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不動車のホンダ「ベンリイC92」をエンジンのプロがレストア!保存状態の悪かったCD125エンジンからの流用部品を再生【vol.5】

バイクのニュース / 2023年10月28日 13時10分

老舗内燃機屋「井上ボーリング」で、年間700台ものヘッド再生を行うベテランヘッド技師が、不動車となったホンダ「ベンリイC92」の再生とモディファイを行う連載。第5回目は、保存状態の悪かったホンダ「ベンリィ CD125」のエンジンからの流用部品を再生します!

■5速ミッション対応の問題は全て解決したのにクランクウェブに赤錆が!?

 ホンダ「ベンリィC92」に比べて、バルブ径が大きくキャブレターマウント幅も広いお陰で出力向上が図りやすいホンダ「ベンリィ CD125」のシリンダーヘッドですが、ベンリィC92に流用するにはシリンダーピッチの違いから、クランクとシリンダーも同時交換が必須です。

 しかしヤフオクで入手したエンジンはセルモーターを外した状態で長期保管されていた、クランキング不可という訳アリの格安ジャンクエンジン。届いたエンジンをバラしてみると焼き付いた形跡は無く、ピストンとシリンダーがキャラメル状のスラッジで固着しているだけの、自分的にはアタリとも言える状態でした。

 クランクのベアリング類もスムーズそのものでしたが、残念なのはウェブに発生した赤錆で、クランク担当技師の小林さんに見てもらったところ、一度分解してワイヤーバフをかけて磨き、組み直すべきとの見解。早速、分解してもらう事になりました。

錆落としの為にクランクを分解錆落としの為にクランクを分解

 ばらした各部品の状態を確認すると、やはりジャーナルやローラー、アウターリングにコンロッドといった摺動部は奇麗なものです。

 もしここに錆が出ているようなら交換や再メッキ等のコストがかさみ、もはや別のクランクを入手した方が現実的な状況になるところだったので、最悪の状況は回避。

 それでもウェブ全体の赤錆は手が汚れる程なので、このまま組んだらオイルに微細な赤錆が混ざり、ベアリング類を摩耗させてしまう事が予想されます。

 そこで1つずつワイヤーバフをかけ、ついでに薄汚れたコンロッドも磨いて綺麗にすることができました。

■ベネフィットCD125シリンダーヘッドの再生とピストンの検討

無事に錆落としが完了し組みあがったホンダ「ベンリィ CD125」のクランク無事に錆落としが完了し組みあがったホンダ「ベンリィ CD125」のクランク

 クランクに関しては保管状態のマズさから状態が悪化していましたが、元々は比較的状態が良いエンジンであった事はヘッドを見ると一目瞭然。

 バルブステムに摩耗は無くガイド内径の摩耗も僅かで、交換は不要。バルブ研磨、シートカット、摺合せをして、ステムシールを新品に交換すればOKな状態です。ちなみに、バルブシートのアタリ位置は外当たりにしました。

バルブシートカットは外当たりでバルブシートカットは外当たりで

  固着していたのを取り外したピストンとシリンダーに焼き付きは無かったため、再使用できなくはありません。しかし耐久性の観点から高回転馬力は狙えない小排気量2気筒エンジンをパワーアップするには、やはりボアアップと高圧縮化が有効です。

 そこでピストンピン径、ピンハイト、ピストントップ形状などから入手可能なパーツを検討した結果、TKRJ製ホンダ「スーパーカブ70」用1.25㎜オーバーサイズピストンを発見。

 これを使用する事でSTDΦ44㎜から4.25㎜アップとなる48.25㎜、排気量は約150㏄としつつ、シリンダースリーブのスカート肉厚は1.5㎜を確保する事が可能です。

 ちなみに、この仕様でナンバー登録をする際は、原付2種ではなく軽2輪車への変更が必要となります。

ホンダ「スーパーカブ70」用の1.25mmオーバーサイズピストンを流用ホンダ「スーパーカブ70」用の1.25mmオーバーサイズピストンを流用

 早速、同パーツを取り寄せ、各部寸法、形状比較を行いました。

 ピストントップは2㎜低いので圧縮がどの程度になるかは組みあがってみないと解りませんが、ショルダー高、バルブリセスもイケそうなため、このピストンでシリンダーボーリングを進めることに決定しました。

 次回はこのピストンに合わせた銅ガスケットの製作から解説します。

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