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バイクの走りを支える「懸架方式」とは スペック表を読み解く!!

バイクのニュース / 2023年9月28日 11時10分

バイクのカタログや、メーカーHPに掲載されている「スペック」や「仕様」、「諸元」の表には、購入時の参考やライバル車との性能比較など、役立つ情報が含まれています。現行スポーツバイクの「懸架方式」は、ほとんど共通!?

■前輪側は、ほとんどがテレスコピック式

「懸架方式」は「けんかほうしき」と読みます。タイヤの車軸とフレームなどを繋いで路面の凸凹の衝撃を吸収したり、路面をしっかり追従してタイヤの接地力を高める装置のことですが、「サスペンション」と呼んだ方がイメージしやすいかもしれません。ちなみに、国内メーカーではスズキだけが懸架方式の項目を設けていません。

ホンダ「GB350」の懸架方式は、前=テレスコピック式、後=スイングアーム式ホンダ「GB350」の懸架方式は、前=テレスコピック式、後=スイングアーム式

 スペック表では前輪側と後輪側で個別に表記されています。まずは前輪側を見ると……排気量やジャンルに関わらず、ほとんどのバイクが「テレスコピック式」になっています。

 もう少し正確に言うと「テレスコピック式フロントフォーク」になり、これは重なりあった筒を伸縮して使う「望遠鏡(英語でテレスコープ)」が語源です。1930年代にBMWが市販バイクに採用し、その後はバイクの前輪側のサスペンションの主流になりました。

 そして現在、テレスコピック式のフロントフォークには「正立式」と「倒立式」があります。カワサキのスペック表では、懸架方式の前輪側の欄に「テレスコピック(倒立・インナーチューブ径41mm)」のように、倒立式の場合は表記があります(表記が無い場合は正立式)。

カワサキ「Z900RS」の懸架方式は、前=テレスコピック(倒立・インナーチューブ径41mm)、後=スイングアーム(ホリゾンタルバック)カワサキ「Z900RS」の懸架方式は、前=テレスコピック(倒立・インナーチューブ径41mm)、後=スイングアーム(ホリゾンタルバック)

 テレスコピック式のフロントフォークが登場してから長らくは正立式が主流だったため、敢えて「正立式」と呼んでいませんでしたが、後に倒立式が登場したことで、区別しやすいように「正立式フロントフォーク」、「倒立式フロントフォーク」と呼ぶようになりました。

前輪側の「懸架装置」であるフロントフォークの正立式と倒立式の概念図前輪側の「懸架装置」であるフロントフォークの正立式と倒立式の概念図

 倒立式フロントフォークは、最初はオフロードレースのモトクロッサーから普及し、次いでロードレースのレーシングマシンにも装備され、それが市販車に採用されるようになりました。スポーツ性能の面で有利なため、現在はミドルクラス以上のオンロード/オフロードモデルの多くが倒立式を採用しています。

 また、クラシック系やクルーザー系はレトロなルックスを重視し、排気量に関わらず正立式フォークを装備している車種もあります。

 国産の排気量250~400ccクラスは、性能やコストの兼ね合いで、現時点では正立式と倒立式が混在している状況です。

■クルマのような前輪サスペンションもある

 前輪側の懸架方式で変わり種と言えるのが、ホンダの「ゴールドウイング」が装備する二輪車用「ダブルウイッシュボーン」フロントサスペンションでしょう(スペック表では簡素に「リンク式」と表記)。

ホンダ「ゴールドウイング」の二輪車用「ダブルウイッシュボーン」フロントサスペンションホンダ「ゴールドウイング」の二輪車用「ダブルウイッシュボーン」フロントサスペンション

 四輪車と似た構造で、衝撃吸収と操舵機能を分離した構造が特徴です。

■スポーツバイクの後輪側は、すべてスイングアーム式!

 次に懸架方式の後輪側ですが、こちらも排気量やジャンルを問わず、スポーツバイクのほとんどが「スイングアーム式」と表記されています。フレーム側に設けた軸から伸びる腕(アーム)が、上下に動く(スイングする)ことで衝撃を吸収したり、リアタイヤの接地力を高めるサスペンションの形式です。

後輪側の懸架方式で主流のスイングアーム。写真はホンダ「GB350」のスイングアーム後輪側の懸架方式で主流のスイングアーム。写真はホンダ「GB350」のスイングアーム

 大昔のバイクは後輪に懸架装置(サスペンション)を装備しない「リジッドフレーム」が多く、スイングアーム式の後輪サスペンションが登場したのは1920年台頃ですが、普及が始まったのは1950年代頃になります。

 そして後輪側の懸架装置(サスペンション)はスイングアーム式の基本構造を元に、衝撃吸収性やタイヤの接地力(路面追従性)を高めるために進化を重ねてきました。

クラシカルなスタイルのカワサキ「メグロK3」のツインショッククラシカルなスタイルのカワサキ「メグロK3」のツインショック

 かつてはスイングアームの左右のアームにショックユニットを装備する「ツインショック(2本ショック)」が一般的でしたが、ヤマハが1970年代のオフロードレース用のバイクで、ショックユニットが1本となる懸架装置(サスペンション)を開発し、1980年台頃から市販車もオフロード/オンロード用に「モノショック(1本ショック)」が増加しました。

 そのため現在は「ツインショック(2本ショック)」を採用するバイクは、前輪側の正立式フロントフォークと同様に、基本的にクラシック系やクルーザー系などルックスを重視するジャンルになっています。

ホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE」のモノショック。ホンダ独自のプロリンクを採用ホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE」のモノショック。ホンダ独自のプロリンクを採用

 さらにモノショックのリアサスペンションには複雑なリンク機構が加わったり、スイングアームの腕が片側1本だけの「片持ち式スイングアーム」が登場するなど、驚くほど多様な機構が登場しています。そのため、スペック表ではシンプルに「スイングアーム式」と表記して、詳細は車種ごとの特徴紹介や主要装備などで解説する形が取られています。

■スクーターは効率重視!

 スポーツバイクの後輪側の懸架方式はスイングアーム式のほぼ一択ですが、フロアボードに足を乗せて運転するスクーターの場合は「ユニットスイング式」が主流になります。これはフレームに対して、エンジンと後輪が一体となったユニットが丈夫な軸で繋がり、ユニット全体が上下にスイングする構造です。スポーツ性能ではスイングアーム式に譲るモノの、広いフロアボードを設けられるなどスペース効率に長けているため、多くのスクーターに採用されています。

ホンダ「PCX」の後輪周りはユニットスイング式ホンダ「PCX」の後輪周りはユニットスイング式

 というワケで、スペック表の「懸架方式」は、スポーツバイクの場合はほとんどが「前=テレスコピック式」、「後=スイングアーム式」と表記され、残念ながらココだけで読み取れるものは多くありません。

 ……が、逆に考えると、スポーツバイクの懸架方式は大まかに言えばほとんど共通なので、ある意味で「完成された構成」と捉えることができます。

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