大排気量Vツイン搭載のスゴイやつ KTM新型「1390 SUPER DUKE R EVO」の走りは?
バイクのニュース / 2024年2月28日 12時10分
KTMのフラッグシップネイキッド、新型「1390 SUPER DUKE R EVO」は、排気量1350ccのV型2気筒エンジンを搭載する「DUKE」シリーズの最上位モデルです。2024年3月の国内販売開始を控え、海外でのメディア向け試乗会に参加しました。
■生まれ変わったハイパーネイキッド、中身もスタイルも大幅に進化
KTMが販売するロードスポーツの中で、最もパワフルなモデルが「SUPER DUKE(スーパーデューク)」シリーズです。2024年モデルで先代の「1290」から「1390」へと生まれ変わった「1390 SUPER DUKE R EVO」(以下、1390EVO)が登場しました。初夏には日本の道を走り出す予定に先立ち、メディア向け試乗会がスペイン南部、アルメリアで開催されたので走った印象を報告します。
KTM「1390 SUPER DUKE R EVO」(2024年型)に試乗する筆者(松井勉)
先代にあたる「1290 SUPER DUKE R EVO」から、クロームモリブデン鋼フレームとアルミダイキャスト製リアサブフレームの組み合わせ、シングルサイドスイングアームなど基本的な要件を引き継ぎ、足まわりはWP製セミアクティブサスペンションを搭載し、先代よりも数段細やかなセットアップを可能にした電子制御インターフェイスも特徴です。
1390EVOが先代からどんな進化をしたのか見てみましょう。エンジンは排気量を1301ccから1350ccへと49ccの拡大。これはピストン径を2mm拡大して容量を増やしています。
パワーとトルクは先代の180PS/9500rpm、140N.m/8000rpmから190PS/10000rpm、145N.m/8000rpmへと上昇。吸気エアボックスを増量し、吸入口の位置を車両前方へ移して走行風圧を活かした吸気効率向上も図っています。拡大したエアクリーナーボックスに合わせてメインフレームの連結パイプ位置も変更されています。
吸気ボックスを囲む燃料タンク容量は1.5L増加させて17.5Lへ。形状はライダーとコンタクトする部分がスムーズかつ細身に仕上げられています。
外装ではタンクからヘッドライト下に延びるスポイラーをシャープな造形に。その下にはダウンフォースを生む縦長のウイングを装備。また、テールランプはウインカーと一体式としています。
また、ハンドルまわりではクラッチ、ブレーキのマスターシリンダーが最新デザインに。レバータッチやクラッチの切れの良さを向上させています。
DRL(デイタイム・ランニング・ライト)、ヘッドライトも新デザインに移行。2024年で「DUKE」シリーズ誕生から30年目を迎えるKTMにとって、新たなフェイスを与えたカタチでしょう。
メディア試乗会の舞台に選ばれたのは、スペイン南部のアルメリア・サーキット。新型となった「1390 SUPER DUKE R」シリーズの進化を体感
注目は電子デバイスです。ABSやトラクションコントロール、クイックシフターなどを備えるのはもちろん、ライディングモードはストリート、レイン、スポーツ、トラック、パフォーマンスの5つを用意。それぞれでエンジンレスポンスやトラクションコントロールなどの設定が変わることはもとより、注目はトラック、パフォーマンスモード時に変更ができるサスペンション設定の細やかなこと。
いわばサーキットを走るモードになるのですが、例えば、加速時、減速時、コーナリング時など、サーキットで求められる姿勢変化を細かく最適化出来るようになっています。
また、ゼロスタートからのダッシュを決めるローンチコントロールはもちろん、セミアクティブサスペンションを活かしてMotoGPのスタート時にグリッドで車高を落とすのと同様の機能まで持たせているのです。
ハイパーネイキッドにしてサーキットではスーパーバイク系を喰う気満々。いまや世界でも希有な存在の大排気量Vツインエンジン搭載のスポーツバイクだけに、KTMとしてもライダーの好みを可能な限り反映する装備とソフトを与えているのです。
オプションのサスペンションモードプロを選べば、フロントフォーク、リアショックそれぞれで圧側、伸び側を20段階ずつ設定変更出来るほか、スタンダードでも8段階に調整が可能としています。
また、スライドアジャスターは、旋回時などにパワースライドの許容量も調整可能で、もはや、エンジニアがパドックで行なうセットアップをユーザー自ら行うことも可能です。
■難易度の高いサーキットで、短時間で攻めに移行できる楽しさ
その走りです。先代で体験したサラリと軽快なフィーリングのエンジンと比較すると、1390EVOのそれはトルクフルの一言。それでいて高回転まで落ち込みもなく、1万回転まで運び上げる力を持っています。
ネイキッドモデルでありながら、サーキットでもライダーの好みを可能な限り反映する装備が充実。スーパーバイク系をも喰わんとするばかり
試乗会場となったアルメリア・サーキットは、アップダウンで先が見えない中でクリッピングポイントに向けて向きを変えるコーナーや、複合カーブ、そして下りから飛び込む1コーナーなど随所で難しいサーキットで、初見のライダーをビビらせてきます。
1390EVOの優しさが解るまでは様子見でしたが、楽しい時間はすぐにやってきます。フロントタイヤから重力が無くなり続けるような猛烈な加速中も安定感があり、フルブレーキング時の足まわりの受け止めもじんわり。ムギュっとタイヤを路面に押しつけ安心感が高いのです。
低いセパレートハンドルのバイクに比べればアップライトなポジションながら、立ち上がり加速を放った時のアンダーステアも軽妙。知らぬ間に、攻めに転じる自分がいます。
生まれ変わった「スーパーデューク」は、その外観デザインもさることながら、エンジン、車体、そして充実の電子デバイスなど、さらにグレードアップされた
4速で180度回るカーブでは、深いバンク角を維持しても安定していてアタマの中は次のコーナーをどう料理するかを考える余裕があります。
標準装備のミシュラン「パワーGP」のグリップバランスと旋回力も尖った部分が無く、マッチングの良さに感心です。
難易度の高いサーキットだけに、コースとバイクの素の印象を深呼吸しようと、設定はあえて弄らずに走りました。でも次にアルメリアで1390EVOに乗る機会があれば、加速時、旋回時にリアダンパーの圧側を強めて回頭性向上を狙ったらどうなるのかを試すつもりです。きっとその先に、スライドアジャスターを触るコトになるのかどうか……そんなことを考える余裕がある「1390 SUPER DUKE R EVO」だったのです。
※ ※ ※
KTM新型「1390 SUPER DUKE R EVO」の価格(消費税10%込み)は269万9000円です。カラーバリエーションはオレンジ、ブラックの2色が用意されています。
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