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【インタビュー】元SBKライダーのチャズ・デイビス選手が解説する、電動バイクレースMotoEの戦い方

バイクのニュース / 2024年4月18日 12時10分

電動バイクレースである『FIM Enel MotoE World Championship』の戦い方、電動レーサー「V21L」の走らせ方は、内燃エンジンのバイクレースとはどのように異なるのでしょうか。MotoEライダー、チャズ・デイビス選手に話を聞きました。

■マシンの開発にも携わった、元SBKライダーが語るMotoEの感触とは

 2024年シーズンの電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』(以下、MotoE)には、1人のベテランライダーがエントリーしています。チャズ・デイビス選手です。スーパーバイク世界選手権(SBK)において、ドゥカティのファクトリーチームで活躍したライダーで、2021年をもって引退しました。今季のMotoE参戦でレースに復帰した形となります。ドゥカティがMotoEに供給する電動レーサー「V21L」の開発にも携わったライダーです。

チャズ・デイビス選手が駆る「V21L」チャズ・デイビス選手が駆る「V21L」

 そんなデイビス選手に、MotoE開幕戦ポルトガル大会(MotoGP第2戦ポルトガルGP併催)のレース後に話を聞きました。

 レース1を9位、レース2を15位で終えたデイビス選手は、初のMotoEレースについて「楽しんだよ。もうちょっと結果が良ければよかったんだけどね。でも、良い経験になった」と言います。内燃エンジンのバイクとドゥカティの電動レーサー「V21L」の走らせ方の違いを尋ねました。

「V21L」は車両重量225kg、車格としては1000ccクラスのバイクに近いものですが、出力は110kW(150hp)となっています。Moto2マシンの最高出力は140psですから、出力としてはMoto2マシンに近いと言えるでしょう。

「驚いたことに、このバイクはかなりのコーナリングスピードが必要なんだ」と、デイビス選手は答えます。コーナリングスピードを乗せる小排気量車のような走らせ方が必要だと言うのです。

「高いコーナリングスピードでバイクを信頼する必要がある。コーナーの真ん中ではグリップがあるから、それを利用してアドバンテージを得なくちゃいけない。それが、SBKやMoto3、Moto2との違いだよ。たぶん似たようなものなんだろうけど、このバイクは滑らかに走る必要があるんだ」

ドゥカティが供給する電動レーサー「V21L」は、ハンドル左のスイッチで出力のマッピングを切り替えるドゥカティが供給する電動レーサー「V21L」は、ハンドル左のスイッチで出力のマッピングを切り替える

 では、エキゾーストノートが無いことについてはどうでしょう。激しくポジションを争うレースで影響はあるのでしょうか? デイビス選手の回答は「そんなに大きな問題じゃない」というものでした。

「音はあまり聞こえないけど、風やほかのことを感じたりする。それに、タイヤのスライドが聞こえることもあるよ」と言ったデイビス選手は『キッ、キッ』と、タイヤのスライド音を声で再現してくれました。エキゾーストノートの代わりに聞こえる音やその他の情報で、後ろのライダーの動きを察知しているようです。

 電動バイクはスロットルを開けると大きなトルクが一気に出ます。それが電動バイクの特徴のひとつです。電子制御でコントロールしているとはいっても、内燃エンジンのバイクとは異なる操作が必要なのではないでしょうか? デイビス選手に「トルクのコントロールについてはどうですか?」と尋ねました。

「幸い、バイクはドゥカティ製だ。彼らは、トルクを完璧にコントロールするバイクの作り方を知っている。もちろん、マッピングなしに純粋なパワーを使ったら、あっという間にクラッシュすると思うよ。でも、ドゥカティはスロットルのマッピングに必要なトルクの数値を知っている」

「みんな、このバイクにはものすごくトルクがあると思っている。でも、結局のところ、タイヤが受け入れられるトルク量しか出せないんだ。これが、ドゥカティがレーシングバイクやエンジンを構築する経験を生かしたところだ。正しくマッピングすることで、エンジンのトルクとスロットルを調整するんだ」

 ちなみに、出力についてはドゥカティによって3つのマッピングが用意されています。

リアブレーキにはドゥカティ独自の電気ブレーキが採用されており、リアホイールにはブレーキディスクやキャリパーが無いリアブレーキにはドゥカティ独自の電気ブレーキが採用されており、リアホイールにはブレーキディスクやキャリパーが無い

 電動レーサー「V21L」が備える内燃エンジンのバイクとの違いは、まだあります。特徴的なものは、リアの「電気ブレーキ」です。ブレーキディスクやキャリパーは無く、ブレーキをかけると減速して、エネルギーがバッテリーに回生します。これはドゥカティ独自のブレーキシステムです。

「ちょっと不思議だね」と、デイビス選手はリアの電気ブレーキを評しました。

「普通のリアブレーキと同じだけど、違う利き方をする。バイクを減速させるポイントが違っていて、フィーリングが(ディスクとキャリパーのブレーキとは)ちょっと違う。でも、これはこれで問題なく機能しているし、車両重量も軽くなっているんだ」

 タイヤについてはどうでしょうか。MotoEのワンメイクタイヤサプライヤーはミシュランで、初年度の2019年から、サスティナブル素材を使用したタイヤを供給しています。2024年はフロントに49%、リアに53%のサスティナブル素材が使用されています。

「僕はMotoE参戦1年目なので、以前のシーズンのタイヤとは比較ができないんだけど、リアタイヤの進化を見て、ちょっと怖かったよ。見た目が普通のタイヤとは全然違うんだ。でも、性能はよかったよ。十分だ」

 デイビス選手が「怖かった」と言うのは、リアタイヤのデザインのことです。その模様は一見するとスリックタイヤには見えませんが、実際に触ってみるとほとんど凹凸はありません。2024年シーズンから、そのタイヤが「サスティナブル素材を使用したタイヤ」であることを視覚的に示すためのデザインが施されているのです。

独特なデザインを持つミシュランの2024年MotoEタイヤ(リア)。模様は走れば消えてしまうもの独特なデザインを持つミシュランの2024年MotoEタイヤ(リア)。模様は走れば消えてしまうもの

 デイビス選手にインタビューする前、ポルトガルGPの木曜日にミシュランの2輪モータースポーツマネージャー、ピエロ・タラマッソさんに確認したところ、「デザインは1~2周で消えます」ということでした。そして実際に走行したデイビス選手としても、性能には影響はないと感じているようです。

 デイビス選手が語った話から、MotoEマシンの詳細がさらに明らかとなりました。MotoEマシンも電動バイクレースも、進化の真っただ中です。進化とともに、走らせ方なども変わるかもしれません。今後も、MotoEと「V21L」について注視していきましょう。

■FIM Enel MotoE World Championship
 2019年にスタートした電動バイクによるチャンピオンシップ。2019年から2022年まではWorld Cup(ワールドカップ)として開催されていたが、2023年よりWorld Championship(世界選手権)となった。MotoGPのヨーロッパ開催グランプリのうち数戦に併催され、2024年シーズンは土曜日に各2レース開催で全8戦16レースが予定されている。バイクはドゥカティ「V21L」のワンメイクで、タイヤはミシュラン。2024年シーズンからエントリーするチャズ・デイビス選手を含め、9チーム18名のライダーが参戦する。

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