アクセル&クラッチ操作不要でギアチェンジ可能な「クイックシフター」って、そもそもナニ?
バイクのニュース / 2024年1月12日 11時10分
日々進化するバイクのメカニズム。英文字やカタカナで表記される最新機構も数多く、いったいどんな機構で、バイクに乗る上でドコに役立つのかいまひとつ解らない「コレってナニ?」という装備が盛り沢山です。今回はその中から「クイックシフター」について解説します
■シフトペダル操作だけで、ギアチェンジできる
スポーツバイクの多くは5速、または6速の変速機(トランスミッション)を装備しており、スピードや走行状態によってギアチェンジを行ないます。
クイックシフターを作動させるために、シフトペダルのリンクシャフトに設けられたセンサースイッチ。写真はホンダ「XL750 TRANSALP」でオプション設定のアップ/ダウン対応のクイックシフター
ギアチェンジするにはアクセル(スロットル)を戻し、クラッチを切り、シフトペダルの操作が必要になりますが、「クイックシフター」を装備していれば“シフトペダルの操作のみ”でギアチェンジが可能になります(走行中のギアチェンジのみ。発進時や停止時はアクセルやクラッチの操作が必要)。
■もともとは、レース用に生れた機構
クイックシフターは速さを競うレースシーンで、ギアチェンジにかける時間を短縮するために生まれた機構です。
ホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE」シリーズのアップ/ダウン対応のクイックシフターは、操作フィーリングの選択が可能でメーター内に設定を表示する
加速する際のシフトアップで、アクセルを戻してクラッチを切っている間はエンジンのパワーが後輪から途切れるため、その分加速が鈍ります。またカーブを立ち上がる際は、まだ車体が深く傾いて旋回中にシフトアップしますが、ここで後輪の駆動力が途切れると、走行ラインが膨らんでしまいます。
反対に減速時のシフトダウンは、スムーズに行なわないと強くエンジンブレーキが効いてショックが発生します。これもシフトダウン操作にかける時間が長いことが原因ですが、このショックがカーブに進入する時に起こると、思い通りに曲がり始めることができません。
そこで、アクセルとクラッチの操作が不要で、シフトペダル操作のみで瞬時にギアチェンジできるクイックシフターが必要になったワケです。クイック(quick)は「素早い、迅速な、短時間の」といった意味なので、まさに名前通りの機構です。
■シフトアップ側は、けっこう昔から存在した
じつは、シフトアップ側のクイックシフターは、けっこう以前から存在していました。あくまでレース用で同様の装備としては、1970年台頃から使われていました。
そもそもギアチェンを行なう時に、アクセルを戻してクラッチを切るのは、変速機のギア同士がガッチリと噛み合っていてギアが切り替えられないため、その噛み合った力を抜くために行なっています。
そこで、シフトペダルを操作する瞬間にエンジンの点火をカットして、ギアが噛み合う力を抜くのが、シフトアップ側のクイックシフターの大まかな仕組みです。
■「ライド・バイ・ワイヤ」の登場で、シフトダウンにも対応!
ギアチェンジ操作では、シフトアップよりシフトダウンの方が苦手……というライダーは多いかもしれません。ギアを落としてクラッチを繋ぐと、ガクンと車体が揺れたり、ともすれば強いエンジンブレーキが効いて後輪がロックしそうになることもあります。このショックを無くすには、シフトダウン操作の最中にアクセルを開けて空ブカシする「回転合わせ」のテクニックが有効ですが、けっこう難易度が高いのです。
電子技術の進化で「ライド・バイ・ワイヤ(ホンダの呼称はスロットル・バイ・ワイヤ)」が登場したことで、シフトダウンに対応するクイックシフターの装備が始まった。写真はホンダ「CBR250RR」のスロットル・バイ・ワイヤのアクセルグリップ
これはバイクにとっても同様で、以前のバイクの構造ではアクセルやクラッチ操作ナシで、シフト操作のみでギアを切り替えることはできても、ショックを消すための回転合わせは不可能でした。そのためクイックシフターは、長らくシフトアップ側のみに使える装備だったのです。
しかし、アクセル(スロットル)を電気信号によって電動サーボモーターで開け閉めする「ライド・バイ・ワイヤ(ホンダの呼称はスロットル・バイ・ワイヤ)」が登場したことで、バイク自身が「回転合わせの空ブカシ」(オートブリッパーと呼ぶ)をできるようになりました。
この電子技術の進化によって、2010年代の中頃からシフトダウンにも対応するクイックシフターの装備が始まりました。
■仕様の種類やオプション設定もアリ
クイックシフターは(現時点では)、シフトアップ側のみ作動するタイプと、アップ/ダウン対応の「双方向クイックシフター」の2種類があります。また標準装備される場合と、オプション設定の車種もあるので、バイク選びの際には注意が必要です。
カワサキ「Ninja H2 SX SE」のアップ/ダウン対応のクイックシフターは、1600rpmから作動するのでツーリング時も快適
また前述したように、クイックシフターはレースから生まれたもので、基本的にスポーツ走行に向けた機構です。アクセルとクラッチ操作が必要ないので、なんとなくオートマの雰囲気もありますがAT免許では乗れませんし、レースやサーキットのスポーツ走行で使わない低回転域(3000回転以下など。メーカーや車種で異なる)では作動しない場合もあります。
とはいえカワサキ「Ninja H2 SX」のように、クイックシフターの作動回転を1600rpmに下げて(カワサキの他モデルのクイックシフターは2500rpm)、ストリートライディングにも対応したモデルもあります。
この辺りもバイク選びの際には、自分の使いたいシーンに合っているか、キチンと調べた方が良いでしょう。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
ヤマハがクラッチ操作不要のMT技術「Y-AMT」を新開発「スポーツ走行に新たな次元」
レスポンス / 2024年6月27日 16時0分
-
【ホンダ E-Clutch 試乗】渋滞も楽チン! だけどMTバイクを操る楽しさはしっかりありました…小鳥遊レイラ
レスポンス / 2024年6月26日 21時0分
-
「ニュートラル」は、なぜ1速と2速の間にあるの?
バイクのニュース / 2024年6月21日 11時10分
-
【ホンダ CB650R/CBR650R E-Clutch 試乗】“小さなおじさん”が入ってる!? ガツンと来ない「電光石火の変速」に驚いた…西村直人
レスポンス / 2024年6月17日 19時0分
-
俺のやってきた35年間を返せ!! スポーツ走行派にこそ欲しいホンダEクラッチ
バイクのニュース / 2024年6月14日 12時10分
ランキング
-
118÷0=?物議を醸した小3の宿題に東大生が反応。「教員の力不足」「思考力を磨く良問」などの声
日刊SPA! / 2024年6月30日 15時52分
-
2暑すぎる日は食べて冷やす アイスを食べるより健康的な体の熱冷まし食材10選
CREA WEB / 2024年7月2日 6時0分
-
3ロシア軍のミサイルを「機関銃」で撃墜!? “あわや着弾”ギリギリで回避 ウクライナ国防省が写真公開
乗りものニュース / 2024年7月2日 11時42分
-
4訪日観光客がSNSには決して出さない「日本」への本音 「日本で暮らすことは不可能」「便利に見えて役立たない」と感じた理由
NEWSポストセブン / 2024年7月1日 16時15分
-
5事件や事故の報道でよく目にする「命に別条はない」と「意識はある」、「重傷」と「重体」…それぞれの違いとは?【元新聞記者が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月1日 15時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)