛みをカバーするサスペンション性能により、両ヒートとも1位の完全優勝となり、この年の東福寺選手のタイトル獲得への一翼を担いました。

フロントサスペンション以外は現代的なモトクロスバイクと同じサイズ感の「RC125M」(1981年型)フロントサスペンション以外は現代的なモトクロスバイクと同じサイズ感の「RC125M」(1981年型)

 ダブルプロリンク車はこの他にも、サスペンションユニットが上部に1本など様々な仕様が確認されており、試作も含めると多くのバリエーションが存在し、この全日本での優勝後も研究は続けられたようです。

 リアサスペンションのプロリンクで大成功を収めているだけに、ホンダはいずれ市販車「CR」シリーズにもダブルプロリンクを採用したいと計画していたはずです。しかしテレスコピック式フォークの性能向上もあり、それ以降の実戦で活躍はなく、市販車の「CR」シリーズに採用されることもありませんでした。

 モトクロスバイクはレース専用車でありながら、毎年世界中に何万台も販売される市販車です。当時の激烈なモトクロスバイクの覇権争いが「カマキリ」を産みだした訳ですが、ある意味では、タイトル獲得以上にホンダのプレゼンスを象徴するバイクではないでしょうか。

■ホンダ「RC125M」(1981年型)主要諸元
エンジン種類:水冷2ストローク単気筒ピストンリードバルブ
総排気量:124cc
最高出力:32PS以上/11000rpm
最大トルク:2.1kgm以上/10500rpm
変速機形式:常時噛合式6段
サスペンション(前):ダブルプロリンク
サスペンション(後):プロリンク

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)

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