狙いはEVネイティブ! サイクルショーで脚光浴びたBMW「CE 02」開発責任者とリスボンを走って聞いた!!
バイクのニュース / 2024年3月30日 12時10分
ガソリンタンクはなく、ぽっかり開いた空間から向こう側が見える。既存のバイクとは明らかに違う異彩を放つ1台が、大阪&東京で開かされたモーターサイクルショーのBMW Motorradブースで展示されました。ポルトガル・リスボンにて開かれたインターナショナル・メディア試乗会で開発責任者とテストライドしたバイクジャーナリストの青木タカオさんが、その正体について解説いたしましょう。
■電動市販車ではまだ少数派の軽二輪扱い
大阪と東京で開催されたモーターサイクルショーで、注目を集めた電動バイクがBMWの「CE 02」です。スタイリッシュな見た目もさることながら、EV二輪車ではまだ少数派の軽二輪登録となることで、バイクファンらから関心が寄せられました。
2人乗りはもちろん、高速道路にも乗ることができる電動軽二輪「CE 02」
電動の場合は定格出力にて該当クラス/免許区分が決まり、6kW(8PS)の「CE 02」はガソリン車の排気量でいうと、125cc超250cc以下に相当します。
■電動バイクの免許区分(定格出力)
原付一種/原動機付自転車免許:0.6kW以下
原付二種/小型限定普通二輪免許(AT限定含む):1.0kW以下
軽二輪/普通二輪免許(AT限定も含む):1.0kW超~20kW以下
※大型二輪免許(AT限定も含む):20kW超
2人乗りはもちろん、高速道路にも乗れます。電動バイクはもはや珍しくありませんが、市販化されているものの多くは、原付二種までのコミューターモデル。デリバリーや通勤など移動の足として想定されているものが多く、「CE 02」は見た目からもわかるとおりホビーユース向けで、まだ珍しいのが現状です。
■強いカジュアル感覚
ちなみに最高出力は11kW(15PS)で、日本市場には4月26日に発売予定。メーカー希望小売価格は125万円~と発表されたばかりですが、じつは筆者(青木タカオ)はポルトガル・リスボンにて開かれたジャーナリスト向け試乗会にて、一足先に乗ってきました。
前後14インチの足まわりを持つ車体は、グリップ位置が高く上げられたハンドルのおかげで、ライディングポジションはゆったりとしている
前後14インチの足まわりを持つ車体は、小型コミューターとフルサイズ車の中間的な大きさで、またがると街乗りに丁度良いと感じるサイズ感。750mmと低いシート高で足つき性に優れることに加え、車体重量は132kgしかなく、取り回しに苦労することはありません。乗り手の体格を問わず、気負わず乗れる印象です。
グリップ位置が高く上げられたハンドルのおかげで、ライディングポジションはゆったりとしています。シートの座面が真っ平らなので、着座位置も自在に調整でき、ライポジの自由度がとても高いことも付け加えておきます。
■力強いダッシュでキビキビ走る
走り出すと、加速が鋭くストップ&ゴーを繰り返す市街地走行が得意であることがすぐにわかりました。最大トルク55Nmというスペックは、600ccクラスのスポーツバイクに匹敵するもので、電動の特性上から0-1000rpmと早い段階で発揮。つまり、停止からのスタートダッシュで、トルクはピークに達するのです。
スリッピーな路面でも、電子制御によるトラクションコントロールが介入し、発進時から強力なトルクを発揮する
欧州の旧市街地には石畳が残り、とてもすべりやすい。リスボンも例外ではありません。デコボコ道から受ける衝撃は大きく、そこへきて路面電車の線路も敷かれていて二輪車で走るにはかなり厄介です。
そんなスリッピーな路面で、発進時から強力なトルクを発揮する電動二輪車。駆動輪の空転を懸念し、乗り始めはスロットル操作に気を使いましたが、心配無用でした。
ガバ開けし、全開ダッシュも許容してくれます。電子制御によるトラクションコントロールが介入し、0→50km/hに3秒で到達する加速性能を発揮。神経質にならずとも150mmのワイドタイヤが路面に食いつくから舌を巻くばかりです。
■航続距離は十分と胸を張る開発責任者
各国から集まったジャーナリストらが、グループに分かれておこなわれたテストライドは、BMW Motorradのスタッフらとともにリスボンの街から出ることなく60kmほどの走行距離でした。
カタログスペック(WMTCに準拠)では、満充電による航続距離は95kmで、筆者の車両ではバッテリー残量21%、残り18kmの走行ができると、メーターおよびBluetooth接続したスマートフォンのアプリが表示していたことも報告いておきましょう。
グループに同行した「CE 02」開発責任者のアンドレアス・ウィンマー氏とライディングを楽しんだ
そして嬉しいことに、我々のグループには「CE 02」開発責任者のアンドレアス・ウィンマー氏が同行し、一緒にライディングを楽しみました。もちろん、アレコレと質問攻めするのは言うまでもありません。
まず、「ガソリンエンジンを積むバイクに対し、航続距離が短いのではないか?」という意地悪なクエスチョンをぶつけます。でもこれ、一番聞きたいですよね。
「EVユーザーの使い方を独自に調査し、十分であると判断しました。1日に走る平均走行距離はおよそ10kmにしか過ぎないのです」と、ウィンマー氏は教えてくれます。
■ユーザーからのフィードバックで得た確信!
BMWは四輪EVの技術をモーターサイクルにも用いて、いち早くEV二輪車を市販化してきました。欧州にて2014年に「Cエボリューション」を発売し、バッテリー容量を拡大したモデルを2017年に日本市場に導入。初代は100km程度だった航続距離を160kmまで延長し、スペインやイタリア、そして日本でも警視庁の白バイとして採用されるなど実績を積んできました。
2022年にはその後継となる「CE 04」をリリース。BMWのEVシリーズは、今回の「CE 02」と合わせ、2本立てのラインナップとしています。
10kmという値は、そもそも電動バイクで長距離を走ることを、今のところユーザーは求めていないことを示している
ウィンマー氏が言うわずか10kmという値は、そもそも電動バイクで長距離を走ることを、今のところユーザーは求めていないことを示しているのではないでしょうか。ガソリンエンジン車に変わるものではなく、違う乗り物としてEVが選ばれているのだと思います。
■EVバイクはいったん長い航続距離を求めない!?
カワサキもまた初のピュア電動モーターサイクルとして『Ninja e-1』を発売しましたが、これもまた1回の充電で走行できる距離が55km(ROADモード60km/h定地走行値、1名乗車時)と短く、既存のガソリンエンジン車とは比較しないというメーカーの意思表示が感じられました。ウィンマー氏はこう続けます。
「若者をターゲットにした新しい電動モビリティ、“eパルクーラー”です」
パルクールはフランス発祥の移動術、トレーニングメソッドで、跳んだり宙返りしたりアクロバティックにストリートや公園、森林などを移動する新エクストリームスポーツとして注目を集めています。
都市の移動を楽しむEV二輪車として「CE 02」は開発され、そのデザインはスケートボードやサーフィン、BMXなどからインスパイアされたものです。
ドイツ・ベルリンにて2023年7月におこなわれた「Pure&Crafted」(ピュア&クラフテッド)にてワールドプレミアとして登場した「CE 02」
ドイツ・ベルリンにて2023年7月におこなわれた「Pure&Crafted」(ピュア&クラフテッド)にてワールドプレミアとして発表されたときもまた、スケートボードやBMXのチームがトリックを披露しつつ、「CE02」がそれに混ざり、その世界観をアピールしました。
■既存の常識は通用しない
アグレッシブな走りを可能としているのは、ニーグリップができることもひとつ理由に挙げられます。シート前方がせり上がり、両膝で挟み込めるので、下半身をしっかりとホールドできます。
足の位置について、ウィンマー氏は「どちらでもいい」と教えてくれた
ひとつ疑問だったのは、前後ステップどちらに足を置くべきか。ジャーナリストらもそれぞれ、前に足を投げ出したり、バックステップ気味にリヤステップを利用したり、さまざまです。
「どうぞ、ご自由に」
トランスミッションはなく、シフトペダル操作は要りません。ウィンマー氏は「どちらでもいい」と教えてくれました。公式PVでもライダーはケース・バイ・ケース。リラックスしたいときはフォワードコントロール、アグレッシブに走るならパッセンジャー用のペグでバックステップ気味に。こうした発想もこれまでになかった新感覚と言えるものではないでしょうか。
スマートフォンをハンドル周りにセットするのが前提で、充電のためのUSB-Cポートやマウントするためのステーを最初から備えている
また、スマートフォンをハンドル周りにセットするのが前提で、充電のためのUSB-Cポートやマウントするためのステーを最初から備えています。スマホは車体メーターとBluetooth接続ができ、BMW Motorrad Connectedアプリをハンドルスイッチで操作することが可能。ナビゲーションなど多彩な機能が使えるので、異国の地でも道に迷う心配がありませんでした。
■培われた技術とノウハウは膨大
「バッテリーはどこにあるのか?」
ハンドルスイッチでロックを解除したウィンマー氏は、シートを取り外すと、48Vのリチウムイオンバッテリーを見せてくれます。脱着式ではなく、車載したまま充電をおこないます。コネクターは車体の左側にあり、専用の1500Wクイックチャージャーで家庭用100V電源にて140分で80%、210分で100%のフル充電ができます。
コネクターは車体の左側にあり、専用の1500Wクイックチャージャーで家庭用100V電源にて140分で80%、210分で100%のフル充電が可能
ウィンマー氏は「これまでの市販車で培われたテクノロジーやノウハウが、CE 02にはふんだんに盛り込まれている」とも話してくれます。バッテリー制御やトラクションコントロール、回生ブレーキなど多岐に渡る技術を「Cエボリューション」や「CE 04」から受け継いでいます。
「いろいろと試して欲しい」と言うのは走行モードで、スロットルレスポンスが穏やかな“FLOW”、中間的な“SURF”、ダイレクトで強力な“FLASH”と、3段階に3.5インチのマイクロTFTディスプレイで乗り手は設定できます。
ライディングを終えて、ホテルに戻ると冷たいビールが用意されており、開発責任者のアンドレアス・ウィンマー氏と「CE 02」について意見交換を行った筆者(青木タカオ)
ライディングを終えて、ホテルに戻ると冷たいビールが用意されていました。エンジンブレーキの役割を果たす回生ブレーキの効き具合が“FLASH”では強くなり、この味付けが秀逸でスポーティな走りも楽しめるとウィンマー氏に伝えると、大きく頷いて笑みを見せます。
■初めてのバイクにもうってつけ
「CE 02は誰でも乗れる」とも言います。というのも、欧州ではAM免許(50ccモペッド免許)に対応する最高出力4kW/定格出力3.2kWバージョンも設定され、国によっては14歳から運転ができます。
日本市場は4月26日に発売予定の「CE 02」は、最高出力11kW/定格出力6kWのフルパワー仕様のみ導入される
日本導入は最高出力11kW/定格出力6kWのフルパワー仕様のみで、普通二輪AT免許が必要ですが、「CE 02」はバイクに乗った経験のない人も運転することを想定して開発されているのです。初めてのバイクが電動。そんなEVネイティブにオススメです。
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