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エンジンの「フィンガーフォロワー」って、ナニ?

バイクのニュース / 2024年3月22日 11時10分

日々進化するバイクのメカニズム。英文字やカタカナで表記される最新機構も数多く、いったいどんな機構で、バイクに乗る上でドコに役立つのかいまひとつ解らない「コレってナニ?」という装備が盛り沢山。今回はその中から「フィンガーフォロワー」について解説します

■やはり、パワーアップが目的?

 鈴鹿8時間耐久ロードレースや、スーパーバイクレースにも使われるような現行スーパースポーツ(SS)モデルは、エンジンに「フィンガーフォロワー」を採用している車両がほとんどです。なんとなくパワーアップに役立つ機能のイメージはありますが、どんな部品がドコに使われ、どういった効果があるのでしょうか?

CG図中で緑色に記された、カムシャフトとバルブの間に備わる部品が「フィンガーフォロワー」。画像はカワサキ「Ninja ZX-10R」のエンジンの透視図CG図中で緑色に記された、カムシャフトとバルブの間に備わる部品が「フィンガーフォロワー」。画像はカワサキ「Ninja ZX-10R」のエンジンの透視図

 フィンガーフォロワーは「スイングアーム式ロッカーアーム」とも呼ばれ、4ストロークエンジンのシリンダーヘッドの中の、カムシャフトとバルブの間に配置されています……が、従来の高性能化を狙ったバイクのDOHCエンジンには、基本的に存在しない部品(機構)でした。その辺りを少し遡ってみましょう。

■動弁機構は、どう進化してきた?

 4ストロークエンジンは、ガソリンと空気を混ぜた混合ガスを吸気→圧縮→爆発→排気でエンジンを回していますが、その行程を行なうために「吸気バルブ」と「排気バルブ」を備えています。

 バルブは断面が卵型のカムシャフトによって開閉しており、そのメカニズムは動弁機構と呼ばれ、いくつかの種類があります。

SOHCエンジンの構造。1本のカムシャフトがシーソー型のロッカーアームを介して吸気バルブと排気バルブを開閉している。画像はスズキ「ジクサー150」の単気筒SOHC2バルブエンジンSOHCエンジンの構造。1本のカムシャフトがシーソー型のロッカーアームを介して吸気バルブと排気バルブを開閉している。画像はスズキ「ジクサー150」の単気筒SOHC2バルブエンジン

 なかでもメジャーな方式が「SOHC(シングルオーバーヘッドカムシャフト。単にOHCと呼ぶ場合もアリ)」と「DOHC(ダブルオーバーヘッドカムシャフト)」の2種類で、歴史的には先にSOHC、次いで高性能なDOHCが登場しました。

 SOHCは1本のカムシャフトに吸気側と排気側のカムが備わり、シーソー型のロッカーアームを介して、吸気バルブと排気バルブを開閉しています。それまでに多かったサイドバルブ方式やOHV方式という動弁機構と比べると、高回転化が可能で効率的な構造でした。

DOHCの構造。吸気用と排気用のカムシャフトが、それぞれ吸気バルブと排気バルブを直接開閉する構造。画像はホンダ「CBR250RR」の並列2気筒DOHC4バルブエンジンDOHCの構造。吸気用と排気用のカムシャフトが、それぞれ吸気バルブと排気バルブを直接開閉する構造。画像はホンダ「CBR250RR」の並列2気筒DOHC4バルブエンジン

 さらに高性能化を狙った機構が、カムシャフトを2本備えたDOHCで、それぞれ吸気用のカムシャフトが吸気バルブを、排気用のカムシャフトが排気バルを開閉する構造になっています。

 ロッカーアームを持たないため「直打式」とも呼ばれ、駆動ロスが少なく高回転まで正確にバルブを開閉可能で、パワーアップを実現しました。

■元は4輪F1のテクノロジー

 1970年代から2000年代初頭頃までは、エンジンの気筒数や排気量に関わらず、直打式のDOHCエンジンが高性能と位置付けられてきました。しかし先進的な4輪F1のエンジンには、すでにフィンガーフォロワーが採用されていました。そのテクノロジーが、市販の4輪スポーツカーや、スーパースポーツ系のバイクにフィードバックされたのです。

フィンガーフォロワーを採用するBMW Motorrad「R 1300 GS」フィンガーフォロワーを採用するBMW Motorrad「R 1300 GS」

 フィンガーフォロワーのメリットは、まずバルブのリフト量(カムに押されてバルブが開く量)を大きくできます。リフト量の増加は吸気量を増やしたり、排気を速やかに行なうことができます。

 また、構造的に直打式よりもカムプロフィール(カムの断面形状)の設計自由度が高くなります。理由は……かなり複雑なので割愛させて頂きますが、カムプロフィールによってバルブが開いたり閉じたりするタイミングを狙い通りに設定できるようになります。

 そして直打式より部品点数が増えて構造が複雑化しているので、重量や摩擦ロスが増加したようにも感じますが、じつは重量も摩擦ロスもフィンガーフォロワー式の方が軽減しています。これは構造だけでなく、各部品の素材や加工技術の進化なども影響していると思われます。

 それではフィンガーフォロワーのデメリットは……部品点数や加工工程が増えるので、生産コストが上昇することでしょうか。それでもレースで闘うスーパースポーツモデルは、性能追求を優先してフィンガーフォロワーを採用するようになったのです。現在は国産4メーカーやBMWなどが、フィンガーフォロワーを採用しています。

■スーパースポーツモデル以外にも拡大傾向

 フィンガーフォロワーは高性能ですが、相応に生産コストがかかるため、採用するのは本格レースの参戦が前提のスーパースポーツモデルのみ……ではありません。BMWは世界的に人気の高いアドベンチャーモデル「R 1300 GS」の水平対向エンジンにも装備しています。

 またKTMは数種のエンジンにフィンガーフォロワーを採用しており、ミドルネイキッドの「390 DUKE」も装備しています。

 なので、かつて高性能を目指したバイクがこぞって直打式のDOHCエンジンを採用したように、今後はバイクのカテゴリーや排気量、気筒数に関係なくフィンガーフォロワー装備のエンジンが増加する……かもしれません。

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