電動バイクレース『MotoE』は5年間でどう成長したのか? 今後への課題とは
バイクのニュース / 2024年1月10日 19時40分
電動バイクレース『MotoE』は、2023年に5シーズン目を迎えました。マシンサプライヤーがドゥカティに替わり、開催数も増えました。しかし、MotoEらしいレースとは何か……と考えたとき、まだ電動バイクレースの魅力を十分に生かしきれていないのでは、と感じたことも事実です。
■5シーズンの取材を通して、今後に期待したいこと
2023年シーズン、電動バイクで争われるレース『FIM Enel MotoE World Championship』(以下、MotoE)は5年目のシーズンを終えました。5シーズン目のMotoEには、新しい風が吹いていました。
MotoEのレースは6周から10周で行なわれる
2023年は、ワンメイクマシンサプライヤーがドゥカティとなり、MotoEのために開発した電動レーサー「V21L」が供給されました。そして初年度の2019年から2022年までは「World Cup」として開催されていたところ、「World Championship」に格上げされたのです。
また、2014年Moto2チャンピオンのティト・ラバト選手や、スーパースポーツ世界選手権(WSS)をはじめ、世界で活躍し続ける日本人ライダー、大久保光選手などが参戦しました。
2022年までの序章を終え、MotoEにとって新しいステージの幕開けとなるように見えました。
確かに、マシンの変更による改善は大きかったと言えます。2023年シーズンは最多開催数の全8戦、各大会2レース開催の全16レースで行なわれました。その全戦で、オールタイムラップ・レコードと、最高速が更新されています。
最高速としては、ムジェロ・サーキットで行なわれたイタリア大会で281.9km/hが記録されました。以前の記録とはコンディションが異なることもあるとはいえ、マシンのポテンシャルが向上していることは確かでしょう。
しかし結論から言えば、2019年からMotoEを取材し、フォローし続けてきたわたし(伊藤英里)は、5シーズン目のMotoEの状況は「2022年と大きくは変わらなかった」と考えています。
2023年シーズンもMotoEに参戦した唯一の日本人ライダー、大久保光選手
2023年はマシンサプライヤーが変わったこともあり、注目度という意味でもひとつの節目になるシーズンだろうと考えていました。ただ、そこに大きな変化はなかったのです。
それはなぜか? 個人的な見解を述べると、現在の開催形式が課題のひとつにあると考えています。
電動バイクにはMotoGPマシンのようなエキゾーストノートがなく、サーキットのように開けた広い場所でのレースは、少なくとも現状の電動バイクでは、魅力が伝わりづらいように思うのです。
電動バイクにも「音」はあります。ブレーキングのときに発生するスキール音です。その甲高い音は、ライダーが持てる全てを注ぎ込んでマシンを減速させてライバルを抜きにかかろうとしているのだと、あるいは抜かせまいとしているのだと、激しいブレーキングを想起させるエキサイティングなものです。映像越しでさえ、甲高い音とともにコーナーで減速し、前のライダーのインサイドにマシンをねじ込むその瞬間の緊張感がひしひしと伝わってきます。
ドゥカティ「V21L」の車両重量は225kg。重い車体を激しいブレーキングでコントロールするとき、甲高い音が上がる
しかし、その音はエキゾーストノートのような臓腑に響く咆哮ではないため、サーキットのような開けた場所ではスポイルされてしまうのです。もしその音がスタンドにまで届いていれば、レースはさらにエキサイティングに見えることでしょう。
逆に言えば、現状ではこうした「音」とともにレースを見られる映像のほうが、MotoEらしさを感じられることになります。
例えば、屋内での開催という可能性も考えられるでしょう。電動バイクだからできることですし、電動バイクらしい音を感じやすいはずです。ただこの場合、エスケープゾーン、安全性の確保が大きな課題となります。
電動バイクレースは、とてもエキサイティングなレースだと考えています。バッテリー容量によって短く設定された周回数(2023年シーズンは最大でも10周でした)のなかで、各ライダーが全力を尽くす戦いは、内燃機関のバイクのレースと変わりません。
MotoE用パドックの「Eパドック」では、走行の合間にマシンへの充電が行なわれる
MotoEにとってどのような形で行なわれることが最適であるのか、という点では課題も多く、考える余地が大いにあるでしょう。今後のMotoEの成長が、電動バイクレース「らしい」ものになることを期待したいと思います。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【MotoE第6戦ドイツ大会】土砂降りでレース2は1時間ディレイに。電動バイクの雨のレースとは
バイクのニュース / 2024年7月12日 18時10分
-
【インタビュー】アナ・カラスコ選手「もう一度、チャンピオンに」女性の世界選手権参戦の理由と、その役割
バイクのニュース / 2024年7月6日 15時10分
-
【MotoE第5戦オランダ大会】レース1は、転倒とペナルティ続出の展開に
バイクのニュース / 2024年7月1日 17時10分
-
【MotoGP現場ぶら歩き】山に囲まれたムジェロ・サーキットに感じたコントラストと、コース“外”で上がるエキゾーストノート
バイクのニュース / 2024年6月30日 12時10分
-
【インタビュー】平野ルナ選手~反対されても決めたST600参戦。その道は世界の舞台につながっていた~
バイクのニュース / 2024年6月29日 12時10分
ランキング
-
1大谷翔平&真美子さんのレッドカーペット中継に… 人気アイドルが「思いっきり映ってる」と話題
Sirabee / 2024年7月18日 15時40分
-
2「通知表を付けなおして!」怒り狂う母親との地獄の面談で、その場を収めたの“息子の一言”
女子SPA! / 2024年7月20日 8時47分
-
3山手線で妊娠中に気づいた“妊婦キーホルダー”の現実「席を譲ってくれる人は“ほぼ皆無”」
日刊SPA! / 2024年7月20日 15時52分
-
4【インプラント治療】どの歯科医師、歯科医院を選べばいいか?「“楽で簡単な治療”と広告でアピール」「治療費が安すぎる」には要注意
NEWSポストセブン / 2024年7月21日 11時14分
-
5Q. ノートパソコンが濡れてしまいました。すぐに拭けば、使い続けても大丈夫ですか?
オールアバウト / 2024年7月20日 21時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)