クルーザーとして生まれたのにスポーツできちゃう!? ロイヤルエンフィールドの新型モデル「ショットガン650」試乗
バイクのニュース / 2024年2月5日 7時10分
昨年/2023年12月、ロイヤルエンフィールドは、またしても新型車を発表。米国ロサンゼルスで国際試乗会を開催しました。「ショットガン650」と名付けられたその新型車は、先に発売されたクルーザーモデル「スーパーメテオ650」と同じエンジン、同じフレームを採用していますが…その詳細を紹介します。
■「スーパーメテオ650」と共通プラットフォームの新型ネイキッド
ロイヤルエンフィールドにとって、昨年/2023年は、ニューモデルラッシュの年となりました。春にはクルーザーモデル「スーパーメテオ650」と、モダンなネイキッドモデル「ハンター350」の国内販売がスタート。
ロイヤルエンフィールド新型「ショットガン650」に乗る筆者(河野正士)
そして日本での発売時期は未定ながら、夏にはクラシックモデル「ブリット350」を、11月に開催されたバイクの見本市「EICMA(エイクマ)」ではアドベンチャーモデルの新型ヒマラヤを発表。
また、EICMAでは開発中ながら、電動のエレクトリック・ヒマラヤも公開しました。勢いのあるロイヤルエンフィールドでも、これで新型車は打ち止めだろうと思っていた矢先、この「ショットガン650」が発表されたのです。近年、これだけの数の新型車を、1年で発表するメーカーは、他にはありません。それだけロイヤルエンフィールドは、勢いに乗っているのです。
ロイヤルエンフィールドは、共通プラットフォームで異なるキャラクターのバイクを造るのが上手なブランドです。
プラットフォームとは、エンジンとフレームから成るバイクの基本骨格のことで、日本未導入のブリット350を加えると、Jプラットフォームと呼ぶ350ccエンジン搭載モデルは4機種、650プラットフォームはコンチネンタルGT650とINT650の2機種をラインナップしています。
新型「ショットガン650」の試乗会が行われたのは、米国ロサンジェルス。大都市における渋滞を経験しながら、そこから少し足を延ばすだけでバリエーション豊かなワインディングにもアプローチできます。そして新旧の車&バイクカルチャーがソコココにあることが、LAでの試乗会開催の決め手になったと言います
ここで紹介する「ショットガン650」は、スーパーメテオ650と同じプラットフォーム、勝手に名前を付けると650クルーザー・プラットフォームに属し、はやくも2機種目をラインナップしたというわけです。
でも650クルーザー・プラットフォームだからといって、「ショットガン650」を、ゆったりノンビリ走るクルーザーモデルと思ってはいけません。なぜなら「ショットガン650」は、前後サスペンションやホイールサイズを変更して、クルーザーからスポーツも出来るネイキッドモデルへと変貌を遂げているからです。
■「スーパーメテオ650」との違いは?
「ショットガン650」はネイキッド的なスタイルを構築しているが、その着想はカスタムバイクシーンにあったといいます
その変更点を、具体的に解説していきましょう。まずはホイール。「ショットガン650」はフロント18インチ/リア17インチホイールを採用しました。
フロント19インチ/リア16インチのホイールを採用するスーパーメテオ650は、前後ホイール径の差が大きく、それによって前上がりのクルーザースタイルを造り上げる大きな要因になっていました。
対して「ショットガン650」は、前後ホイール径の差を小さくして、水平に近い、ネイキッドバイクのようなシルエットを造り上げています。
「ブレードランナー」「AKIRA」「スターウォーズ」といった映画やマンガ、ビデオゲームに登場する乗り物からもインスピレーションを得ているとロイヤルエンフィールドのデザインチームは語っていました
その水平シルエットの構築には、前後サスペンションの変更も効いています。フロントフォークはスーパーメテオ650と同型を使用していますが、フォーク長を30mm短くして、フォーク内にセットされているスプリングやダンパー、さらにはフォークオフセットと呼ばれる、フォークを車体に取り付ける幅や距離を変更して、「ショットガン650」のキャラクターや車体姿勢に合わせてセッティングし直しています。またリアサスペンションも、サスペンションの長さを23mm、ストローク量を9mmの伸ばし、フロント同様、サスペンション内のセッティングを変更しています。
クルーザーモデルとプレットフォームを共有しているが、その走りはネイキッドバイクのように機敏で軽快。ワインディング走行も楽しむことが出来ます
「ショットガン650」はスーパーメテオ650とプラットフォームを共有するため、フレームやスイングアームは同じですが、スイングアームのアクスルスライダー部分の切り欠きを車体前側に移動することでリアタイヤをスーパーメテオ650よりも車体前方に装着。フロント周りのセッティング変更と合わせて、35mmのショートホイールベース化も実現しています。
外装類も、すべて「ショットガン650」用にデザインされています。燃料タンクは、容量が少し減りましたが、幅も高さも抑えたコンパクトタイプになり、タンク下側ラインと、左右に角が立ったリアフェンダーの後端を一直線で結ぶことが出来る水平基調のボディラインを造り上げています。
また、燃料タンク&リアフェンダーの角が立ったデザイン合わせ、サイドカバーのデザインも変更されています。
足を車体前側に投げ出すクルーザー的なステップ位置から、足を自然に下ろした位置にステップがあるミッドコントロールに変更。比較的バンク角は少ないですが、ステップが路面に接地しても車体の安定感は高いままです
加えて、低く、幅が狭くなったハンドルと少し腰高のシート、それにライダーに近いミッドコントロールのステップ位置との、ライディングポジションを造る三角形がグッとコンパクトになり、ネイキッドバイクに近い、ライダーが少し前傾するようなポジションになりました。
これら前後ホイールや前後サスペンション、そしてライディングポジションの変更は、「ショットガン650」のスポーティなキャラクターに大きく影響を与えています。
サイドスタンドから車体を起こしただけで、重心位置が変わったことが分かり、それでいて車重が軽くなったんじゃないかと感じてしまいます。実際はスーパーメテオ650とほとんど同じ240kgなのに……そしてシートに跨がり、ハンドルに手を、ステップに片足を乗せただけで、バイクがギュッとコンパクトになったと感じるのです。
■ワインディングも楽しめ「るショットガン650」
シート高795mmの新型「ショットガン650」に身長170cmの筆者(河野正士)が跨がった状態
そのコンパクトな車体がもたらす好印象は、走り出すとさらに強くなりました。渋滞した街中で車線を変更したり交差点を曲がったりすると、クルーザーモデルのように大きくハンドルを切ったり大きく重心を移動させなくても、ライダーが軽く入力するだけでバイクの向きが変わっていきます。
それに中低回転域で滑らか、かつ力強い排気量648cc空冷並列2気筒SHOC4バルブエンジンが、そのバイクの反応を後押しします。エンジンはスーパーメテオ650とまったく同じなのに、アクセル操作や入力に対する車体の反応が良いことで、エンジンの反応も軽くなったように感じたことには驚きました。
試乗の舞台がワインディングに移ると、「ショットガン650」でのライディングがドンドン楽しくなってきます。
コーナーの手前でしっかり減速して、スッとコーナーに向かって重心を移動したりハンドル操作を行うと、フロントタイヤはコーナーに向かって素直に向きを変えていくし、出口に向かってアクセルを開けていってもフロントタイヤが大回りしたりしない。この反応は、スポーティなネイキッドバイクのようでした。
それに今回の試乗コースは路面が荒れているところが多く、うねっている路面もあり、ストレートはもちろんコーナーリング中でもそのギャップを拾って、前後サスペンションが大きく動くことがありました。しかし、そのときも車体が安定していたし、ステップが接地したときもその安定感が揺らぐことはなかったのです。
ツーリングも、その途中に現れるワインディングも楽しみたい。ライダーの多くは、そんな欲張りな願望を抱きながらバイクを選んでいます。でもそのハードルは高く、自分好みの、バランスのよいバイクに出会うのはなかなかに難しい。
「ショットガン650」は、そんな悩めるライダーにお薦めできる、スポーツとツーリング、またはスポーツと日常使いのバランスが良いモデルだと感じました。日本上陸時期やタイミングは未定ですが、上陸したときには是非試乗してみて下さい。
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