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ホンダ「ベンリイ」のルーツは1950年代!? 125ccでも免許不要で乗れる「便利」なバイクだった

バイクのニュース / 2024年4月15日 19時40分

ホンダ初の本格的バイク「ドリーム号」(1949年)に続き、1953年には「ベンリイ号」が登場します。安価で乗りやすく、便利な実用車としてホンダの個性あふれる面白さを秘めています。

■元祖「ベンリイ」は、1950年代の最先端技術の塊だった

 ホンダ「ベンリイ」と言えば、2024年4月時点では原付1種/2種のビジネススクーターのモデル名で、新聞配達や食品デリバリーなどで活躍しています。ホンダのビジネスバイク=ベンリイと連想する人もいると思いますが、その元祖は1953年にまでさかのぼります。

安価で便利な1955年型のホンダ「ベンリイJB型」は、排気量125ccの空冷4ストローク単気筒OHVエンジンに、シーソー式リアサスペンションを採用した意欲作だった安価で便利な1955年型のホンダ「ベンリイJB型」は、排気量125ccの空冷4ストローク単気筒OHVエンジンに、シーソー式リアサスペンションを採用した意欲作だった

 戦後間もない浜松の焼け野原に、簡素な本田技術研究所の看板が立ちます。スピリッツ的にはこれがホンダの創業開始と言えますが、なんと10年も経っていない1953年に現代型の本格的バイク「ベンリイJ」の発売を開始します。

 当時の時代背景としては、戦後から数年は自転車に取り付けるエンジンがよく売れました。「バタバタ」と呼ばれたその乗りもので物を運び、販路拡大のために営業にとび回った時期が落ち着くと、少し経済的に豊かになった国民の間では、より速く、遠くに行けるバイクを買う余裕が生まれます。各バイクメーカーは排気量の大きなバイクを商品展開するようになりました。

 ホンダ創業時期としては後発でしたが、「カブ号F型」(自転車に取り付けるエンジン)などのヒットで一躍トップメーカーの仲間入りを果たし、1952年には4億5000万円の輸入工作機械を購入して工場を3つも建設し、凄まじい勢いで発展していきます。

 1949年にホンダで最初の自社製本格的バイクである「ドリーム号」を発売し、1951年に発売された「ドリームE型」では4ストロークOHVエンジンを搭載しています。

 車体のフレームは鋼板を「コ」の字形に折ったチャンネル型で、リアショックの無いリジッド型(モデルチェンジの際にプランジャー型のリアショックを装備)は、現代の目から見ると前時代的なものでした。

エンジンとスイングアームが固定されて、シリンダー後方に見えるボルトを支点にシーソーのように作動し路面からのショックを吸収。スイングアーム形状もまた秀逸エンジンとスイングアームが固定されて、シリンダー後方に見えるボルトを支点にシーソーのように作動し路面からのショックを吸収。スイングアーム形状もまた秀逸

 そうしていよいよ「ベンリイ」の登場です。1953年発売の「ベンリイJ」は、排気量89ccの4ストロークOHVエンジンを、お菓子のモナカ合わせのようなフレームに搭載しています。

 フレームの部材はそれぞれ鋼板をプレスして成形し、溶接で貼り合わせる製法で、その後の「スーパーカブ」や「ダックス」でお馴染みとなります。当時の走行性能に必要な剛性などのフレーム要件を、効率よく生産できる方式だったのでしょう。

「ベンリイJ」がユニークなポイントは、エンジンをメインフレームに固定せず、スイングアームの前方に設置した事です。一見すると普通のバイクに見えますが、スイングアームのピボットを支点に、エンジンと後輪が前後でシーソーように動きます。

 シーソー式のリアクッションは、エンジンの振動を伝え難くする事で長時間連続走行の疲労軽減に効果があったようです。

 初期型「ベンリイJ」のリアクッションはフレームとスイングアームの接合部付近にバネを設置し、作動を制御していました(現代のモノサスペンションと近い位置なのが興味深い)。

 ステップはエンジンとともにスイングアーム側にあり、シートは車体側あります。この間が上下して路面の凸凹を吸収する構造だったのです。

 このユニークな「ベンリイ」シリーズのシーソー式のフレームは、ホンダらしさの象徴とも言えるかもしれません。

ドライブチェーンとリアのドラムブレーキ、さらにマフラーも右出しで、キックペダルは左側へ。マフラー形状は旧車でよく見るタイプドライブチェーンとリアのドラムブレーキ、さらにマフラーも右出しで、キックペダルは左側へ。マフラー形状は旧車でよく見るタイプ

 1955年に発売された「ベンリイJB型」は、排気量125ccのエンジンを搭載したモデルです。シーソー式スイングアームのままリアクッションは2本ショックとなり、ヘッドライトカバーが付くなど豪華装備になります。

 シーソー式のフレームはこのモデルが最終型となり、同1955年に発売された後継車「ベンリイJC56」では通常のフレームとスイングアームに変更されました。

 当時は法規改正により、排気量125cc以下のバイクを運転するのは許可制で、運転免許は不要でした。そういう事情もあって「ベンリイJ」シリーズは、トータルで10万台以上も売れるヒット作になりました。

 その3年後の1958年には、世界初の量産型、排気量125ccの2気筒エンジンを搭載する「ベンリイC90」にモデルチェンジします。さらに1959年にはスポーツモデルの「ベンリイCB92スーパースポーツ」等へと進化していきます。

奥にあるホンダ「ドリームSA型」と比べると、細くて軽快なイメージの「ベンリイJB型」(手前)。精悍なスタイルは万人に好まれる美しさだった奥にあるホンダ「ドリームSA型」と比べると、細くて軽快なイメージの「ベンリイJB型」(手前)。精悍なスタイルは万人に好まれる美しさだった

「ベンリイ」というモデル名はデビュー以後、排気量125cc以下のモデル名称として使用されてきました。もともと「ベンリイ」の由来は「便利」でもあり、1980年代あたりからビジネスバイクの車名として定着したのです。

■ホンダ「ベンリイJB型」(1955年型)主要諸元
エンジン種類:空冷4ストローク単気筒OHV
総排気量:125cc
最高出力:5.5PS/5800rpm
車両重量:100kg(乾燥)
フレーム形式:プレスバックボーン

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
※2023年12月以前に撮影

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