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ロイヤルエンフィールド「INT650」 日欧ネオクラシック系ツインとは似て非なる資質が魅力

バイクのニュース / 2024年3月23日 11時10分

イギリス発祥の「ロイヤルエンフィールド」は、現在はインドを拠点に製造を続ける老舗バイクブランドです。クラシックなネイキッドスタイルで排気量648ccの空冷並列2気筒SOHC4バルブエンジンを搭載する「INT650」に試乗しました。

■約半世紀ぶりにして、初の並列2気筒車

「どうして650ccなんだろう?」 空冷並列2気筒を搭載するロイヤルエンフィールドの兄弟車、ロードスターの「INT650」とカフェレーサーの「コンチネンタルGT650」を2018年にネットで初めて見たとき、私(筆者:中村友彦)はそう感じました。

ロイヤルエンフィールド「INT650」(2023年型)※取材車両はアクセサリー装着車ロイヤルエンフィールド「INT650」(2023年型)※取材車両はアクセサリー装着車

 と言うのも、近年のネオクラシック系ツインの傾向を考えれば、ライバル勢に立ち向かうためには+150cc以上の排気量が欲しいところですし、歴史を振り返れば、かつての同社はブリティッシュツインの主力が650ccだった時代に、トライアンフやBSA、ノートンなどに先駆ける形で750ccクラスの並列2気筒車を販売していたのですから。

 そういった事情はさておき、2019年から日本市場での販売が始まった「INT650」と「コンチネンタルGT650」は、60年以上に渡って単気筒車のみを生産して来たインドのロイヤルエンフィールドが、初めて手がけた並列2気筒車です。

 もっとも1971年に倒産したイギリスの本家は、第2次世界大戦後の1948年から並列2気筒車を販売していたのですが、それらとは完全な別物です。あえて言うなら、エンジンの造形に似たところはありますが、単気筒車の「ブリット」や「クラシック」のような、伝統を継承する気配は感じられません。

■外観は旧車風でも、随所に現代の技術を導入

 パッと見はクラシックな雰囲気の「INT650」と「コンチネンタルGT」ですが、エンジンの仕様を調べてみると、ショートストローク指向のボア×ストローク(78×57.8mm)、SOHC4バルブの動弁系、位相角が270度のクランクシャフト、偶力振動を緩和する1軸バランサー、ギア式の1次減速など、内部は現代的な構造と機構を採用しています。

 冷却方式を空冷としながら、シリンダーヘッドに油冷を思わせるシステムを導入したこと、大型オイルクーラーを装備することも、現代ならではと言えるでしょう。

ロイヤルエンフィールド初の並列2気筒車は、1948年にデビューした「500ツイン」。その排気量拡大仕様として、1952年には「スーパーメテオ700」、1960年には「インターセプター700」、1962年には「インターセプター750」が登場したロイヤルエンフィールド初の並列2気筒車は、1948年にデビューした「500ツイン」。その排気量拡大仕様として、1952年には「スーパーメテオ700」、1960年には「インターセプター700」、1962年には「インターセプター750」が登場した

 一方の車体に関しては、基本的には近年のネオクラシック系の王道と言いたくなる構成です。とはいえ、ロイヤルエンフィールドと同じエイカーグループに所属する、ハリスパフォーマンスが設計に関与したダブルクレードルフレームは、1950~1970年代のイギリスで名を馳せたシャシーコンストラクターのリックマンを思わせる形状なので、一部のマニアはニヤリとするかもしれません。

 ちなみに当記事で紹介する「INT650」は、インド本国やヨーロッパなどでは、1960年から1971年の同社が販売していた排気量700/750ccクラスの並列2気筒車と同じで、「インターセプター」という車名で販売されています。

 その車名が日本やアメリカで採用されなかった理由は、ホンダが1980年代中盤以降の「VF/VFR」シリーズにこのネーミングを使い、商標登録をしたから……のようですが、2輪の元祖「インターセプター」はロイヤルエンフィールドだったのです。

■わずか2500rpmで、最大トルクの約80%を発揮

 ここからはインプレ編で、まずは冒頭で述べた疑問の原因になった、他メーカーのネオクラシック系モデルの「排気量/最高出力/最大トルク」を以下に記します。

ロイヤルエンフィールド「INT650」(2023年型)に試乗する筆者(中村友彦)ロイヤルエンフィールド「INT650」(2023年型)に試乗する筆者(中村友彦)

 市場でライバルになりそうな、ミドルツインを搭載する各車の数値を知れば、645cc/47.5ps/52.3Nmの「INT650」は不利では? と、多くの人が感じるのではないでしょうか。

●トライアンフ「スピードツイン900」900cc/65ps/65Nm
●モトグッツィ「V7ストーン」853cc/65.3ps/73Nm
●ドゥカティ「スクランブラーアイコン」803cc/73ps/65.2Nm
●カワサキ「W800」773cc/52ps/62Nm

 ところが実際に走らせてみると、「INT650」に非力な気配はありませんでした。グイグイと言うほど強烈ではないですが、2気筒らしい鼓動を発揮しながら、必要にして十分な加速を披露してくれます。

 その理由は、わずか2500rpmで最大トルクの約80%を発揮するからのようですが、現代の厳しい排出ガス・騒音規制に対応しながら、空冷の650ccツインで、こんなにも元気で心地良い特性が実現できるという事実は、賞賛に値すると言って良い思います。

 もっとも、ここぞという場面での速さは、排気量とパワーに勝るライバル勢に及びません。ただしその気になれば、最高速は170km/h前後に到達しそうですし、ライバル勢と一線を画する軽やかな吹け上がりは、エンジン内で摺動・回転するパーツの質量が小さい650ccならではでしょう。

 いずれにしても、スペックを重視しない、ネオクラシック系モデルに関心があるライダーなら、「INT650」のエンジンに物足りなさを感じることはないはずです。

「INT650」に非力な気配は無く、2気筒らしい鼓動を発揮しながら、必要にして十分な加速を披露してくれて、軽快なハンドリングが味わえる「INT650」に非力な気配は無く、2気筒らしい鼓動を発揮しながら、必要にして十分な加速を披露してくれて、軽快なハンドリングが味わえる

 そして車体に関しても興味深い資質を備えていました。217kgの車重は特に軽くはないのですが、安定性より運動性を重視したように思えるディメンション、24度のキャスター角や1398mmの軸間距離が功を奏してか、同形式のエンジンを搭載するトライアンフ「スピードツイン900」や、カワサキ「W800」とは趣が異なる、軽快なハンドリングが味わえるのです(ただしクランク位相角は異なる。「スピードツイン900」は「INT650」と同じ270度だが、「W800」は360度)。

 以下に記すライバル勢の「キャスター角/軸間距離」と比較すれば、「INT650」の方向性が理解できるでしょう。

●トライアンフ「スピードツイン900」25度/1415mm
●モトグッツィ「V7ストーン」28度/1450mm
●ドゥカティ「スクランブラーアイコン」24度/1445mm
●カワサキ「W800」27度/1465mm

 さて、ライバル勢との比較が続きましたが、せっかくなので最後にもうひとつの要素を挙げると、「INT650」の価格は他メーカーのネオクラシック系ツインより明らかに安くなっています。

 2024年型では細部のキメ細かな仕様変更が行なわれ(基本構成やスペックは今回の試乗で使用した2023年型と同じ)、標準モデルが92万7100円から、新たに追加されたキャストホイール仕様が99万1100円からです。

 以下に記すライバル勢と比較すれば、「INT650」は相当にお買い得……と、誰もが感じるのではないでしょうか。

●トライアンフ「スピードツイン900」115万5000円から
●モトグッツィ「V7ストーン」137万5000円から
●ドゥカティ「スクランブラーアイコン」129万9000円
●カワサキ「W800」123万2000円

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