ラップタイムを0.1秒縮めたい人必見!モータースポーツ総合エンターテイナーの濱原颯道がデータロガーを徹底解説
バイクのニュース / 2024年3月16日 12時10分
国内外で活躍するモータースポーツ総合エンターテイナーの濱原颯道選手が、レースでは必須となっている「データロガー」について解説。その後編です。
■自分のライディングを数値化してくれるのがデータロガー
皆さんこんにちは。モータースポーツ総合エンターテイナーを勝手に名乗っている濱原颯道です。
今回は「データロガー」についての後編。データロガーはバイクのあらゆる動きを数値化して、グラフ形式でパソコンなどで確認することで、ライダーの感覚との照合やライダーの操作の証明に使えるセンサーなので、僕にとっては欠かせないアイテムのひとつです。
前回は車速センサー、スロットルセンサー、A/Fセンサーの3つについて解説したので、そちらも知りたい方は前回の記事も参考にしてみてください。
そして今回はストロークセンサー、ブレーキ液圧センサー、空気圧センサーの3つについて。この3つは、ちょっとレースに携わってるというような人でも、なかなか手を出しにくいセンサー類。
なぜかと言うとこの3つは割と人間が言葉で人に伝えやすい内容を可視化してくれるものだから。しかし、前回の記事に書いたように「全力で走ってる時に、自分がどんな操作をしているかを、1から100まではなかなか説明できない」と思うので、そのためにも必要なセンサーだと僕は思っています。
今回も僕なりの使い方や、どうやって見ているのかを書きますが、これが絶対正解というわけでは無く、あくまでも参考程度に見ていただけたら嬉しいです。
データロガーを確認しながらバイクをセッティングするモータースポーツ総合エンターテイナーの濱原颯道選手
●ストロークセンサー
前後のサスペンションの沈んでる量や、動きを見るセンサーです。
●液圧センサー
前後ブレーキについているセンサーです。ブレーキフルードにかかる圧力を測ることにより、どれだけの力でブレーキを握っているかや、どんな風に握ってるかなどを把握するためのもの。ライダーの心境がとても出やすいセンサーです。
●空気圧センサー
前後ホイールのエアバルブ部分に付いているセンサーです。
簡易的なのはバルブキャップに付いていて、専門的なのはリムの内側に付いているのが基本で、壊すと高いというのも特徴。常にタイヤの空気圧を把握するためのもので、中には一緒に温度も表示してくれるものもあるみたいです。
まずはストロークセンサーの僕なりな使い方。サスペンションのロッドなどにタイラップなどを巻いて、おおよそを把握してるという人もいるのではないでしょうか。
そのタイラップやOリングは、ロガーを繋ぐ前でも最大のボトム量がわかるので、実は結構大事なんです。
グリスなどを塗って代用してる人もいますが、ロガーとしては実際にサスペンションのような構造のものをサスペンションの横に装着するスタイル。
このストロークセンサーというものは、サスペンションの動きがわかるセンサーなのですが、「ここのコーナーはこれくらい沈んでいる。こっちのコーナーはここまでしか沈んでない」みたいにも見ますし、僕は結構、ストロークのアベレージを見ていました。
調子が良い時のアベレージを見て、例えばモビリティリゾートもてぎみたいにコーナーのボトムスピードが遅いコースと、鈴鹿サーキットみたいに高速区間が多いサーキットを比べても、好みのストロークのアベレージは似ていたりします。
なので「今日のアベレージ深くない?レートを上げるかプリロード張って高さを整えようか」みたいな感じで見ていました。
これがストロークセンサー。昔はもっと高くてなかなか手を出せなかったですが、今は比較的安価に買えます
次に液圧センサー。これは僕自身、握力が強いので軽く握っているつもりでも、結構強く握ってる事もあるので、僕にとっては無くてはならないアイテムです。
ブレーキを握っている力(バール値)が分かるのですが、前ブレーキで言えばブレーキング開始時から躊躇なく握れていれば比較的OKなので、少し躊躇している様子が見られれば「ブレーキのかけ始めに不安感がある。プリロード弱いかな?それとも油面が高くてエアボリュームが先に負けてオイルに当たる感じとかがあるかな?」など、ライダーの気持ちもわかります。
その時にストロークセンサーを併用して見てみると、ほぼ大体の事がわかります。面白いのはリアブレーキで、コーナー中に踏んでいたら「リアが高いと思っている?もしくはリアが動いて欲しくないのかな?それとも、単に曲げていったりしたいだけ?」みたいに、リアブレーキ自体が車体の姿勢バランスに影響するアイテムなので、かなりライダーの気持ちがわかります。
その時もリアサスペンションのストロークと照らし合わせると、ほぼ大体の問題が明確になるので、意識してチェックしてみてください。
これがブレーキ液圧センサー。台湾の車両なので取り付け方がちょっとアジアンです
最後に空気圧センサー。これはホイールの中に組み込まれています。無線で飛ばす仕組みで、多くの人はロガーで読み取りますが、僕はメーターに表示して、常に把握していました。
僕の使い方で言えば、鈴鹿8耐などセーフティーカーが入ると、どうしてもタイヤの温度が下がるので、セーフティーカーが解除されたタイミングでどのくらい空気圧が下がっているか?から逆算し、おおよそのタイヤの表面温度が把握したり、良いタイムが出た時がコースインから3周目とかだった場合、本来の適性空気圧じゃないので(大体7周目くらいから内圧が安定する)「タイムは出たけど内圧上がり切ってない!でも良いフィーリングだから今回は少し内圧を下げてレースに挑みたい!」という判断材料にする使い方もしていました。
あとは僕は人よりストレートが遅く(僕の体格が大きいため。バイクは遅くないです笑)スリップストリームを多用していたのですが、前タイヤに風が当たらなすぎて、ヒートしてタイヤの内圧が上がってしまい、フロントの接地感が薄くなった事もありました。
そう言う時に「あれ、こんなに高くなっている。少しスリップを使うのをやめよう」みたいな感じで、割と便利なアイテムです。当時8耐でペアを組んでいた日浦大治郎選手は、「俺には邪魔。メーターが見にくい」と言われてしまいましたけどね。
こんな感じで僕は使っていましたが、他にも為になる使い方はあると思うので、僕も日々勉強している最中です。
僕の乗っていたJSB1000のメーター周り。前後タイヤの空気圧は左の赤いメーターに表示していました
データロガーをしっかりと読み取れれば、自分の調子が良い、悪いがすぐにわかります。そしてマシンの不具合もわかります。
さらに、自分自身にその読み取る力が備わってくると、たとえチーム力が乏しいと言われているようなチームでも、必ず速く走れます。チームに頼ってばかりだと、チームありきなライダーになってしまうので、僕は選手としてはもっともそれを避けたいと思っています。
いかがでしたか?ファクトリーチームとなると、このデータロガーを4人くらいでチェックしたり、中にはデータを吸い取って本国(イタリア製のものを使っていればイタリア本社)データを転送して10人以上でチェックしたりなど、1人の人が専属で見るよりも「この選手はここで迷いが見える」みたいな、意見が多ければ多いほどポジティブに働くアイテムです。
僕はオフロードバイクもたくさん乗るのですが、到底データロガーが必要なほどのライディングスキルを持ち合わせていなく、ロードバイクに乗った時にデータロガーがついていると、「これだよこれ。このデジタルな感じが、レースをしている感じがする!」と感動しています。
バイクでサーキットを走り、レースに出たりする人は必須!と言うわけではありませんが、最初はスピードとライン取りが見れるようなGPSロガーでも良いですし、最近はGセンサーがついている物もあるので、ブレーキングポイントなどもわかります。リーンアングル(バイクが寝ている角度)が分かるものまで登場しています。
ロガーを使うのは、ラップタイムを0.1秒上げるのに困ってからでも全然大丈夫。でも凄くないですか?自分の走りが数値化されるって。僕は、それがデータロガーの魅力だと思います。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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