バイクの「燃料キャップ」にも、じつはトレンドがあった!?
バイクのニュース / 2023年11月16日 11時10分
ガソリンを給油するたびに開閉するバイクの燃料キャップは、純然たる機能部品でありながら、その形状は様々です。いまどきは燃料タンクの上面と平坦なキャップが主流ですが、じつはコレもかつての「流行スタイル」。燃料キャップにもトレンドがあったのです!
■ネジ込み式のキャップから、ヒンジ式に
バイクの「燃料キャップ」には様々な形状がありますが、近年のスポーツバイクでは、燃料タンクの上面とほぼ平坦な「エアプレーンタイプ」が主流と言えます……が、じつはこの形状に至るまで、トレンドの変化がありました。
現代のスポーツバイクでは主流と言える「エアプレーンタイプ」の燃料キャップ。フリップを起こすと鍵穴があり、キーを差して回して開ける
まずガソリンを燃料とするバイクが登場した1900年代の初頭から1960年頃までは、クルクルとネジを回すように開け閉めする燃料キャップが主流でした。これはネジ込み式の瓶のフタや、現代のペットボトルのキャップと同様です。
そして1960年代頃に登場したのが、ヒンジで開閉するタイプです。ネジ込み式と違ってワンタッチで素早く開閉できるため、2輪や4輪のレース用のカスタムパーツとしても人気でした。ちなみに、市販4輪車はフューエルリッド式(ボディと同面のフタが開き、その奥に別途燃料キャップを装備)が主流になりますが、バイクは市販車もヒンジ式の燃料キャップが主流となります。
■飛行機用の燃料キャップを流用していた!?
現代ではメジャーな「エアプレーンタイプ」ですが、その名の通り、元々は飛行機用の燃料キャップが由来です。飛行機は主翼の中に燃料をタンクを備える場合が多く、とくに小型機などは翼の表面に、直に燃料キャップを設けていました。
アメリカ「SHAW AERO DEVICE」社の航空機用の燃料キャップ。1970年代にスズキのWGPワークスマシン「RG500」も使用。1980年代頃は人気のカスタムパーツだった
飛行機は翼の揚力で飛ぶため、翼の表面にはできるだけ突起物が無いことが理想です。そこで、翼の表面と真っ平になって空気抵抗にならない燃料キャップが考案されました。
そんな飛行機用の燃料キャップに目を付けたのが、レーシングマシンです。確実に閉まって燃料漏れを起こさず、開口部が大きく、レバー操作で簡単に開閉できるので、素早い給油作業が可能になるからです。
さらに燃料タンクの上に突起が無いため、ライダーがピッタリ伏せる時にも邪魔になりません。バイクの場合は燃料キャップ自体は空気抵抗に関係ありませんが、ライダーの身体やヘルメットの高さを考えると、空気抵抗を抑える効果がありました。
そのため、1970年代頃のGPレーサーは飛行機用の燃料キャップを流用するようになり、耐久レーサーや、マニアックなカスタム好きの間でも流行し始めます。日本では1980年代に空前のバイクブームが巻き起こり、レーサーレプリカ・ブームへと続きます。
そこで、スズキが1983年に「RG250Γ」にエアプレーンタイプの燃料キャップを装備し、その後は一気にメジャーになりました。
スズキ「RG250Γ」(1983年)は、市販車で初めて燃料キャップにエアプレーンタイプを採用
ところが、流行の元になったレーシングマシンの状況は変わっていきます。まずGPレースは、レース中に給油する必要が無いので小振りなネジ込みタイプなど、メーカー独自の形状に変わっていきました。
そして耐久レースの方は、ほんの数秒でガソリン満タンにできる、鈴鹿8時間耐久ロードレースでもお馴染みの「クイックチャージ」になり、燃料キャップではなく給油機とセットの専用の給油口を装備するようになりました。
というワケで、レーシングマシンが飛行機用燃料キャップを用いたのは、じつは短期間だったのです。
■エアプレーンタイプは、タンクバッグを装着しやすかった
レーサーレプリカでエアプレーンタイプが流行しましたが、その後はスポーツ車に限らず、多くのジャンルのバイクがエアプレーンタイプの燃料キャップを採用しました。
一般ライダーが乗る市販車は、大急ぎで給油する必要もなく、GPレーサーのようにベッタリ伏せるコトもありませんが、燃料タンクの上面がフラットになると「タンクバッグを装着する際に邪魔にならない」というメリットがあったからでしょう。
■“ネオクラ”ブームで、昔っぽいキャップが復活
とはいえ、現在はネオレトロやクラシック系のバイクも大人気なので、敢えて燃料タンクの上に飛び出したクラシカルな燃料キャップが復活します。
「エノット」社の大人気の燃料キャップ「MONZA(モンツァ)」をモチーフとした、ヘアライン仕上げのアルミ製ヒンジ式燃料キャップ。キャップを開けるとキー付きのネジ込み式キャップが現れる
昔ながらのネジ込み式や、かつてのレーシングマシンで人気だった「エノット」社のパーツを模したデザインの燃料キャップも登場しています。
エアプレーンタイプの機能性や利便性は大切ですが、旧車風のスタイルや質感も素敵なものです。
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