マシン大破で2連年連続リタイア!? 改めて思い知らされたル・マン24時間レースの難しさ 後編 レーシングライダー石塚健のレースレポート
バイクのニュース / 2024年5月5日 17時10分
国内外で活躍するレーシングライダーの石塚健選手が、フランスにあるブガッディサーキットで行われたFIM世界耐久ロードレース選手権 開幕戦 ル・マン24時間レースに参戦。そのレポート後編です。
■昨年果たせなかったチェッカーを目指して
皆さんこんにちは!レーシングライダーの石塚健です。
2024年4月18日から4月21日に、フランス ル・マン ブガッティサーキットにて開催された、2024 FIM 世界耐久選手権の開幕戦 ル・マン24時間レース。今回はその後編、決勝レースの模様をお伝えしていきます!
ル・マン24時間レースでブガッティサーキットを走る石塚健選手
決勝日の15時にいよいよレースはスタート。自分の走行順は2番目で、スタートライダーはチョイ選手が務めました。
ここまでレースウィークでは様々なハプニングが発生し、簡単ではない状況で、とにかくチェッカーを受けたいという強い想いで、エンジンパワーを極限まで落とし、ラップタイムよりもトラブルを回避する作戦を立て、走行を続けました。
序盤は混戦となりチョイ選手が順位を36位台まで落としますが、ノントラブルで順調に走行。続いて、自分の走行スティントとなります。
1スティント目は安定したタイムで追い上げる事ができ、21番手までポジションアップをする事に成功。パワーが制御されたバイクでのオーバーテイクはリスクもあり、かなり大変ではありましたが、自己ベストを更新しながら追い上げていきました。
ここまでマシントラブルや自分のミスもあり、しっかりと走行時間が取れなかったので、ようやく走り込む事ができ、自分のペースを作る事ができ、「やっと乗れてきた」という感じ。
その後も順調に追い上げ、自分の3回目のスティント終了時点では、18番手まで順位を上げることができました。
ピットで自分のスティントを待つ石塚健選手
ここからは身体の痛みや疲労との戦いです。24時間レースの鬼門となる、夜を無事に超えることに集中しなければなりません。
そして、レースもおよそ折り返し、昨年越えられなかった深夜帯。自分も他のライダーも、ワンミスの許されないかなりリスキーな状況に、慎重に、慎重に、周回を重ねていきました。
そんな路面の冷えてきたところで、スタート前から懸念していた、急遽の代役参戦となったマックス選手がまさかの転倒。チョイ選手とのライダー交代まで、残り3ラップというところでした。
ピットでバイクとライダーが戻って来るのを待つ間、チームに緊張が走ります。
結局、ライダーに大きな怪我はありませんでしたが、バイクのフレームが割れてしまい、修復不可能との判断で非常に残念ながら、リタイアとなってしまいました。
昨年と同じようなタイミングと出来事、奇しくもリタイアとなったコーナーも同じでした。
本当に悔しい。全身の痛みと疲労感だけが残り、ものすごい喪失感が襲い掛かってきます。
転倒により大破されたMaco Racing Teamのマシン
自分としてはできることは、全てやったつもりでした。ペース的にもチーム内では常に引っ張っていく必要があり、前との差を縮めては離れての繰り返しの状況を、諦めずに必死で追いかけました。
マルティン選手が予選で怪我をし、出場できない事が判明した後、3人目のライダーをどうするかという問題が急遽発生。本来であればチームの第4ライダー(リザーブライダー)を起用するのが通常の流れですが、他チームの第4ライダーなどをレンタルすることもレギュレーション的には可能で、レギュラーライダーを失った多くのチームがその決断を下しています。
マックス選手は耐久レースの経験もなければ、タイムも自分から2秒から3秒落ちで、EWCのル・マンラウンドに参戦するには経験や実力が不足している事は明らかでした。
そのためチョイ選手と共に、この結果をレースがスタートする前から懸念して恐れていたのですが、チームの判断を覆すことはできませんでした。もちろん、これはレースなので何が起きるか分かりませんが、ル・マンの夜を走り切るには、それほどの経験や技術が必要なのです。
この結果についてはチームの判断も含め、次戦に向けて改善しなければならないと思っています。
しかし、シーズンはまだ始まったばかり!次戦は6月7日、8日にベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで行われる第2戦!今回は、初の8時間耐久レースとなります。
時期的にも気候は良く、24時間耐久に比べるとペースも上がり、スプリント寄りのレースになると予想しています。そんなスパに向けて、今回と同じようなレースをしないように、しっかりと準備をしていきたいと思います。
この悔しさは必ず次戦リベンジを果たします。皆さん、応援ありがとうございました!
それではまた!
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