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インドの道路事情から“ボーダレス”をテーマに設定! 現地視察で“サリー乗り”も研究したVストローム250SXデザイン担当談

バイクのニュース / 2023年10月7日 12時10分

フロントに19インチホイールを履き、エンジンを油冷シングルとした新型スポーツアドベンチャーツアラー『V-STROM(ブイストローム)250SX』。そのメディア向け試乗会にバイクライターの青木タカオさんが参加し、開発チームにアレコレとハナシを伺いました。今回はスタイリングデザイン担当者による解説をまとめてもらいましょう。

■GSX-S750も手掛けた凄腕デザイナー

 報道向け試乗会で筆者がチャンピオンイエローの車体を見て、「シュラウドのあたりにRM-Zのムードを感じます」と話すと「わかりますかっ!」とニッコリ笑う、その人!

『Vストローム250SX』のデザインを一目見て何かを感じた筆者(青木タカオ)『Vストローム250SX』のデザインを一目見て何かを感じた筆者(青木タカオ)

『Vストローム250SX』のデザインを担当した村松晶さん(スズキ株式会社二輪営業部デザイングループ)です。実車を見つつ、いろいろと話を聞きました。

 2004年に入社し、約20年間、幅広く二輪デザインの仕事に携わってきた村松さん。スタイリングのお仕事で、特に思い入れのあるモデルは『GSX-S750』とのことで、カウル以外にもスイングアームやホイールといった金属部品のデザインを含め、トータルコーディネートしました。

 また、メーターやスイッチボックスといったインターフェースに関わるデザインを多く担当してきたそうです。いま、国内でカタログに載っているものだと『GSX-R1000R』や『Vストローム1050/DE』のメーターやスイッチボックスなどを担当。車体色に関しても、スズキのテーマカラーであるブルーを生かした限定車をいくつも担当してきた敏腕デザイナーなのです。

■“クチバシ”顔は外せない

 さて、『Vストローム250SX』のスタイリングデザインはどのように決められていったのでしょうか。まず、デザインコンセプトは『TOUGHNESS IN A SLENDER SHELL』だと、村松さんは技術説明会で発表しました。

『Vストローム250SX』のデザインを担当した村松晶さんと筆者(青木タカオ)『Vストローム250SX』のデザインを担当した村松晶さんと筆者(青木タカオ)

『ジクサー250』の車体とエンジンを使うアドベンチャーモデルということで、車両のスリムさとコンパクトさを表現するということをスタイリングの重要なポイントにしたと教えてくれます。

「多面体を主体にしたカウルデザインとすることで、エンジンを積むプロテクターのようなイメージでスタイリングが構築されています。Vストロームシリーズであるということも重要な要素で、排気量の大きい1050/XTや800、650、バラツインの250と並んだ際に統一感を感じてもらえるように、Vストロームシリーズの共通意匠である“クチバシ”を今回のレイアウトや全体感に溶け込むように配慮してあります」(村松氏)

 日本市場ではすでにパラツインの『Vストローム250』があり、棲み分けも意識しました。『Vストローム250』は3バックを装着し、長距離をどっしりとしたポジションで走ることができるツアラーというキャラクター。

『Vストローム250SX』は、スリムでコンパクトに見えるデザインを目指している『Vストローム250SX』は、スリムでコンパクトに見えるデザインを目指している

 それに対し『Vストローム250SX』は、シングルエンジンとトップケースのみの想定。渋滞の中を縫うようなコミューター的な使い方と、仕事帰りに気軽に河川敷や脇道に入れそうな雰囲気がマッチすると考え、スリムでコンパクトに見えるデザインを目指しています。

■モタードのようにスリムな車体

 試乗会には同じ軽二輪クラスの『Vストローム250』も用意され、比較することができました。両車を並べて見ると、『Vストローム250SX』の車体後方が特にスリムであることがわかります。村松さんはこう教えてくれました。

『Vストローム250』と比べると『Vストローム250SX』の車体後方が特にスリムであることがわかる(左:Vストローム250SX/右:Vストローム250)『Vストローム250』と比べると『Vストローム250SX』の車体後方が特にスリムであることがわかる(左:Vストローム250SX/右:Vストローム250)

「すでにお気づきかもしれませんが、ライダーが座るシートからキャリアの最高点までがかなり長くなっています。理由としては、インド市場への対応で、後ろに乗るパッセンジャーが“サリー乗り”といって横向きに座ることを想定しました」(村松氏)

 サリーは1枚の布を体に巻きつけていくインド女性の代表的な衣装です。聞けば、開発チームは現地へ出向いて道路事情などだけでなく、“サリー乗り”も調査したそうです。

「それに加えて、日本市場などで需要のあるトップケースの装着を考慮したレイアウトの結果となっています。ですので、外観デザインとしては、視覚的なコンパクトさを表現するために、シート下のカラーパーツをピリオンシートのあたりで一度パスっと終わらせまして、モタードのような軽快なシルエットに見せています」(村松氏)

■日本人目線で欲しいと感じるデザインに

 モデル名にもなっている“SX=スポーツ・クロスオーバー”にちなんで、“ボーダレス”というキーワードがデザインテーマに設定されました。

“SX=スポーツ・クロスオーバー”にちなんで、“ボーダレス”というキーワードがデザインテーマに設定された“SX=スポーツ・クロスオーバー”にちなんで、“ボーダレス”というキーワードがデザインテーマに設定された

「開発前にインドの現地調査に行ったのですが、このバイクを買って乗ってくれるユーザーさんたちは生活の足としてだけでなく、休日にはロングツーリングへと両方の用途を満たせ、かつ見た目も個性的で人に自慢できるバイクというのを求めていると感じました」(村松氏)

 インドの道路事情は、舗装されたアスファルトと砂利道が混在するような箇所がかなり多く、『Vストローム250SX』のコンセプトにも合致すると考え、ボーダレスという言葉が選ばれたのです。

 日本国内へも初期から仕向地として想定されていたため、日本人目線で見ても欲しいと感じるデザインにし、ディテールやカウルの合わせの作り込みがおこなわれました。

ヘッドライトやリアコンビランプ類は、ベース機種の『ジクサー250』と共通のユニットを用いている(左:Vストローム250SX/右:ジクサー250)ヘッドライトやリアコンビランプ類は、ベース機種の『ジクサー250』と共通のユニットを用いている(左:Vストローム250SX/右:ジクサー250)

 ヘッドライトやリアコンビランプ類は、ベース機種の『ジクサー250』と共通のユニットを用いましたが、スリムでシャープなスタイルに溶け込むよう配置や周辺の意匠にこだわっています。

 また、メーターまわりには陽射し避けとして機能するバイザーや、USBソケットも使いやすく配置。メーターパネルも機能性とタフギア感を感じ取れるような要素を盛り込みました。

■こだわりのメタルパーツ

 フォークやヒールガード、キャリア、ホイールなど、いくつかの金属部品が専用設計で、車両のスタイリングとマッチするように機能を満たしつつ形状とディテールが作り込まれ、全体の大きな流れに合うようにデザインされています。

「日本市場でも受け入れてもらえるスタイリングデザインになった」と村松晶さんは語っていた「日本市場でも受け入れてもらえるスタイリングデザインになった」と村松晶さんは語っていた

「オールマイティで気軽に乗れて、ちょっとした冒険心にも応えてくれる。日本市場でも受け入れてもらえるスタイリングデザインになったと思います」

 村松さんはそう言って胸を張ります。『Vストローム250SX』の車体本体価格は56万9800円。そのスタイルデザイン、最寄りのスズキワールドなど販売店で、ぜひご覧ください。

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