量産市販バイクとしては世界初!! DOHCエンジン搭載のホンダ「ドリームCB450」とは?
バイクのニュース / 2024年3月4日 19時40分
1965年に登場したホンダ「ドリームCB450」は、国内外の大型二輪車市場開拓のために開発され、排気量450ccクラスのDOHCエンジンを搭載していました。北米市場を争う650ccクラスの欧州メーカーに並ぶ性能を持ちながら「ビッグ・イズ・ベター」を覆せなかった超高速車だったのです。
■ハイメカニズムで最高速180km/hを実現
ホンダはマン島TT参戦(1959年)から世界GPへの挑戦、そして海外への輸出と飛躍を続け、1960年代には世界一のバイク生産台数を誇るメーカーに成長していました。
ホンダ初の大型バイクである「ドリームCB450」(1965年型)は、最高速180km/hを誇る高性能車だった
1960年代に入ると、庶民の生活の足から始まったホンダ車は、排気量50ccクラスには「スポーツカブC110」を、125ccクラスには「ベンリィCB92スーパースポーツ」、250ccクラスには「ドリームCB72スーパースポーツ」など、各排気量にモデル展開し、国内にもスポーツバイクのカテゴリーを築いていきます。
大量生産が可能な工場も稼働し、国内で生産されるバイクの半分を輸出するほど勢いのあるホンダでしたが、当時の最大排気量車は305ccの「ドリームCB77」のみ。世界GPで国際的な勝利を手にしたホンダが、海外での大型二輪車の市場開拓を視野に次なるスポーツ車を開発することは自然な流れでした。
1965年にはホンダが手がけた初めての量産大型バイクである「ドリームCB450」がデビューします。排気量444ccの空冷4ストローク並列2気筒エンジンを搭載し、「バイクの王様」と呼ぶにふさわしいデザインとメカニズムが満載でした。
当時、主となる輸出先である北米の二輪市場規模は6万台ほどで、まだまだ開拓できる可能性を秘めていましたが、英国車をはじめとした欧州メーカーもその市場を狙っていました。
ライバルとなる英国車は650ccクラスのエンジンが中心でしたが、ホンダは現代の高性能エンジンの代名詞であるDOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)を世界で初めて量産市販二輪車として「ドリームCB450」に採用し、ライバル車に対抗できる性能を実現したのです。
排気量444ccの空冷4ストローク並列2気筒DOHCエンジンを搭載。鉄の棒をひねってバネにするトーションバー方式のバルブスプリングを採用している
DOHC機構は、エンジン内に入る空気(ガソリンとの混合気)と出て行く排気ガスの弁(バルブ)をきっちり制御するための構造で、高回転でも正確な燃焼状態に保てることがメリットでした。当時は複雑な構造がコスト高となるため、レース用など特別なエンジンに使われていました。
ホンダのGPレーサー群は、もちろんDOHCエンジンです。ホンダは世界で最もDOHCを知り尽くしたメーカーだったと言えるでしょう。そんなホンダのお家芸とも言える最高級のメカニズムを、いよいよ量産市販車である「ドリームCB450」に採用したのです。
650ccクラスの欧州車には負けないパワーを絞り出すためのDOHCですが、そのためには高回転まで回し切ることが必須です。ここでバルブを開閉する動きが悪いと、燃焼室の圧縮が漏れて出力をキープできません。
「ドリームCB450」のエンジン性能曲線図を見ると(当時のカタログより)、トップギアの4速では速度100km/hでエンジン回転数は約5500rpmなので、1分間に2750回もバルブの開閉が行なわれています。
タコメーターと一体式のスピードメーター。宝石軸受で耐久性アップ。縦型の距離計がユニーク
GPレーサーは10000rpmを大きく超える回転数で走っていますが、1気筒あたりの排気量は大きくても125ccで、しかも4バルブです。対して「ドリームCB450」は1気筒あたり222ccの2バルブです。つまりバルブ1本あたりの重さが大きく違うのです。
現在では、バルブはスプリングによって開閉を制御していますが、バルブが重いとスプリングの負担が大きい上に、市販車では気が遠くなるようなバルブ開閉回数に耐えられる強度が必要です。
当時は日本国内にその性能を満たせるスプリングメーカーが無かったため、ホンダはバルブの作動にトーションバー方式を採用していました。後にも先にもあまり例のないこのメカニズムで、DOHCエンジンを実現したのです。
最高出力は43psを8500rpmで発揮し、最高速は180km/h、0-400mは13.9秒という高性能を宣伝文句に、「ドリームCB450」は好調な販売台数を記録しました。
しかし肝心の北米市場では、「より大きいものがベター」という考え方を払拭するに至らず、次世代のスポーツ車「ドリームCB750FOUR」の開発がスタートします。
横方向開閉式シートはワンタッチで開けられて電装品のチェックも簡単。リアショックは3段調整
その後も「ドリームCB450」は速さと乗り心地、安全性を向上したモデルチェンジが行なわれ、さらにスクランブラータイプの「ドリームCL450」などのバリエーションも加えられました。
4気筒エンジンの「ドリームCB500FOUR」が発売された後も、1974年に「ドリームCB500T」が発売され、そのエンジンは10年間も継続して採用されました。
ホンダ「ドリームCB450」(1965年)の当時販売価格は26万8000円です。
■ホンダ「CB450」(1965年型)主要諸元
エンジン種類:空冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ
総排気量:444cc
最高出力:43PS/8500rpm
最大トルク:3.82kg-m/7250rpm
全長×全幅×全高:2085×780×1050mm
始動方式:キック・セル併用
車両重量:173kg(乾燥)
燃料タンク容量:16L
フレーム形式:クレードル
タイヤサイズ(F):3.25-18(4PR)
タイヤサイズ(R):3.50-18(4PR)
【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
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