【関ケ原の戦い】現在の日本はひとつの「裏切り」がきっかけで!? 小早川秀秋の陣跡でその人物像を考える
バイクのニュース / 2023年11月1日 8時10分
1600年10月21日(慶長5年9月15日)、現在の岐阜県不破郡関ケ原町を舞台に繰り広げられた“天下分け目の戦い”が、「関ケ原の戦い」です。東西に分かれ両軍それぞれの武将がこの地に陣を置き、決戦に挑みました。戦の行方を大きく左右したと言われる人物、小早川秀秋(こばやかわひであき)の陣跡をスーパーカブで訪れました。
■勝敗の分け目は、1人の若き武将が決めたのか?
小早川秀秋(こばやかわひであき)という武将の名前には、必ず「裏切り」や「寝返り」と言った、武士にとってはどちらかと言うと不名誉なイメージが付きまとい、ひ弱そうな人物像も相まって、あまり良い印象を持たれていないようです。しかし実際はどうだったのでしょうか。「関ケ原の戦い」では百戦錬磨の武将達が睨み合い、そんな戦場で若干19歳の秀秋がとった「高みの見物」とも言える行動と度量、そして機が熟したタイミングでの寝返り……などを考えると、じつはなかなかの人物だったのではないでしょうか。
「小早川秀秋陣跡」がある松尾山は関ケ原の南側に位置する山で、古くから山城として機能していた。写真の松尾山北部の麓からもアクセス可能だが、南側の専用駐車場が便利なので、そちらに移動してから散策した
家のつながりから、秀秋は毛利輝元を総大将とする、石田三成率いる西軍に加勢することになります。しかし東軍を率いる徳川家康にも恩があり、じつは開戦ギリギリまで本当は東西どちらの軍に加勢するのか、家康とも内応しており、本人は明らかに出来ませんでした。
「優柔不断な態度で、なかなか動き出さない秀秋に向けて家康が鉄砲を打ち込んだ」などの逸話もありますが、これは史実ではないという声もあります。そもそも始めから家康側についていたとしても、裏切りのタイミングが絶妙です。
東西両軍の兵力が前面に展開し、機が熟したタイミングで西軍の大谷吉継(おおたによしつぐ)の隊に襲いかかったため、西軍が総崩れとなったと言われています。じつは優柔不断な態度ではなく、虎視眈々とタイミングを狙っていたかもしれません。
また東西どちらにつくか悩みに悩んでいたとしても、この「悩む力」も大したもの。焦る余り早々に山を降りて突撃し、討ち死にしても意味がありませんし、それは戦況への影響も少なかったかもしれません。ここぞという時に打って出る19歳の若者(当時は十分大人だったとしても)が、1万5千という大軍を率いていたことも凄いことですが、焦りからタイミングを誤っていたら、自らを死地に追い込むようなものです。
山道を歩き、分岐点から松尾山山頂を目指す。ここから700mの山道を登っていく。訪れる人のために杖が用意されていた
しかしそうではなかった、というこの史実が凄いと思うところ。「大阪城」に留まっていた毛利輝元(もうりてるもと)が大軍を率いて参戦していたら、東西の勢力図は変わっていたかもしれませんが、事実そうではありませんでした。
「ここは(西軍の)毛利よりも家康側につくべきではないか?」と戦況を鑑み、最終的には東軍の味方をする決断を下した秀秋は「裏切り上等!」と、なかなかカッコいいではないかと思いながら、秀秋が陣を張った松尾山へスーパーカブを走らせました。
陣地の手前に堀と土橋(どばし)が残されていた。土橋は堀を切って敵の侵入を阻む「堀切(ほりきり)」を越えるための土の橋
決戦地からかなり離れた麓の村から、松尾山の山道を登ったところに陣地がありました。ここは徒歩で30分近くかかるので、軽い登山のつもりで行った方が良いでしょう。
他の武将の陣地よりも明らかに急峻で、途中に堀切や土橋などがあり、いわゆる山城として機能しています。じつは南北朝時代から存在する城とのこと。元々は伊藤盛正(いとうもりまさ)が陣を張っていましたが、秀秋がそれを追い出したと言われています。
松尾山の陣地から関ケ原の古戦場を眺める。陣跡には小早川秀秋が用いた家紋「丸に違い鎌紋(まるにちがいかまもん)」が風になびいていた。農作業の道具である鎌は「五穀豊穣(ごこくほうじょう)」の意味や、武運を高める意味合いがあるそうだ
幼少時からの飲酒による影響が理由と言われていますが、秀秋は「関ケ原の戦い」からわずか2年後の21歳で生涯を閉じます。「関ケ原の戦い」後には石高を25万石も上げており、岡山藩では商業、農地整備、寺社復興、組織改革など、領主としても優れていたと言われる若き武将です。
可能性は低いと思いますが、いつかこんな「日本の運命」を決定づけた人物を主人公にした大河ドラマも見てみたいものです。
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