大阪府下の高等学校で「運転免許禁止」の校則見直し 今年度で完全撤廃へ
バイクのニュース / 2023年10月19日 17時0分
大阪府下の高等学校で、バイクを中心とする運転免許の取得を禁止する校則の見直しが急速に進んでいます。2023年10月の府議会定例会で教育庁教育振興室は「(校則のある)4校とも免許取得の禁止につきまして、今年度中には見直しを終える予定でございます」と、すべての府立高校における免許取得禁止の撤廃を通知しました。
■禁止校則を見直し、道交法に準拠
全国各地で、バイクなど運転免許の取得を規制する教育指導のあり方が問い直されています。「3ない運動」を原点として厳しく免許取得を制限した群馬県や埼玉県でも見直しが実現し、免許取得者のための安全運転講習などが開催され、交通安全教育のあり方にも変化の兆しが出ています。
校則で免許取得そのものが禁止されている。時勢に合わせて見直すべきではないか(写真はイメージです)
2023年10月13日、大阪府議会では、府議と教育庁の間でこんな議論がありました。
「昨年度の教育常任委員会の答弁では、原付や自動二輪などでの登下校の乗車に加えて、免許取得そのものを禁止している府立高校が、14校残っているという状況でありました。答弁の中で、各校が具体的な見直しを早期に着手できるよう指導するとのことでありましたが、現在の状況についてお伺いいたします」(維新の会・中川誠太議員)
「今年度の8月から9月にかけまして、全府立高校を対象に調査をいたしました結果、校則で自動二輪の免許取得を禁止している学校は4校ございました。ただし、この4校とも免許取得の禁止につきまして今年度中には見直しを終える予定でございます。今後とも適切に点検見直しを絶えず行なうよう各学校に対して指導をしてまいります」(教育振興室高等学校課・林田照男課長)
大阪府における全日制・定時制の公立高校は154校。2021年頃から段階的に禁止校則の見直しが進み、このすべての学校で運転免許取得禁止の校則が見直されることになりました。
校則の見直しを終えた学校では、法律で許される誕生日から免許取得が可能になります。対象は主にバイク免許についてですが、四輪車の免許についても同じです。
■法律で認められたことを校則で禁止するからには、学校に説明責任がある
免許取得を禁じる校則は、1980年代のバイクブームによる事故増加と、暴走族に参加する非行を防止するために、退学や停学を伴う生徒指導の手法として全国に広がりました。そのきっかけとなった全国高等学校PTA連合会の全国運動は、暴走行為の鎮静化と共に2011年で終わりましたが、いまも校則による運転免許の取得禁止が続いています。
大阪府議会で質問に立つ中川誠太議員(提供/中川誠太議員)
大阪府でこの流れを変えたのは、2022年10月17日の同じく教育常任委員会。中川府議による教育委員会への原付等の免許取得を禁止する校則の見直し要請でした。橋本正司教育長はこう答えました。
「法律上認められております原付等の免許取得について校則で禁止するというからには、その必要性、理由というものを明確に校長は生徒、保護者に説明する必要があるというふうに考えております。単にいま禁止しているからこれを継続するというのは理由にならないというふうに私自身考えております。各校長にはその規制の継続の必要性について、しっかりと再点検をしてもらいたいというふうに思っております」
教育委員会(※教育庁はその事務局)は、教育方針や生徒指導のあり方について方向性を示す独立委員会です。これまでの大阪府のように「3ない運動」による生徒指導を続ける地域では、学校の校則を決めるのは各学校であり、教育委員会はそこに関与できない、と説明するのが通常でした。
橋本教育長の答弁は、膠着した生徒指導の改革に一歩踏み込むものでした。同時期、文部科学省でも、校則の運用・見直しに関する改定が、禁止校則撤廃の後押しとなりました。
校則で免許取得を禁止するだけでは、高校生の命を守ることはできない(写真はイメージです)
校則で免許取得を禁止するだけでは、高校生の命を守ることはできないという大阪府ならではの事情もありました。さらに1年前、2021年10月7日の府議会本会議で、松浪健太府議(当時)は、教育委員会にこう迫りました。
「高校生の原付死傷者事故数は、大阪がなんと148件。2位の神奈川81件、東京は26件、埼玉18件、千葉16件と、すさまじい数でありまして、(中略)大阪では原付通学を認めてないのにワーストワン。もはや交通教育しかないと思います」
2023年10月13日の教育常任委員会では、校則が見直されて免許取得が可能になった後の交通安全教育について、同庁保健体育課が説明しています。
「府内学校園の交通安全担当の教職員を対象といたしまして、本年11月に民間団体や警察等と連携した研修会の実施を予定しているところでございます。この研修会では、民間団体や警察等から、交通安全教育に関する最新の情報や二輪車等の交通安全教育の指導方法についてご講義いただき、まずは教職員の理解促進を図ることで、各学校における交通安全教育において、生徒が二輪車等の特性や正しい交通ルールを理解し、生徒の交通安全に関する意識が向上するように努めてまいります」(教育振興室保険体育課・染矢美抄課長)
交通事故増加を抑えながら、免許取得を禁止する校則撤廃を実現する。高校生の交通安全教育が再定義されようとしています。
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