さらにマニアックにサスセッティングを行いたい人必見! モータースポーツ総合エンターテイナーの濱原颯道がサスペンションの油面とオイルとローフリクションを徹底解説
バイクのニュース / 2024年2月25日 12時10分
国内外で活躍するモータースポーツ総合エンターテイナーの濱原颯道選手が、ライダー永遠の悩みである「サスペンションのセッティング」を解説!今回は、油面とオイルとローフリクション編です。
■細部まで変更可能な「サスペンションセッティング」
皆さんこんにちは。モータースポーツ総合エンターテイナーを名乗ってる濱原颯道です。
今回は、ライダー永遠の悩みである「サスペンションのセッティング」の、少しマニアックな番外編として、「油面とオイルとローフリクション、ついでにガス」についてお話ししようかなと思います。
モータースポーツ総合エンターテイナーの濱原颯道選手
皆さんはサスペンションをいじる時にまず、最初に触るのは手で調整、もしくは工具で調整出来るような場所ではないですか?
バネレートの交換は内部の話だったりするので少し難易度が高いですが、その辺りがいわゆるサスペンションのセッティングだと思っている人も多いはず。
では、油面という言葉を聞いたことはありますか?たまに足回りのセットアップ相談で「ブレーキを強くかけたいから油面を上げたいけど、どのくらい上げたらいいですか?」みたいな質問をもらいます。しかし、「なんで油面を上げたいの?」と理由を聞くと答えられない人もいて、油面を上げる=ブレーキを頑張れると思ってる方も多い印象。そういう考え方もあっても良いと、僕は思っています。
一方で、僕の考えとしては油面を上げるとサスペンションの中の空気の量が減り、空気は量が少ないと圧縮した時に潰れやすくなると思います。
その為、サスペンションが沈む→まず空気の層が潰れる→オイルの量が多いからそちらは圧縮しにくいと言った流れのイメージで、僕はそれを「初期はエアが少ないから一瞬で潰れてすぐにオイルの壁に当たるような感覚」と、いつも表現しています。
と言うこともあり、僕はどのバイクでも油面を下げ気味にしてオイル量とのバランスを取って、他の人よりもオイルの粘度を高くして、スタビリティを持たせると言った方法を取る事が多いです。
僕のオフロードバイクは普段ババナショックスにお願いしている。油面下げ気味減衰調整は常に調整幅の真ん中。これはオンオフ問わず共通してかなり良い線を行ってると僕は思ってる
次にオイルについて、僕の知っている範囲でお話しをします。
サスペンションのオイルで1番良いとされているのは、「どんな温度でも粘度変化のないもの」です。夏でも冬でも走り始めも走り込んだ後も、サスペンションの温度によってサスペンションの動きに変化があると、乗っていてストレスになるので、潤滑性能を高めようとする商品は少ないような気がします。
そのため、ベルトコンベアなどの油圧機器に使われている作動油のような物が、多くのサスペンション用オイルとして採用されています。
ですが「どんな温度でも粘度変化のない物」の中でも、僕的には良いものが存在します。
それは、オイルのキレ感やオイルの特性が持つ減衰感、摺動性の良いベースオイルなど。でもそれは、本来サスペンションのオイルシールやインナーチューブのコーティングなどで摺動性を良くしたり、キレ感減衰感に関してはシム調整などでも出来るので、サスペンション屋さんからすると「オイルの性能はある程度一定な物。あとは機械的な部分で調整したい」と考えている人が多いです。
何が言いたいかと言うと、リバルビングしたりコーティングをするお金のない人は、オイルを変えると性能が変わったりするよって事。
僕が遠い昔にノーマルのヤマハ「YZF-R1」で、鈴鹿サーキットを2分9秒台で走った事があり、その時はそのタイムがノーマル状態では1番速かったのですが、そのタイムを出す前には周りに「インナーカートリッジを社外に変えるか、リバルビングしないとR1のサスはダメだよ」と言われていました。しかし、僕は「ほっといてくれ」と思っていたのが正直なところ。
その時はHirokoのフォークオイルに変えたら全てが解決してタイムも出たので、今となっては何だったんだろうと思いますが、サスペンションのオイルにも、もっとみんなこだわった方がいいと思います。
これは2019年に前後のサスペンションをコーティングしてもらった物。インナーチューブとインナーロッドはDLC&WPC加工してもらい、アウターチューブとリアサスのボディはカシマコートしてもらった。性能は置いといて、見た目がかっこいい
次にローフリクションについて。インナーチューブやリアサスペンションのロッドなどをコーティングすると、摺動性が良くなります。そして、アウターチューブやリアサスペンションのボディをコーティングすると強度が増します。
強度が増すとしなりにくくなるので、動きも良くなります。そしてオイルシールやダストシールをローフリクションなタイプに交換すると、さらに動きが良くなります。
動きが良くなるのは良いことですよね。ですが動きが良くなるという事は、動きやすい=減衰力も増さないといけなくなるという事。そのため、コーティングなどで摺動性を良くしただけのサスペンションでは、セッティングが大きくずれています。
そうなると、それらを行った後にセッティングをし直さなければならなくなるという事を覚えておいてください。
これは以前使っていたWPのキットサス。量産されているサスペンションに比べて全ての精度が高く、とにかくしっとりとした動きでグリップ感がすごかった。高いものには意味があると思わせてくれた良い買い物だった
最後は、加圧ガスについて。サスペンションの中にはオイルが入っていて、激しく動くとオイルに気泡が発生したりします。
その気泡は本来のサスペンションの動きを阻害するために、外部からガスで加圧する事によって気泡を消し、オリフィスを通過する時にエア噛みをしないようにさせています。最近では、そのガスに加圧量を変化させて、セッティング調整する事があります。
この記事を読んでいる多くの皆さんのサスペンションには、その加圧されるバルブが付いていないのですが、プロの選手が使うようなサスペンションには、そのような部分もセッティングが出来るように、改造してあると言う事。
簡単に言えば、「フルボトム付近のプリロード感」を変えられます。
いかがでしたか? 3作にわたる僕のサスペンションセッティングについてのお話。だいぶ端折って書いたつもりなのですが、凄く長くなってしまいました。
一般の方にはもちろん、今レースに出ているような選手たちにも読んで欲しいなーと思う記事を書いたので、最後まで読んでくれた方々には感謝しかありません。いつもありがとうございます!
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