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バイクで世界初の水冷90度V型4気筒エンジン搭載 ホンダ「VF750マグナ」は近未来クルーザーだった

バイクのニュース / 2024年2月26日 19時40分

ホンダ「VF750マグナ」(1982年発売)は、V型4気筒エンジンを搭載する新たなアメリカン・カスタムとして新登場しました。堂々としたスタイルとスポーツバイク並みの高性能を備え、アメリカを拠点にホンダの若いスタッフ達が生み出した、近未来への答えでした。

■高性能クルーザーという未来を切り開いた

 2輪史上世界初の水冷90度V型4気筒エンジンを搭載したホンダ「VF750」シリーズが発売されたのは1982年4月でした。高級ロードスポーツ車の「VF750 SABRE(セイバー)」と、アメリカンスタイルの「VF750 MAGNA(マグナ)」の2台が同時発表・発売となり、同年12月にはスーパースポーツモデルの「VF750F」も発売されます。

ホンダ「VF750マグナ」(1982年型)は、バイクで世界初の水冷90度V型4気筒エンジン、油圧式クラッチの採用やスイングアーム内蔵のシャフトドライブなど、独創のメカトロニクスを搭載していたホンダ「VF750マグナ」(1982年型)は、バイクで世界初の水冷90度V型4気筒エンジン、油圧式クラッチの採用やスイングアーム内蔵のシャフトドライブなど、独創のメカトロニクスを搭載していた

「VF750」シリーズの発売から遡る事13年前、世界を驚かせた「CB750 FOUR(フォア)」の並列4気筒エンジンでしたが、日本の各バイクメーカーも次々と4気筒エンジン搭載車を発売し、ホンダはDOHC16バルブの4気筒エンジン搭載車を市場に送り込みますが、他車と大きな差別化ができませんでした。

 さらに海外向けには並列6気筒エンジンの「CBX」を発売しますが、他社から水冷の6気筒エンジンが登場します。この時期、ホンダは4輪車事業に注力しており、大型バイクの市場で決定的なアドバンテージを築けなかったと言われています。

 さて、現在でもホンダが生産する大型バイクの約3割は北米市場に輸出されています。その北米のユーザーにバイクを販売する現地法人が、アメリカンホンダです。彼らが「アメリカ人が欲しがる大型バイクを作って欲しい」というのは当然の要求です。

 そこで、アメリカ人が好むV型エンジンと、新時代の高性能4気筒エンジンが組み合わされて、他メーカーには真似できないV4エンジンが開発されました。

 ホンダ初のV型エンジンは、4輪のF1エンジン用に開発されたV型12気筒でした。2輪の世界GPにも「NR500」が楕円ピストンのV4エンジンで出場しています。V型はホンダが得意とするエンジン形式で、その歴史と技術が市販車に結実したのが「VF750」シリーズだったのです。

意外とスリムな燃料タンク。高く手前に寄せられたハンドルバーはゆったりとしたポジションを形成し、左右に並ぶ2つの丸形メーターは大きく、視認しやすいよう角度をつけて設置している意外とスリムな燃料タンク。高く手前に寄せられたハンドルバーはゆったりとしたポジションを形成し、左右に並ぶ2つの丸形メーターは大きく、視認しやすいよう角度をつけて設置している

「VF750」のエンジンはDOHCを採用し、1気筒あたり4バルブ、計16バルブです。Vアングルは一次振動を理論上「ゼロ」とする90度で、横から見ると「V」とも「L」とも言えない微妙な角度で搭載されています。

 キャブレターはフロート室に工夫を凝らした世界初のスラント型CV4連タイプで、エアクリーナーボックスも含め、Vバンクの間に綺麗に収まっています。

 水冷システムにより安定した冷却が可能になり、圧縮比は10.5を実現しています。72psの高出力と信頼性の向上、さらにメカノイズも抑えられていました。しかもエンジン全体がコンパクトなので、750ccクラスのエンジンの中では最も軽量でした。

 5速+オーバードライブのミッションは、高速道路等で回転数を抑えられる20%ワイドなトップギアになっています。またエンジンはフレームへの2次振動を消すために6カ所のラバーマウントで搭載され、徹底した振動低減対策が施されました。

まだほとんどの「ナナハン」(750ccクラスのバイク)が空冷だった時代に、ホンダは水冷の90度V型4気筒エンジン搭載車を市販し、その技術力を見せつけたまだほとんどの「ナナハン」(750ccクラスのバイク)が空冷だった時代に、ホンダは水冷の90度V型4気筒エンジン搭載車を市販し、その技術力を見せつけた

 当時「アメリカン」と呼ばれたクルーザースタイルの日本車は、1970年代終盤から数多く登場しました。その中でも「VF750マグナ」は、迫力あるスタイリングと高性能なV4エンジンで注目を集めました。

 コンパクトなのに車体からハミ出さんばかりに主張してくるV4エンジンは、並列4気筒には無いボリューム感があり、車体全体の雄々しい佇まい、アルミパーツが醸し出すメカ感が、独特の存在感を引き立てています。

 そのスタイルを形成するのに効果的なのが、小さく見えるティアドロップ型の燃料タンクです。シート下にも電磁ポンプを使用するサブタンクを備え、ロングツーリングでもゆとりある計14L容量を確保しています。

「VF750マグナ」は国内でも販売されましたが、主な市場は北米で、兄弟車の「V65マグナ」(排気量1100cc)も販売されていました。

シーシーバー風のアルミ製リアグリップ。リアシート後部には小物入れが備わっているシーシーバー風のアルミ製リアグリップ。リアシート後部には小物入れが備わっている

 国内では「VF750マグナ」の後継機種として、1987年に「V45マグナ」(排気量748cc)が発売されましたが、やがて大型クルーザーはVツインエンジンが主流となります。

 その後、ホンダのV4エンジンはサーキットで大活躍し、ツーリングモデルにも採用され、多くのユーザーに独特のエンジンフィーリングを提供しました。

 ホンダ「VF750マグナ」(1982年型)の当時の販売価格は、67万円です。

■ホンダ「VF750 MAGNA」(1982年型)主要諸元
エンジン種類:水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ
総排気量:748cc
最高出力:72PS/9500rpm
最大トルク:6.1kg-m/7500rpm
全長×全幅×全高:2235×815×1195mm
始動方式:セルフ式
シート高:725mm
車両重量:236kg
燃料タンク容量:メイン9.5+サブ4.5L
フレーム形式:ダブルクレードル
タイヤサイズ(F):110/90-18 61 H
タイヤサイズ(R):130/90-16 67 H

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)

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