次回はぜひバイクで行きたい！ イギリス『エースカフェ・ロンドン』訪問記

MotoGP取材のためロンドンに滞在していた期間に「エースカフェ・ロンドン」を訪れました。小雨が降るその日、カフェにいたバイク乗りはまばら……でしたが、カフェの中にいるうちに「次は、バイクでここに来たいな」と思っていたのです。

■タイミング悪かった？　「カフェレーサー」の由来にもなった伝説のカフェ

「ACE CAFE LONDON（エースカフェ・ロンドン）」（以下、エースカフェ）を訪れたのは、冷たい雨が降ったり止んだりする7月下旬のことでした。2023年のロンドンは、7月になっても気温が上がらず、毎日長袖シャツを着て過ごしていました。「10年ほど前は夏でも長袖で過ごすのが当たり前だった」と現地の人は言いますが、この年はとくに気温が低い方だったようです。ときには20℃を超えない日さえあったほど。雨が降るとさらに冷えるので、この日は長袖シャツに厚手のパーカーを着込んでいました。

「ACE CAFE LONDON（エースカフェ・ロンドン）」にやって来た。この日はあいにく、小雨が降る肌寒い天気だった……

　わたし（筆者：伊藤英里）は2023年3月下旬から6カ月ほど、MotoGPの取材のためにロンドンを拠点にしていました。本来ならバイクでエースカフェに向かいたいところですが、残念ながら、愛車のヤマハ「YZF-R25」は日本で留守番をしています。わたしはバスで、ノース・サーキュラー・ロードに向かったのです。

　それにしても、イギリスのバスというのは本当によく揺れます。ロンドンのバスと言えば真っ赤な2階建てのダブルデッカー（ちなみに、2階建てではない普通のバスも走っています）。このバスが、とにかくガタガタと揺れるのです。

　おそらく、道路の路面状況があまり良くないのでしょう。かなりの揺れに、窓ガラスがずっとガチャガチャと嫌な音を立てているのです。頭上でのそれに、わたしはいつ窓が割れるのかとひやひやしました。けれど、周りの乗客は、なんでもない顔でスマホをいじったり、通話などしています（バス内での通話は、ロンドンでは当たり前の光景でした）。彼ら彼女らが日本のバスに乗ったら、揺れの少なさに驚くかもしれません。

　バスを1回乗り換えてたどり着いたエースカフェは、広大とは言わないまでも、広めの駐車場の中にありました。調べてみると、1938年にオープンし、第2次世界大戦の空襲で被害を受けて再建されたものの、1969年に一度閉店。その後、2001年に正式に再オープンしたということでした。

フードやドリンクを注文するカウンター。黒板にはメニューのほか、イベント告知なども書かれていた

　バイク乗りたちが集う場所ということですが、訪れたのは平日昼間で、イベントもなく小雨が降っているという状況。それでも数台のバイクが停まっていました。

　カフェの入口がわからなくて「ここから入っていいの？」と近くにいた人に聞くと、店員なのか常連なのか、彼はニコッと笑って「どこからでも！」と答えます。なんだか、自由な雰囲気です。「ここは、バイクで来たい場所だな」と思うのでした。

　店内にはフードやドリンクをオーダーするカウンターがあり、カウンターの黒板には、フードのメニューやイベントの告知がびっしりと書かれています。

　カウンターの前には客席が並び、ヘルメットをテーブルの上に置いたバイク乗りの男女が黙々と食事をしていて、奥の席では平日昼間の時間をゆっくり過ごしているらしい老年の男性が新聞を読みながらコーヒーを飲んでいました。奥にはエースカフェのグッズを売る小さなショップがあり、バイクが数台、置かれていました。

　壁のように大きな窓から見える外には、厚ぼったい雲が覆う空と、ひっきりなしに降る小雨と、濡れた道路が見えました。店内は広く、静か。そんな中に混じって、わたしはもう一度、「バイクで来たかったな」と思いました。そこはカフェであり、本来は「集う場所」であるように感じられたからです。

「また来よう」と、エースカフェを出て考えます。次はバイクで、そしてイベントがあるときに……。そうしたらきっと、また違うエースカフェの姿が見られる気がするのです。