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V型4気筒エンジン搭載!! ホンダ「VF750F」に注ぎ込まれた先鋭のメカニズムとは?

バイクのニュース / 2024年4月22日 19時40分

1982年に水冷90度V型4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載して登場したスポーツモデル「VF750F」は、アメリカでは「インターセプター」という車名でリリースされました。はたしてライバルの攻撃をインターセプトして、攻守交代できたのでしょうか?

■ホンダ初のV型4気筒スポーツモデル、そのメカニズムと栄光

 1982年のある日、大人気のグラビア雑誌の巻頭にホンダ「VF750F」の写真が掲載されました。アイドルや芸能人に混じっての2ページ見開き写真は、その注目度の高さを表していました。しかしそれは正式発表前のことで、多くのバイクファンは衝撃的なスクープとして知ることになりました。同年の「VF750セイバー」と「マグナ」のデビュー以来、噂はあったものの、「VF750F」のスタイルとメカニズムは予想を超えるものでした。

1982年に登場したホンダ「VF750F」は、量産市販車初の角型断面パイプを採用したダブルクレードルフレームと、V4エンジンの組み合わせが新時代の到来を感じさせる1982年に登場したホンダ「VF750F」は、量産市販車初の角型断面パイプを採用したダブルクレードルフレームと、V4エンジンの組み合わせが新時代の到来を感じさせる

 1980年代前半は、現在のバイクにつながるメカニズムが次々と開発され、すぐに採用される時代でした。「VF750F」はすでに40年以上前のバイクですが、旧車の雰囲気はなく、モダンなバイクに見えるのは当時の最新装備が満載されているためかもしれません。

 フロントタイヤのサイズは当時レースでも公道でも流行していた16インチですが、外径は現在のスーパースポーツ用17インチとほぼ同じ約600mmです。ブレーキディスクはフロント2枚、リア1枚のトリプリディスクとホンダ独自のディアルピストンキャリパーを装備しています。

 フレームはヘッドパイプから左右に分かれる2本のタンクレールを持つダブルクレードル型です。コンピューターグラフィックによる応力解析が行なわれ、角型断面パイプで構成されています。フルアジャスタブルのリアショックはプロリンクと組み合わされて、スイングアームは中空アルミキャスト製でした。

 ホイールは軽量なブーメラン型のオールアルミコムスターです。コムスターは、欧州の24時間耐久レースでも使用された、中空リムとハブを高張力鋼板スポークプレートで繋いだホンダ独自のホイールです。

独特のフェアリング形状。防風効果による快適性の向上と、高速走行時の空気抵抗の低減を実現独特のフェアリング形状。防風効果による快適性の向上と、高速走行時の空気抵抗の低減を実現

 ライダーの疲労と空気抵抗を軽減するフェアリングは、風洞実験を繰り返して形状を検討しました。1980年代のスポーツバイクらしい比較的アップライトなライディングポジションですが、アンダーカウルとともに「VF750F」を個性的に見せています。

 注目のエンジンは、水冷90度V型4気筒DOHC4バルブです。それまでの空冷並列4気筒に比べると、まさに新時代のエンジンです。V型の角度を90度にすることで、一次振動を理論上ゼロとします。バランサーが不要で、そのぶん馬力のロスもなく、軽量化を徹底した設計が施されています。また「VF750セイバー」や「マグナ」と異なり、後輪駆動はチェーンドライブとなっています。

 そして「NR500」(1979年)や「RS1000RW」(1982年)などのホンダのファクトリーレーシングマシンのために開発された、バックトルクリミッター(現在のスリッパークラッチのルーツ的機構)が装備され、ワンウェイクラッチを内蔵するこのシステムも、当時は世界に類のない機構だと言われていました。

2気筒分の幅しかないエンジンをギリギリで囲うフレーム。上下に分割したラジエターの幅もスリム2気筒分の幅しかないエンジンをギリギリで囲うフレーム。上下に分割したラジエターの幅もスリム

 水冷用ラジエターは、上下に分割されたデュアルタイプです。上部ラジエターは2気筒分のエンジンとほぼ同じ幅に、下部はアンダーカウル内部に収まり「VF750F」のスリムなスタイリングに貢献しています。

「VF」シリーズは、いつの間にか並列4気筒エンジンが定番化した大型バイク市場で、一気に主役に躍り出るためのメカニズムとパフォーマスンスを持つように開発され、国内向けスポーツモデルとして「VF400F」も同時にデビューします。また海外向けには上級車の「VF1000F」や「VF1000R」などがラインナップされていきます。

 この時期に、世界的に市販車をベースとしたレースの車両規定が排気量750ccまでに変更されたため、レース界では「VF750F」が活躍します。

アルミのパネルに4連メーターを配置したコックピット。タコメーターはレスポンスの良い電気式アルミのパネルに4連メーターを配置したコックピット。タコメーターはレスポンスの良い電気式

 とくに市販車ベースのレースでの成績が売り上げに影響する北米市場では、「VF750F」とその後に続く「VFR750F」がAMAスーパーバイク選手権で1984年から5年連続でタイトル獲得しています。

 V型4気筒エンジンはその後の「RC30」や「RC45」へと受け継がれ、国際的なレースで数々の栄光を獲得しました。

 ホンダ「VF750F」(1982年型)の当時の販売価格は74万8000円です。

■ホンダ「VF750F」(1982年型)主要諸元
エンジン種類:水冷4ストローク90度V型4気筒DOHC4バルブ
総排気量:748cc
最高出力:72PS/9500rpm
最大トルク:6.1kg-m/7500rpm
全長×全幅×全高:2160×770×1215mm
始動方式:セルフ式
シート高:795mm
車両重量:240kg
燃料タンク容量:22L
フレーム形式:ダブルクレードル
タイヤサイズ(F):120/80-16 60 H
タイヤサイズ(R):130/80-18 66 H

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
※2023年12月以前に撮影

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