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不安定なバイクを走らせる魅力は、4輪ドリフト競技の快感に似ている!?

バイクのニュース / 2023年11月15日 17時0分

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、バイクの魅力は4輪ドリフトの快感に似ていると言います。どういうことなのでしょうか?

■バイクはナゼ楽しい? 爽やかなツーリングでふと思う

 ライダーにとっては拷問の酷暑も過ぎ去り、爽やかなツーリングシーズン(を通り越してもう寒いが……)になりました。あまりの暑さに腰が引けた僕(筆者:木下隆之)は、ようやくガレージからすごすごと愛機を引っ張り出し、ワインディングに向かったのです。軟弱ライダーの謗りを免れません。

4輪のドリフト走行は、不安定なバイクを走らせるときの魅力に似ている気がする4輪のドリフト走行は、不安定なバイクを走らせるときの魅力に似ている気がする

 野山は紅葉が始まっており、鮮やかな彩りに刻まれていました。峠道をヒラリヒラリと身をひるがえしていたわけなのですが、そこでふと、なぜ僕はライディングが好きなのだろう? という、根源的な疑問が湧いてきたのです。

 正直に言って、バイクは不便ですよね。3輪や4輪ならばコケる不安はないのに、わざわざ不安定な2輪を楽しんでいる。新聞配達やフードデリバリーのような機動性が求められる場面では確かにバイクは有効ですが、僕のような趣味人にとっては、機動性が良いからバイクに乗るというのでは説明がつかないのです。でも、ライディングは最高に気持ち良い。

 おそらく、この不安定さが魅力なのではないかと思ったのです。アクセルやブレーキを操作しながら、あるいは体でバランスをとりながらワインディングを駆け抜ける。不安定だからこそのバランスを楽しんでいるのではないかと想像したわけです。

 というのも、先日僕は人生で初めて「本物のドリフト車」を体験しました。

 モータースポーツ競技としてのドリフトは、エンターテインメントの分野に属します。マシンを派手にスライドさせ、絶妙なカウンターステアでコントロールする。競技では、スピードとスライドアングルが主な審査対象になります。

 勝負を制するためには、マシンは後輪を空転させるために1000馬力が必要です。テールスライドをコントロールするために、ハンドブレーキも備えます。さらには、フロントサスペンションのナックルアームを改造し、カウンターステアの量を増大させます。スピン寸前までマシンがスライドしても、耐えられるような細工をするのです。これが、「本物のドリフト車」の姿です。

 レースでもドリフトシーンはありますが、それはあくまで不可抗力でスピン状態になりかけたときの危険回避テクニックのひとつであり、ドリフトそのものを求めてはいません。競技としてのドリフトでは、マシンをスピン寸前の状態に持ち込み、その状態をキープすることが目的なのです。

 ちなみに、僕がドライブした本物のドリフト車には、高性能なトーヨータイヤ「PROXES R888R Drift」が装着されており、圧倒的なグリップ性能を誇ります。ドリフト大会である「D1グランプリ」では常勝タイヤであり、最強タイヤの名を欲しいままにしています。

 単にスライドさせたければ、グリップ性能の低いタイヤを組み込めば済むのですが、それではスピードが稼げません。ドリフトの大会では200km/hでスピン状態をキープするというのですから、開いた口が塞がりませんね。そのためには高性能なタイヤが必要だというわけです。

 サーキットレースでは、マシンを前に進めることが目的であり、横にスライドさせるドリフトはいわば失敗です。しかし競技としてのドリフトは、それが賞賛されるのです。

 いやはや、これが楽しいのなんのって、その快感を言葉に置き換えるのは困難ですが、いわば、バランス感覚が刺激されるのでしょうね。

 コーナーを前にスロットルペダルを踏みつけます。すると、過激なパワーは後輪を空転させ、マシンがスライドを始めます。そこからは、ハンドブレーキでリアタイヤのスライド量をコントロールしたり、あるいはアクセル操作でタイヤの空転量を調整したりと、まさにタイトロープを渡るような曲芸状態なのです。

 そうです、不安定なバイクを傾けながら走るときのあの快感と似ているのです。

 まっすぐ走れば安定しているのにわざわざスライドさせてその感覚を楽しむドリフトと、3輪でも4輪でもなくわざわざ2輪でヒラヒラを楽しむのは、バランス感覚が刺激される点で共通しているような気がしました。

 バイクにとっては気持ちの良い季節。ツーリングを楽しみながら、ときには4輪ドリフトも楽しんでみようかと思っています。

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