ベネリ「レオンチーノ125」なら味わえる 1クラス上のフィーリング
バイクのニュース / 2023年11月21日 11時10分
イタリア発祥の名門バイクブランド「Benelli(ベネリ)」がラインナップする「レオンチーノ125」は、排気量125ccの水冷単気筒エンジンを搭載するスクランブラースタイルのネイキッドモデルです。往年のモデル名を冠する原付2種モデルに試乗しました。
■伝統の車名を継承しても、ネオクラシックではない?
近年の日本の2輪市場では、原付2種クラスがかなりの活況を呈しています。中でも人気が高い車両は、ホンダの水平単気筒車や国内外のスクーターですが、ヤマハが2023年から日本への導入を開始した「YZF-R125」、「MT-125」、「XSR125」に興味津々の人も大勢いるでしょう。
ベネリ「レオンチーノ125」に試乗する筆者(中村友彦)
もっとも125ccクラスの充実度なら、イタリアの「Benelli(ベネリ)」も侮りがたいラインアップを揃えています。前後12インチの「TNT125」とストリートファイターの「S125」に加えて、2019年から(日本市場への導入は2023年から)は「レオンチーノ125」を発売しているのですから。
イタリア語で「小さなライオン」を意味する「leoncino(レオンチーノ)」は、カワサキのニンジャやトライアンフのボンネビル、ハーレー・ダビッドソンのローライダーなどのように、ベネリにとっては重要な車名です。
最初のレオンチーノは1951年に登場した125cc単気筒車で、以後このモデルはさまざまな仕様変更を受けながら、1970年代まで販売が続くロングセラーになりました(1953年の第1回モト・ジロ・デ・イタリアでは、主力の175cc勢を抑えて、125ccのレオンチーノが総合優勝を達成)。
そんなレオンチーノが、40年以上の歳月を経て復活したのは2017年で、当初は排気量500ccの並列2気筒車のみでしたが、現在は250/125cc単気筒車と800cc並列2気筒車が加わっています。
そして伝統の車名を使うとなれば、いわゆるネオクラシック路線を選びそうなものですが、レトロテイストを取り入れつつも、新時代のレオンチーノに往年の同名車の再現という意図はないようです。
■プジョー「PM-01」との共通点と相違点
今回の試乗で「レオンチーノ125」と対面して、私(筆者:中村友彦)が「オヤッ?」と感じたのは、スチールトレリスフレームの構成と水冷単気筒エンジンの外観が、少し前に体験したプジョーモトシクルの「PM-01」とまったく同じことでした。となるとおそらくは、ベネリの親会社であるQJモーターが生産しているのでしょう。
ベネリ「レオンチーノ125」
まあでも、4輪の世界では異なるメーカーが主要部品を共有することは珍しくないですし、ハーレー・ダビッドソンの新作である「X350」と「X500」も、生産はQJモーターで既存のベネリとの共通点が多いモデルです。そういった事情を考えれば、とくに驚くことではないのかもしれません。
ただし、フレームとエンジンを共有していても、「レオンチーノ125」と「PM-01」は別物です。ひと目でわかる2台の相違点は、外装一式、灯火類、メーター、ホイール、ブレーキ、マフラー、ハンドル、シートなどで、最高出力と最大トルクはレオンチーノの方が控えめです。
そして実際に2台を体感した私は、高級車然とした雰囲気を備える「PM-01」とは異なり、「レオンチーノ125」にはエントリー&ベーシックモデルという印象を抱きました。
搭載するエンジンは排気量125ccの水冷単気筒SOHC4バルブ。最高出力は9.4kw(12.8PS)/9500rpm、最大トルクは10.0Nm/8500rpmを発揮する
その主な理由は、「レオンチーノ125」がフレンドリーだったからです。と言っても、べつに「PM-01」が手強いわけではないのですが、シート高が15mm低く、ハンドルグリップ位置が高くて手前の「レオンチーノ125」の方が、とっつきは良いですし、押し引きしているときもライディング中も、7kgの車重の差は意外に大きく思えました(レオンチーノ125=145kg、PM-01=152kg)。
さらに言うなら、「PM-01」より14万800円も安い45万3200円という価格(消費税10%込み)も、私が「レオンチーノ125」にエントリー&ベーシックという印象を抱いた一因です。
いずれにしても、日本を含めた世界各国でベネリの勢力拡大に貢献することになるでしょう。
■いろいろな用途に、過不足なく使えそう
さて、文章を書き進めているうちに兄弟車にしてライバル車との比較論になってしまいましたが、今回の試乗で私が最も感心したのは、原付2種クラスで時として感じる物足りなさが、ほとんど見当たらないことでした。
「レオンチーノ125」を走らせてみると、125ccクラスの中で1クラス上の安定感が味わえるものだった
まずは車体の説明をすると、フレーム剛性が十二分で、ホイールベースが前後17インチタイヤを履く125ccスポーツバイクの平均を大幅に上回る1375mmに設定されているからか、このモデルは1クラス上の安定感を味わわせてくれるのです。
ただしそれでいて、車幅の狭さや細身のバイアスタイヤなどが功を奏しているようで、乗り手の操作に対する反応はなかなか軽快です。
一方のエンジンに関しては、低回転域の蹴り出しの強さが印象的でした。もっとも、高回転域の盛り上がりはライバル勢にいまひとつ及ばない……ような気がするのですが、スロットルを大きく開ければ、3ケタ台の速度にあっという間に到達しそうですから、一般的な使い方で力不足を感じる場面は滅多に無いでしょう。
そんなわけで、「レオンチーノ125」の乗り味に関する私の印象は“実直”です。
伝統の車名や独創的なルックスに注目が集まりがちですが、このバイクはいろいろな用途に過不足なく使えそうな、万能車としての資質を備えているのです。と言っても、そういった感触は兄貴分の「レオンチーノ250」も同様ですが、車格が小さくて車重が軽いぶん、弟分のほうが気楽で軽快な印象でした。
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