ビギナーや女性ライダーをターゲットにした普通二輪免許で乗れるハーレー「X350」その乗り味から見える存在の意義とは
バイクのニュース / 2023年10月24日 12時10分
ハーレーダビッドソンから登場した普通自動二輪免許で乗れる「X350」が遂に日本市場に導入されました。ここではハーレーについて造詣の深いライター、渡辺まことさんが試乗、インプレッションします。
■ブランドの裾野を広げる新世代のハーレー
ハーレーダビッドソンといえば「2000ccに迫る大排気量のOHV・Vツインエンジンを搭載したアメリカン・バイク」というイメージを抱く方も多いと思いますが、去る2023年10月20日に発表された『X350』は、良い意味でこれまでの同社のイメージを覆し、『バイクの世界全般』に新たな顧客層を呼び込む存在となるかもしれません。
■ライバルはスポーツネイキッド?
一般的なハーレー、その代表格といえるソフテイル系の約半分である重量195kgとなった『X350』はスペックのとおり走りもかなり軽快。DOHC水冷4バルブの353ccパラレルツインはかなり扱いやすく、前後17インチホイールを装備するハンドリングもかなり素直です
今回、『X350』に乗り、走らせてみたのですが、あえていえば皆さんがアタマに思い描くであろう『ハーレーらしい鼓動感』というものは良くも悪くも皆無。
353ccのDOHC4バルブ水冷パラレルツインエンジンはボア70.5mm×ストローク45.2mmというスペックが示すとおり、かなりの『回転型』となっており、既存のハーレーとは一線を画すテイストに仕上げられています(大排気量のハーレーはロングストローク、トルク型の味付けが主流)。
最初、このマシンを見た時に「排気量やパラレルツインというエンジン形式からホンダ、レブルあたりがライバルになるのかな」などと筆者(渡辺まこと)も思っていたのですが、走らせてみた感想は明らかにスポーツバイクのテイスト。
おそらくライバルとなるのはKTM「390デューク」やハスクバーナ「スヴァルトピレン401」、250ccクラスのモデルにまで目を向けるとホンダ「CB250R」やカワサキ「Z250」あたりとなるのでしょうが、『X350』の新車販売価格69万9800円というプライスを考えると十分に太刀打ち出来るものとなっています。
実際、ハーレーダビッドソンジャパンからの発表でも「X350は、これまでのハーレーのユーザー層とは違うエントリーセグメントとなるモデル」を狙ったとのことでビギナーや女性でも扱いやすい部分が最大のウリ。純粋に『バイクとして評価』すれば、ネガティブな要素がまったく見当たらないのも正直なところです。
■気になるエンジンフィーリングは?
車体は往年のダートトラッカー、XR750を現代的にアレンジしたかのようなデザインが与えられており、かなりスタイリッシュ。中型排気量ながらH-Dの所有感を満たすものとなっています。カラーリングは写真のスーパーソニックシルバーの他、ダイナミックオレンジとドラマティックブラック、パールホワイトの4種類がラインナップされます
たとえばハーレーの世界ではニューモデルが登場すると「あんなのはハーレーじゃない」であるとか「ツインらしいテイスト」を求める声が聞こえることもしばしばありますが、この『X350』はあくまでも別モノ。ハーレー好きにとっては『非』でも、バイク好きにとっては『是』と言える高いクオリティに仕上げられています。
またハーレーといえば、数あるバイクの中でも「クセ強」な乗り味であり、それが魅力のひとつとなっているのですが、『X350』のエンジンフィーリングはあくまでも素直。ツインらしい「ドドド感」というよりは4気筒に近い感じとでもいえばいいでしょうか。
しかし、それとて無機質なモーターのようではなく、「昭和の時代の4気筒」のような荒々しさを良い意味で感じさせるものとなっています。353ccのパラレルツインを「回しきる」感じの走りは、「バイク好き」の目線で見ると素直に楽しめるものです。
エンジンはDOHC4バルブ水冷パラレルツインでボア70.5mm×ストローク45.2mmの353cc。フューエルシステムは電子シーケンシャルポートフュエルインジェクションとなっておりパワーは36HP/8500rpm、トルクは31Nm/7000rpmを発揮します
ちなみにこの『X350』はメーターの液晶部分が距離計とタコメーター、時計と切り替え可能になっているのですがタコメーターに切り替えてみたところアイドリングは1500~1600rpmくらい。そこからスタートし、2速、3速と引っ張ってみたのですが7500~8000rpmくらいまでエンジンも一気に吹け上がります(現行のミルウォーキーエイトエンジンの場合は5000〜5500rpm付近がレッドゾーン)。
こうした点からも既存のハーレーとは別モノであることは理解できると思います。もちろん非力さもまったく感じません。街乗りモデルとしては十分どころか、かなり魅力的です。
■素直なハンドリングも魅力
加えてハンドリングも、あくまでも素直なものとなっており倒立フォークとリアのモノショック、前後17インチホイールのセットアップはまさにスポーツネイキッドの味付け。
身長175cmの筆者(渡辺まこと)が跨るとご覧のとおり、かなりコンパクトに見えるX350。足つき性も上々です
重箱の隅をつつくレベルのことを言えば、フロントのサスがもうチョイ動いてくれれば、もっと軽快なハンドリングになるのではないかな、とも思ったのですが、そこはセッティング次第できっと解消できる範疇でしょう。
乗り味はハーレー社の狙いどおり「ビギナーや女性」にオススメできるモデルとなっています。シート高777mmゆえ足つき性も問題なく、低めのハンドルにバックステップというポジションもコンパクトで扱いやすい印象です。
■過去にも存在した小排気量ハーレー
過去を振り返るとハーレー社は第二次大戦後にドイツのDKW社の技術を応用した125ccの「モデルS」や「ハマー」を生産し、1960年にはイタリアのアエルマッキ社を吸収合併することでOHVシングルや2ストの250ccや350ccクラスのモデルをリリースしたこともありますが、あえていえばそれらはいずれも「クセ強め」。
2023年10月21~29日の間、東京原宿にて期間限定でオープンとなる『HARLEY-DAVIDSON X cafe』(jing原宿)で発表が行われた『X』シリーズ。ハーレーの新機軸であるニューモデルやアパレルの展示の他、コーヒーや限定スイーツも楽しめます
明確に「ビギナーや女性」をターゲットにしたモデルはこの『X350』が初といっても過言ではありません。個人的には、このモデルがイタリア生まれのブランドである『ベネリ』と共同開発という点もハーレーの歴史を振り返ると何やら数奇なものを感じます。
ともかく乗り味といい、英断ともいえる価格設定といい、この『X350』の登場はバイク市場全体を見ても大いに評価すべきではないでしょうか。
そう、「ハーレー好き」ではなく「バイク好き」としてこれは素直に歓迎できる1台です。
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