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個性際立つバイクと、共通化されたいまどきのクルマ

バイクのニュース / 2024年1月17日 16時50分

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、いまどきのクルマに比べると、バイクは個性的で魅力があると言います。どういうことなのでしょうか?

■バイクの世界は、輝いて見える

「普通二輪免許でも乗れるハーレー」が注目を集めています。排気量400cc以下で新登場となった「X350」がそれです。憧れのハーレーダビッドソンが身近になったと、歓迎する声が多く寄せられているようです。

北九州の「ミハラ自動車」を訪れた北九州の「ミハラ自動車」を訪れた

 同時に、その兄貴分とも言える「X500」も新登場しました。その名から想像できるように排気量は400ccを超えるわけですが、大排気量Vツインを基本にブランド展開してきたハーレーにとっては、エポックなモデルであることには違いありません。

 僕(筆者:木下隆之)が2台の「X」シリーズを乗り比べて驚かされたのは、排気量差が約150ccだけの兄弟モデルであるのにも関わらず、まったく別物の仕上がりとなっていたことです。

 フレームも、ハンドルも、ライディングフォームも異なります。パワーフィールも違っていて、まるで異母兄弟であるかのようなのです。

 同じメーカーの兄弟モデルなのにテイストが異なる点が、じつはバイク人気を支えているのではないか、と思うのです。

 先日、北九州の「ミハラ自動車」の工場見学をさせていただきました。ここではネオクラシックカーと呼ぶ、1990年前後のクルマを多く在庫し、完璧なレストアで人気がある会社です。そのバックヤードには、夥しい数のハンドルやホイールが保管されていました。

 ミハラ自動車のレストア技術は高く評価されていますが、それだけではなく、オリジナルに忠実な再現でも定評があります。そのため、今から30年も40年も前のハンドルやホイールを収集し、大切に保管しているというわけです。

 その数は、体育館ほどもある部品庫を埋め尽くす膨大さです。というのも、あの頃の日本車は、モデルごとにハンドルやホイールの意匠を変えることはもちろんのこと、同じモデルでもグレードによっては専用のデザインとしていたからです。

 トヨタ・クラウンを例に挙げると、スタンタードグレードには安価なハンドルとホイールが組み込まれます。ラグジュアリーグレードには高級感のあるデザインが施されます。スポーティ仕様ではそれに相応しい躍動感あるデザインになります。ということは、1モデルに複数のハンドルなどが用意されることになります。ミハラ自動車のストックヤードに夥しい数の部品が保管される理由は、そこにあるのです。

 一方で、最近のクルマは部品の共通化が常識的な開発スタイルになっています。さまざまなパーツを専用に開発するのはコストアップにつながるからです。共通部品にすれば開発コストが抑えられ、多産品種とすることで、数の論理にも貢献します。

 かつて日産自動車の工場では、こんな出来事があったと言われています。

 当時の社長が工場を視察したところ、そこでは異なるクルマが生産ラインに流れており、それぞれに適合するハンドルやホイールを組み付けていました。

 ですが、あまりにも数が多いため組み付けの間違いが少なからず発生していました。それを防ぐため、日産ではラインに乗って流れてきたモデルに、どれが適合パーツなのか瞬時に判断できるよう、ハンドルやホイールを指し示すランプが煌々と光るように細工したのです。作業員は光ったランプのハンドルやホイールを組み付ければいいわけですから、ミスは大幅に減ります。

 ところが、それを知った社長は激怒したそうです。工場ではカイゼンを高く評価されるとばかり期待していたそうですが、逆に叱られてしまった……と。「そもそもハンドルやホイールの種類が多すぎることが問題なのだ」というわけです。バブル経済が崩壊していた時期でした。

 コストを無視してクルマを開発していたのでは、自動車メーカーとして生き残れない。いま思えば正しい経営判断でしょう。

 その頃から、部品の共通化は急速に進みました。いまでは、ひとつのモデルにはほとんど共通のパーツが使われています。そればかりか、同じメーカーであれば、たとえ異なるモデルでも部品は共通しています。さらに言うなれば、ライバルメーカー同士でエンジンやプラットフォームを融通し合うような時代になってしまいました。

 ことほどさように、クルマは金太郎飴のごとく同じようなモデルが増産されます。日産スカイラインにはメルセデスのエンジンが搭載されています。トヨタスープラの中身はBMWです。これは味気ないですよね。「ベンツも日産も同じ、トヨタもBMWも同じ」なんですから……。

 その点で、バイクはハンドルもホイールも専用パーツが与えられることが少なくありません。ハーレーの「X500」と「X350」は、単純な排気量違いではなく、車体を構成するパーツが異なるのですから、個性が際立つわけです。

 そういった目線でバイクを観察すると、この世界が一層キラキラと輝いて目に映るのです。

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