日産「サクラ」の大ヒットに見る、電動バイク普及のカギ
バイクのニュース / 2023年11月22日 17時0分
レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、やっぱりホンダ「ZOOK」が電動で復活して欲しいと言います。どういうことなのでしょうか?
■国民の超近距離移動に、「電動ズーク」があればヒット間違いなし!?
日産「サクラ」の販売が好調です。電動化を積極的に推し進める日産は、「リーフ」と「アリア」というEVをラインナップしていますが、もっとも後発の「サクラ」が大ヒットしているのです。
100%バッテリーの電気で走る日産「サクラ」は、実用的な「軽EV」として注目を集め、発表から約3週間で受注1万1000台を突破した(日産調べ)
その理由は「サクラ」が軽自動車であり、「近所の移動」に割り切ったコンセプトにあると思います。EVは航続可能距離や急速充電が云々と議論されていますが、「サクラ」は日常生活の移動に焦点を当てて開発したのです。
国民の約8割は、日常の移動距離は約90km未満だそうです。スーパーマーケットに買い物に出かける。友達を最寄りの駅まで送迎する。時には、ゴミ出しのためにクルマを使うことも少なくありませんよね。
高速道路に乗って実家に帰省するのは、年に一度か二度かもしれません。家族でキャンプへ、パウダースノーを求めて雪山へ向かうなど、休日のレジャーを趣味にしている人は例外かもしれません。
職業柄、遠距離移動が常であれば90kmでは足りませんが、約8割の国民は90km未満。ならば、近距離移動に限定し、「長距離移動する人はご遠慮ください」といった潔さもヒットの理由だと思います。
滅多に遠距離移動しないのに、重量のかさむバッテリーを積んで走っていることの無駄を排除して、近距離移動に十分な容量のバッテリーにしたことで、価格も抑えることが可能になりました。
航続可能距離が600kmや700kmとする高性能なEVは少なくありません。旅先で急速充電するのは面倒ですし、時間的なロスにイライラさせられます。そのデメリットを払拭するために、メーカーは足の長いEVを開発しがちです。
実際は90km程度の移動で生活している人がほとんどだということは、つまり余った500kmや600km分のバッテリーを積んだまま日常を過ごすことになります。
バッテリーはとても高価で質量もかさみます。必要のない余分なバッテリーに大枚をはたき、ずっしりと重いバッテリーを抱えて走っているのは無駄なのです。
それにバッテリー容量が多ければ、そのぶん満充電までの時間がかかります。自宅に設置した200w普通充電器で700km相当の電力を蓄えるのに数十時間、3日間ほど費やすこともあるのです。
その点で「サクラ」は、帰宅してすぐに自宅の普通充電器につなぐだけで翌日には満充電になっているわけで、充電待ちの煩わしさとは無縁です。
そんな「サクラ」を見ていてフと思い出したのが、以前もこのコラムで触れましたが、1990年頃に販売されていたホンダの原付バイク「ZOOK(ズーク)」です。
当時は原付スクーターの「タクト」に積んでいた空冷2ストローク単気筒50ccエンジンを搭載し、スケートボードに取り付けたような椅子に腰掛けてライディングするそれは、いま流行りの電動キックボードに椅子をつけたようなものです。
「モンキー50」や「スーパーカブ50」よりも軽量・コンパクトで、新聞配達や宅配といったデリバリーバイクとしては不向きですが、たとえばちょっとコンビニまで、近所の郵便ポストまでなど、そんな超近距離で、「ズーク」の機動性は重宝するはずです。
割り切りという点では、「サクラ」と「ズーク」にはコンセプトに共通項があるのです。
最近は、電動キックボードなる乗りものが都市部で隆盛のようですが、僕(木下隆之)はやはり、腰掛けて乗るバイクの安心感には抗えません。「サクラ」のように、潔く割り切ったコンセプトの「電動ズーク」を販売して欲しいものです。
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