新世代のトップバッターと既存モデルの集大成!! 2台のモトグッツィをいろいろな角度からじっくり検証
バイクのニュース / 2023年10月21日 11時10分
現存するイタリア最古のバイクブランド「MOTO GUZZI(モトグッツィ)」から、2023年に国内導入開始となった「V100 Mandello」は、完全新設計エンジン「コンパクトブロック」を搭載し、同ブランドの次世代モデルとして先陣を切りました。対して、2019年にデビューしたブランド初のアドベンチャーモデル「V85TT」は、伝統のパワーユニット「スモールブロック」の進化と熟成を重ねてきた発展型を搭載しています。2台をじっくり乗り比べました。
■2台でGO!! 新旧モトグッツィの代表格
「2台でGO!!」と命名した当企画の骨子は、同一メーカーの気になる2台を同条件でじっくり試乗したうえで、各車の印象を述べ、2台の比較論を展開することです。もっともジャンルが異なるモデル、スポーツツアラーとして開発された「V100マンデッロS」(以下、V100)と、アドベンチャーツアラーの「V85TTトラベル」(以下、V85TT)を比較することには、何となく違和感を抱く人がいそうな気がしますが……。
モトグッツィ新型「V100 Mandello S」(手前)と、「V85 TT TRAVEL」(奥)
全面新設計のV100が、新世代モトグッツィのトップバッターであることに対して、V85TTは既存のモトグッツィの集大成と言うべきモデルです。つまり現時点でのこの2台は、縦置き90度Vツインエンジンを搭載する新旧モトグッツィの代表格になるわけで、私(筆者:中村友彦)としてはその事実に比較する価値を見出しました。
■似て非なるエンジン特性
まずはエンジンに関する印象を述べると、同社の量産車で史上最強のパワフルさとスムーズさを実現したV100を体験し、その後にV85TTに乗り替えると、思わず「え、旧車?」と言いたくなるほど、2台のフィーリグは異なっています。それは当然のことでしょう。縦置き90度Vツインという型式は両車に共通でも、最新技術を随所に導入したV100の水冷エンジン「コンパクトブロック」とは異なり、大改良を受けてはいても、V85TTが搭載する空冷エンジン「スモールブロック」は昔ながらの構成を維持しているのですから。
モトグッツィ新型「V100 Mandello S」に試乗する筆者(中村友彦)
ただし2台のエンジンは、安易に優劣がつけられない、各車各様の魅力を備えています。新世代モトグッツィの魅力を存分に味わいたい人、ここぞいう場面での速さを重視する人はV100に好感を持つはずですが、マッタリ巡航が好きな人、誰かと競うような走りに興味がない人には、V85TTが向いていると思います。
まあでも、V100でマッタリ巡航ができないわけではないですし、V85TTの最高出力は既存の「スモールブロック」を大幅に上回る76psですから、単体で乗った際に遅いと感じることはないはずです。
そう考えると、この2台のエンジンを特性を示すを表現としては「似て非なるモノ」……という言葉が最適なのでしょう。
■現代的な運動性を獲得した「V100マンデッロS」
続いては車体の話で、旋回性やフレンドリーさではV100の方が確実に上です。私がそう感じた背景には、今回試乗したV85TTが「トラベル」(車重はスタンダード+13kgの243kg。ちなみにV100は233kg)だったという事情があるのかもしれませんが、軸間距離が1530mm、ホイールトラベルが前後170mm、シート高が830mm、前輪が19インチのV85TTは、1475mm/前後130mm/815mm/17インチのV100と比べると、やっぱり車格が大柄で、動きがモッサリ&フワフワしているのです。
モトグッツィ「V85 TT TRAVEL」に試乗する筆者(中村友彦)
とはいえ私自身は、V85TTの車体に悪い印象は抱きませんでした。モッサリ&フワフワと言っても、それはあくまでもV100と比較しての話で、乗り手の操作に対する反応が露骨に鈍いわけではないですし、1リッター以上の他社製アドベンチャーツアラーと比べれば、V85TTは決して大柄ではありません。また、ヨー方向のジャイロ効果を発生しない縦置きクランクのおかげで、コーナリングは至って軽快です。
もっともV85TTではV100のように、コーナー進入時にガツーンとブレーキをかけ、クルリと向きを変え、そこから先はひたすらアクセル全開……という現代的でアグレッシな走りはできません。でも一歩引いた目線で、マシンと相談しながらコーナーをクリアしていくのは、それはそれで非常に楽しいことでした。
■快適なロングランが楽しめる「V85TTトラベル」
冒頭で述べたように、V100はスポーツアラーで、V85TTはアドベンチャーツアラーです。ではどちらが、より快適なロングツーリングが楽しめるのかと言うと、V85TTの方が優勢だと私は感じました。
2モデルのシートは、この角度からだと同じような形状に見えるものの、着座位置の自由度が高いV85TTに対して、V100のシートは後方に固定される印象
一番の理由はライディングポジションで、乗車中に身体のどこにも負担がかからないV85TTに対して、V100は着座位置が後方に固定されるシートのせいで、ハンドルグリップ位置がやや遠く感じ、ロングツーリングでは腰や腕に疲労が蓄積するのです。
さらに言うなら、乗り心地もV85TTのほうが良好で、オフロードを視野に入れた前後サスペンションが、路面の凹凸を軽やかにいなしていく柔軟性が実感できました。一方のV100は、オーリンズ製のセミアクティブ式サスペンションの標準設定がいまひとつ的を射ていないこともあって、距離が進むにつれて、路面の凹凸を通過した際の衝撃が厳しくなってきたのです。
■安易な優劣は付けられないものの……
エンジンの印象で使った言葉の繰り返しになりますが、今回試乗した2台のモトグッツィに安易な優劣はつけられない……と私は感じています。ただし完成度では、独自の世界を構築しながらマイナス要素が見当たらない、V85TTに軍配を上げたいところです。
新旧エンジンを搭載する2台のモトグッツィに乗り、じっくり走って検証
逆に言うなら、V100には前述した気になる点が存在したのですが、全面新設計のヨーロッパ車という事実を考えれば、そういった要素が存在するのは珍しくないことかもしれません。BMWモトラッドやドゥカティだって、全面新設計車が最初からパーフェクトという事例は滅多にないのですから。
というわけで私としては、V100には今後の熟成とバリエーションモデルの追加を期待したいのですが、ノウハウのある販売的で車両を購入するなら、ライディングポジションと前後サスペンションの設定は、簡単に改善できることのような気はしています。
※ ※ ※
モトグッツィ「V100マンデッロ」シリーズと「V85 TT」シリーズの価格(消費税10%込み)は、それぞれ以下の通りです。
「V100 Mandello」=220万円
「V100 Mandello S」=264万円
「V85 TT」=165万円
「V85 TT TRAVEL」=182万6000円
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