インディアン「スポーツチーフ」で、キング・オブ・ザ・バガー気分が味わえる!?
バイクのニュース / 2023年12月16日 11時10分
米国の老舗バイクブランド「Indian Motorcycle(インディアン・モーターサイクル)」の大型ハイパフォーマンスクルーザー「Sport Chief(スポーツチーフ)」に試乗しました。新時代の「チーフ」シリーズの一員は、どのような特徴があるのでしょうか。
■初代「チーフ」の登場は1921年
現在の「Indian Motorcycle(インディアン・モーターサイクル)」(以下、インディアン)のラインナップには20台以上が並んでいて、日本の公式サイトではそれらを、小型軽量化に配慮した「スカウト」、フラットトラックレーサーの技術を転用した「FTR」、ベーシックモデルと言うべき「クルーザー」、パニアケースを装備する「バガー」、ロングランの快適性に特化した「ツーリング」、メーカーメイドのカスタムである「エリート」、という6つのジャンルに分類しています。
インディアン「Sport Chief」に試乗する筆者(中村友彦)
ここで紹介する「Sport Chief(スポーツチーフ)」はクルーザーに属するモデルですが、車名が示す通り、既存の「チーフ」シリーズとは一線を画する運動性能を備えています。
本題に入る前に、「チーフ」シリーズの歴史をざっくり振り返っておくと、1921年から発売が始まった初代は、以後の約30年に渡って旗艦を務めることになりました。そして1990年代末に同社が最初の復活を遂げた際も、2011年にポラリスインダストリーズが経営権を取得したときも、インディアンの主力機種は「チーフ」シリーズだったのです。
もっとも昨今では、より高価で豪華なモデルとして「ロードマスター」や「チャンレンジャー」などが登場していますが、「チーフ」シリーズを抜きにして、インディアンの歴史を語ることはできないでしょう。
そんな「チーフ」シリーズは、2022年型で大幅刷新を受けています。具体的には、2014年型以降の特徴だったハイドロフォーミング製法のアルミフレームを捨て、各部にラグを用いたシンプルで流麗なスチールフレームを導入し、サンダーストロークという名称の空冷VツインOHV2バルブは排気量を1811ccから1890ccに拡大しました。
また、あえてシングルからツイン化したリアショックや、右2本出しマフラー、大胆にショート化した前後フェンダーなども、新世代の「チーフ」シリーズの特徴です。
■運動性能の向上を意識した、装備と数値
2022年から始まった新世代は、当初は「チーフダークホース」、「チーフボバーダークホース」、「スーパーチーフリミテッド」の3機種でしたが、2023年からは独創的な造形のクォーターカウルを装備する「スポーツチーフ」が加わりました。このモデルで注目すべき要素は、KYB製φ43mm倒立フォーク、他機種よりストロークが25mm長いリザーブタンク付きのFOX製リアショック、ブレンボ製のラジアルマウント式フロントブレーキキャリパー、29度/132mmから28度/111mmに変更されたキャスター角/トレールなどで、これらはいずれも運動性能の向上を意識した装備・数値です。
インディアン「Sport Chief」
もっとも、世の中にはこの種のモデルが運動性能を高めることに対して、疑問や違和感を抱く人もいるでしょう。とはいえ近年の大排気量クルーザーの世界ではスポーツライディングへの関心が高まっていて、アフターマーケット市場では速さに磨きをかけるチューニングパーツが数多く販売されていますし、アメリカではパニアケースを装備したクルーザーが激戦を繰り広げるレース「King of the Baggers(キング・オブ・ザ・バガー)」は絶大な人気を獲得しています。
ちおなみに、インディアンがこのレースに投入しているワークスレーサーは、水冷VツインOHC4バルブの「チャレンジャー」がベースですが、おそらく「スポーツチーフ」には、同社がレースで培ったノウハウが投入されているのではないか……と、私(筆者:中村友彦)は思います。
■エンジンの潜在能力を引き出せる
「あ、そうなるのか」……走り始めて約10分で、私はこの車両の存在意義が理解できた気がしました。どこからどう語るかで迷うところですが、まず大前提として、「チーフ」シリーズが搭載するサンダーストロークは相当にアグレッシブでパワフルなのです(最大トルク162Nm/3200rpm、最高出力は未公表)。
搭載されるエンジンは排気量1890ccの空冷Vツイン、通称「サンダーストローク116」。最大トルクは3200rpmで162Nmを発揮
もっとも、搭載されるライディングモードを穏やかな「スタンダード」か「ツーリング」にすれば、大排気量クルーザーならではの心地いいマッタリ巡航が堪能できるのですが、「スポーツ」の加速は、ちょっと身の危険を感じるほど強烈です。だから私は、日本の道路事情では「スポーツ」の出番はほとんどないと感じていたのですが……。
「スポーツチーフ」では気軽に、とまでは言いませんが、いろいろな場面で「スポーツ」モードを選択して、ワイドオープンが楽しめました。その理由は言わずもがな、足まわりの刷新によって制動力や旋回性、トラクション性能が向上しているからで、既存の「チーフ」シリーズとは異なり、このモデルは何かと制限が多い日本の道路でも、自信と余裕を持ってエンジンの潜在能力を引き出せるのです。
もちろん、だからと言って同社の「FTR」を含めた一般的なスポーツバイクのように、ワインディングロードをガンガン攻められるわけではありません。とはいえ、怒涛のトルクを発揮するエンジンと300kgオーバーの巨体を実感しながらのスポーツライディングは、キング・オブ・ザ・バガーに参戦しているレーサーを思わせるところがあって、それはそれで非常に楽しいことでした。
ガンファイタースタイルのシングルシートにミッドコントロール、フロント19/リア16インチのキャストホイールを装備
そんなスポーツチーフで私が気になったのは、ガンファイタータイプのシートが着座位置を後方に固定してしまうことと、既存の「チーフ」シリーズよりバンク角が増えていても、その気になってコーナーを攻めるとすぐにステップを擦ってしまうことです。
もっともこの2点はアフターマーケットパーツで解消できそうですし、バンク角の少なさは乗り手の自制心に役立っている気がするので、問題と言うほどではないのかもしれません。
※ ※ ※
インディアン「スポーツチーフ」の価格(消費性10%込み)は328万円からとなっています。
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