日本で実車初公開のヤマハ「XSR900GP」 開発者に聞いた「XSR900」との違いや「Rシリーズ」との棲み分けは?
バイクのニュース / 2023年10月26日 7時10分
ヤマハ発動機株式会社は、10月26日より東京ビッグサイトで開催される「ジャパンモビリティショー2023」で、新型モデル「XSR900GP」を展示します。一版公開に先立ち、開発者に話を伺ってみました。
■ネオレトロな外観と最新の走行性能
ヤマハ発動機株式会社は、10月26日より東京ビッグサイトで開催される「ジャパンモビリティショー2023」で、新型モデル「XSR900GP」を展示します。
ヤマハの新型モデル「XSR900GP」
先駆けて欧州向けに販売され、日本においては2024年夏以降に発売予定のXSR900GPは、排気量888ccの3気筒エンジン搭載車「XSR900」をベースに、80年代のグランプリマシン「YZR500」をオマージュした外装を備えたスポーツヘリテイジモデルです。
10月25日に行われたプレスデーでは、その姿を日本で初公開しましたが、実際、どのようなコンセプトで開発されたのでしょうか。
PF車両ユニット PF車両開発統括部 SV開発部 SP設計グループ プロジェクトリーダー主査の橋本 直親さんと、ランドモビリティ事業本部 MC事業部. グローバルブランディング統括部 ブランディングサポートグループ グループリーダーの松本 亮さんに話を伺ってみました。
ヤマハの新型モデル「XSR900GP」(右)とレース用バイク「YZR500」
―――特徴として80年代のグランプリマシンYZR500をオマージュしたとありますが、なぜそのスタイルを現在の市場で打ち出したのでしょうか。
橋本さん そもそもなぜ、その年代かというと、80年代初頭、現在でいうアルミ製デルタボックスフレームの原型みたいなものを作って世界GP(ロードレース世界選手権)でもうまく行ったことが起因しています。ちなみにデルタボックスという名称を使い出したのは83年のYZR500あたりからでしょうかね。
当時はまだデルタボックスフレームを採用する車両もありませんでしたが、現在では他社のスポーツバイクでも似たような構造がよく使われることからも、この構造が成果を上げていることが伝わるはずです。
昨今では「レトロ」とか「ヘリテイジ」という言葉がよく使われていますが、結局は古いモデルをそのまま起こしてくるだけでは意味がないと思っています。
ちなみに、XSR900は厳密にいうとデルタボックスフレームではないのですが、基本のレイアウトは当時から受け継いで改良されてきたものなので、「ヘリテイジ」=「遺産」ということを踏まえ、我々が残すべき遺産とは何なのかと考えた時に、僕らの原点はこういうところ(デルタボックスフレーム)にもあるんじゃないかとなったんです。
結果、単純に昔を振り返るとか、昔っぽい形にするという「見てくれ」の話ではなく、そういうところを抑えていかなければな、と。
しかしながら、現在のニーズを踏まえればXSR90GPは完全にプロダクトアウト(※商品開発や生産、販売活動を行う上で、顧客のニーズよりも企業側の理論を優先させること)ですよね(苦笑)。
■排気量888cc・CP3エンジン搭載車で最もスポーティな一台
―――XSR900GPは世代的に40代、50代の層に刺さる製品に仕上がっていると思いますが、若年層に対してはどういう視点でアプローチしていくのでしょうか。
ヤマハの新型モデル「XSR900GP」
松本さん お客さんの中にはこの時代(80年代)にときめいた方も、まだまだいるだろうと思いますので受け入れやすいのは確かでしょう。
逆に若い方に対してのアプローチは僕らにとっても課題ですし、チャレンジングな取り組みです。
XSR900GPを街中で見た時に、スーパースポーツともまた違う独特の後ろ姿、乗り手の姿勢をどう感じていただけるのか。非常に興味深いです。
―――排気量888cc、CP3(クロスプレーン3気筒)エンジンとフレームを共有するMT-09、トレーサー9、XSR900の中では最もスポーティな仕様に見えますが、足回りなどの設定も異なるのでしょうか。
橋本さん 他のモデルがすべてバーハンドルに対して、唯一セパレートハンドルを採用していますが、それに併せ、ポジションの見直し、前後サスペンションのリセッティングや車体剛性など、多くを刷新しました。
テストライダーから何度もダメ出しをくらいながら、できる限りのベストなセットアップに仕上がっています。
CP3エンジンはなかなか刺激的なエンジンですので、キャラクターにはあっていると思いますし、共通のフレームとエンジンを使用する車両を作る場合には、基本設計をかなりしっかりしないといけないのですが、今回、出来上がってきたXSR900GPをみても培ったものの上に成り立っているんだな、と改めて感じています。
ヤマハの新型モデル「XSR900GP」
―――それらを踏まえ、XSR900GPはスタイルだけではなくかなり攻めた仕様に見えますが、ヤマハのスーパースポーツ「R」シリーズとはどのような棲み分けをしているのでしょうか。
松本さん サーキット走行を想定したRシリーズと違い、XSR900GPではワインディングを楽しく走れるということを念頭に置いて開発しました。言うなれば箱根スペシャルですかね(笑)。
ワインディングでも街中でも気楽に楽しんでいただければ幸いです。
※ ※ ※
現在では希少な角目のヘッドライトを備えたレトロな外観の中に、YRC(ヤマハライドコントロール)やクルーズコントロールシステムなどのライディングアシストテクノロジーが詰め込まれたヤマハの最新モデル。日本での仕様や価格の発表に期待がかかります。
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