ニーゴーになぜ2機種!? 乗ってナットク「Vストローム250SX」の存在意義!!
バイクのニュース / 2023年10月5日 12時10分
インドで先行リリースされていた新型スポーツアドベンチャーツアラー『V-STROM(ブイストローム)250SX』が、日本国内向けにも新発売。コンパクトな油冷249cc単気筒SEP(SUZUKI ECO PERFORMANCE)エンジンを心臓部とし、フロントには19インチホイールを履きます。群馬県嬬恋にて開かれたメディア向け試乗会にて、バイクライターの青木タカオさんが乗りました。
■シリーズの末っ子としてデビュー
V-STROM(ブイストローム)シリーズは「1050/DE」をフラッグシップに、「800DE」や「650/XT」、さらに普通二輪免許で乗れる「250」があり、新発売の『Vストローム250SX』はシリーズの末っ子としてデビューしました。全7機種の大ファミリーとなり、ファンからの支持がいかに大きいかがわかります。
シリーズの末っ子としてデビューした『Vストローム250SX』にバイクライターの青木タカオさんが試乗
「1050/DE」や「650/XT」はV型2気筒、「800DE」と「250」は並列2気筒エンジンを採用しますが、『Vストローム250SX』にはスズキが独自開発した『ジクサー250』譲りの油冷単気筒エンジンが積まれています。
また、兄貴分の「1050/DE」や「800DE」は電子制御を満載にしますが、末っ子の「250SX」では電子制御を導入せずに、エンジンと車体の性能を使い切る考え方で開発されました。
モデル名の“SX”は「スポーツ・クロスオーバー」を示し、特定のカテゴリーに属さず、さまざまなセグメントの特徴を併せ持つことを意味します。
■Vストローム250とナニが違う!?
スズキの軽二輪クラスにはすでに『Vストローム250』があり、どう棲み分けされているのでしょうか。今回のメディア向け試乗会では、こうした疑問に答えるべく新型の『Vストローム250SX』だけでなく『Vストローム250』も用意され、両車を乗り比べることができました。
『Vストローム250SX』は背が高く、スリムで軽快な印象
実車を見てまず感じるのは、どっしりとし堂々たる佇まいからクラスを越えた風格を感じる『Vストローム250』に対し、『Vストローム250SX』はより背が高く、スリムで軽快な印象。特にシートから後ろがSXは細く、「チャンピオンイエロー」のカラーに乗ったためか、シュラウドまわりはモトクロッサーRMシリーズのようなスポーティな印象に仕上がっています。
車体色は全3色で、他に「パールブレイズオレンジ」と「グラススパークルブラック」が選べます。『Vストローム250』では「ソリッドダズリンクールイエロー/パールネブラーブラック」「ダイヤモンドレッドメタリック/パールネブラーブラック」「ハイテックシルバーメタリック/パールネブラーブラック」「マットフラッシュブラックメタリック/パールネブラーブラック」と4色を設定しました。
最低地上高205mmを確保した『Vストローム250SX』はより足が長く見え、ダートを苦手にしていないことが一目瞭然
とはいえ、SXもやはりデカい。『Vストローム250』がそうであるように、軽二輪クラスでありながら大型車のような車格があり、最低地上高205mmを確保した『Vストローム250SX』はより足が長く見え、ダートを苦手にしていないことが一目瞭然です。
■顔もそれぞれで個性を演出
フロントマスクはシリーズ共通の“クチバシ”スタイルを両モデルとも踏襲しつつ、『Vストローム250』ではタフなアウトドアギヤを連想させる丸いヘッドライトを持ち、『Vストローム250SX』では8つのLEDが3列に並ぶ八角形のヘッドライトを新採用しています。
フロントマスクはシリーズ共通の“クチバシ”スタイルを両モデルとも踏襲(左:Vストローム250/右:Vストローム250SX)
『Vストローム250SX』がタンク容量12リットル、フロント19/リヤ17インチ、セミブロックタイヤ装着で未舗装路も軽快に走ることが得意であることに対して、『Vストローム250』はタンク容量17リットル、前後17インチの足まわりで、オプションに3バックシステムを設定するという点からも、オンロード走行でより遠くへ旅することを得意としています。
純正オプションには、容量27リットルのトップケースを『Vストローム250SX』にも用意しますが、『Vストローム250』では容量23リットルのトップケースに加え、左右各20リットルの容量を持つサイドケースセットが設定され、荷物をよりたくさん積むことができます。
■両車ともローシートを用意
シート高は『Vストローム250SX』が835mm、『Vストローム250』は800mm。身長175cm/体重65kgの筆者がまたがると、写真の通りSXでは両足を地面に下ろすとカカトが浮きます。
シート高は『Vストローム250』が800mm、『Vストローム250SX』は835mm、身長175cm/体重65kgの筆者がまたがると、写真の通り
『Vストローム250』では両足カカトまでベッタリと着地でき、取り回しで苦労しません。それはSXも同じで、足つき性でこそ軍配は『Vストローム250』に上がりますが、SXの車体装備重量は27kgも軽く、164kgしかありません。
押し引きで重さを感じないため、つま先立ちでも不安なし。両モデルとも気軽に乗れ、見た目こそ立派ですが、250ccらしいフレンドリーさが魅力となっています。
また、両車とも足つき性に不安がある人のためにオプションで、ローシートが選べるのも嬉しいかぎり。交換すれば『Vストローム250SX』は約25mm、『Vストローム250』では約20mm標準装備のノーマルシートより着座面が低くなります。
ハンドルが絞られ、コンパクトな乗車姿勢となる『Vストローム250』に対し、『Vストローム250SX』はワイドでグリップ位置の高いハンドルが採用
ハンドルが絞られ、コンパクトな乗車姿勢となる『Vストローム250』に対し、『Vストローム250SX』はワイドでグリップ位置の高いハンドルが採用され、スタンディングがしやすくダートでも抑えのきくライディングポジションになっていることも異なる点で、SXの未舗装路走破性を感じるポイントになっています。
■それぞれに持ち味のある心臓部
走ればすぐに、『Vストローム250SX』はベースとなる『ジクサー250』の軽快なスポーツ性能をそのまま持っていることがわかります。
油冷単気筒4バルブエンジンはレスポンスが良く、右手のグリップ操作に対し忠実に応え、フリクションを感じさせずに高回転まで軽やかに元気よく吹け上がっていきます。
低中速トルクもしっかりとあり、心地よいパルス感と軽やかなサウンドを楽しみつつ、従順でフラットな出力特性が味わえます。
Vストローム250=水冷並列2気筒SOHC2バルブ/ Vストローム250SX=油冷単気筒SOHC4バルブ
『Vストローム250』の心臓部は並列2気筒エンジンで、『Vストローム250SX』の単気筒に比べると回転変動が小さく滑らかなので、長距離のライディングでも疲れにくい特性と言えます。
また、『Vストローム250』のパラレルツインエンジンはロングストローク設計で、エンジンの素性としてそもそも低速が得意。粘りある低回転トルクを活かして、ゆったりと走ることができます。
そしてその特性にプラスし、『Vストローム250SX』よりもローギアード設定であることも見逃せません。クランクのイナーシャも34%大きいことから、低速走行や速度をキープしてクルージングすることが得意。心臓部からして、両車のキャラは明確に差別化されていることがわかります。
■Vストローム250=水冷並列2気筒SOHC2バルブ
内径×行程 53.5mm×55.2mm
圧縮比 11.5:1
最高出力 18kW〈24PS〉/8000rpm
最大トルク 22Nm〈2.2kgf-m〉/6500rpm
■Vストローム250SX=油冷単気筒SOHC4バルブ
内径×行程 76mm×54.9mm
圧縮比 10.7:1
最高出力 19kW〈29PS〉/9300rpm
最大トルク 22Nm〈2.2kgf-m〉/7300rpm
■ワインディングも軽快
どちらも扱いやすい従順なハンドリングと出力特性で、急かされることもありません。高いギヤを使ってノンビリ流すこともでき、旅の相棒としてはうっけつけであることがわかります。
フロント19インチの『Vストローム250SX』のハンドリングは、『Vストローム250』より軽快
ハンドリングは両車とも穏やかで落ち着いていますが、フロント19インチの『Vストローム250SX』はより軽快。しかし、オフロードモデルのようにヒラヒラとしているのかと言えばノー。直進安定性に優れ、開発テストライダーは竜洋のテストコースで高速走行も徹底追求したと教えてくれます。
アドベンチャーモデルに求められるコンフォート性を犠牲にせず、身のこなしが軽い。セミブロックパターンのタイヤでもトラクション性能が高く、ワインディングも気持ちよくアクセルを開けて楽しめます。
セミブロックパターンのタイヤでもトラクション性能が高く、ワインディングも気持ちよくアクセルを開けて楽しめる
SXのおおらかなハンドリングは、舗装の荒れた山道を走るのも得意でダートに入る手前からワクワクさせてくれます。都市部から林道ツーリングに行けば、未舗装路区間より距離が長いことも少なくない段差やひび割れのある、狭くスリッピーな酷道や険道もそつなくこなしてくれるでしょう。
■オフロード性能で選ぶならSX
試乗会のために用意されたオフロードは、坂を登って下るスキー場のゲレンデでした。このコースが『Vストローム250SX』のオフロード性能の高さを体感するにはうってつけです。
急斜面もシングルエンジンがトルクを粘り強く発揮しつつ、ジワジワと上がっていく
急斜面もシングルエンジンがトルクを粘り強く発揮しつつ、ジワジワと上がっていきますし、降りるときもサスペンションが働き踏ん張ります。
フロントフォークのストローク量は120mmで、『ジクサー250』と変わりませんが、最低地上高を165mmから205mmに上げています。
芝の中に隠れている大きな石が前輪にヒットし、乗り越えられずハンドルをとられそうになっても穏やかにいなしてくれるから、不安なくアクセルを開けてアグレッシブに攻め込んでいけるではありませんか。
不安なくアクセルを開けてアグレッシブに攻め込んでいける
前輪ホイールの19インチ化に伴い、ホイールをフロントフォークから前方に30mmオフセット。キャスター角24°20’、トレール96mmの『ジクサー250』に対し、27°00’/97mmとステアリングアングルが最適化されています。
また、スイングアームが伸ばされたことで軸上ストロークが増え、ホイールトラベル量を稼いでいることも見逃せません。ホイールベースは『ジクサー250』より95mm長くなり、衝撃を受けて強く負荷がかかってもシャシーは想像以上のレベルで持ちこたえます。
車体の姿勢が乱れそうな場合でも立て直してくれる元気の良いエンジンのおかげでペースはどんどん上がる
車体の姿勢が乱れそうになっても、アクセルをひと開けすれば欲しいだけのトルクを発揮し、立て直してくれる元気の良いエンジンのおかげでペースはどんどん上がっていきます。
多用するリヤブレーキの効きやコントロール性が秀逸で、介入が邪魔にならないようABSのセッティングも『Vストローム250SX』では見直されています。
■それぞれに持ち味あるVスト250
フラットダートなら『Vストローム250』も淡々と走らせられます。スタンディングではハンドルが狭く、グリップ位置が低く感じるので、シッティングでゆっくり行こうという気持ちになるのも優れる点と解釈できます。
フラットダートなら『Vストローム250』も淡々と走らせることができる
そして旅先にあるダートを恐る恐るではなく、楽しみにしてくれるのが『Vストローム250SX』です。
最後になりますが、ではどっちを選ぶか……!?
オフロードの走破性より、高い快適性や乗り心地の良さを求めるなら『Vストローム250』を選ぶのもいいでしょうし、そうは言うものの『Vストローム250SX』のコンフォート性もかなり高いレベルにあります。
250ccクラスのアドベンチャーセグメントを2本立てにしたスズキのVストロームと筆者(青木タカオ)
いずれにせよ、250ccクラスのアドベンチャーセグメントを2本立てにし、盤石の体制を整えたスズキ。日本中を冒険するVストロームシリーズの末弟の車体本体価格は『Vストローム250SX』が56万9800円、『Vストローム250』は64万6800円、いずれも税込みです。
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