スズキの兄弟車「GSX-8S」と「GSX-8R」 デビュー間もないけど、すでに永久保存版な予感
バイクのニュース / 2024年5月8日 7時10分
2023年登場のスズキ「GSX-8S」、そして2024年1月に日本で発売された「GSX-8R」。基本構成を共有するこの2台の特性にはどのような特徴があるのでしょうか。両車に乗ったモーターサイクルジャーナリストの松井勉さんが紐解きます。
■まずは基本情報をおさらい
2023年春に登場したスズキ「GSX-8S」、そして今年の春に登場した「GSX-8R」。この2台、気になるぅ、という話題を良く聴きます。そして乗って解った2台の良さを、ここに共有します。
スズキ「GSX-8S」(左)と「GSX-8R」(右)に試乗する筆者(松井勉)
スポーツネイキッドのGSX-8S。フェアリングとGSX-R風のスタイルを纏ったGSX-8R。そのお値段は8Sが106万7000円。8Rが114万4000円。このほどよい価格も気になる発火点でしょう。ドンズバの同排気量帯がないのですが、ヤマハのMT−07が88万円、MT-09は125万4000円。ホンダが750ccパラレルツインのホーネットをぶつけてくればおそらく8Sの価格的、性能的にも直接的なラバルになるのではないでしょうか。また、KTM790DUKEが119万円と視界に入る一台です。
スズキ「GSX-8S」
2台のキャラは、8Sがストリートファイター的ネイキッド。印象的なフロントフェイスやショートテールなデザイン。ワイドなパイプハンドルで造ったスポーティーなライディングポジション。TFTモニターで造った新しいダッシュパネル。
スズキ「GSX-8R」
そして8Rは8Sがもつ装備と同等ながら、GSX-Rを思わせるスーパーバイク的なライディングポジションやフェアリングを纏ったスポーツバイク然としたスタイルです。
スズキ「GSX-8R」。あえてエンジンを露出したフェアリングを採用しています
価格もそうですが、クリーンな外観で魅了する両車です。
ただの着せ替えではなく8Rはサーキットへとスポーツ走行を楽しむユーザーにもしっかり応えるよう、ハンドル位置を前方に移動し、前傾姿勢となるポジションと、それによりライダーの体重が前輪への荷重となるようにチューニング。フェアリングデザインもしっかりと風洞実験で磨いています。8Rのフェアリング類はカバーするエリアを限定的にし、あえてエンジンを露出するようなスタイルにしているのも特徴です。
■楽しさ、親しみやすさの根源は現代的な設計のエンジンにアリ
この2台の楽しさ、親しみやすさ、そして力強さをもたらす根源は、共用するフレームなどの車体はもとより、775cc位相クランクで不等間隔爆発をもたらす現代風な2気筒エンジンが見せる低回転から高回転まで、いつでもどこでも取り出しやすいパワー特性が大きくプラスしているのも間違いありません。
スズキ「GSX-8S」「GSX-8R」のほか、「V-STROM 800」「V-STROM 800DE」にも搭載される排気量775ccの2気筒エンジン
59kWを8500回転で、76N.mを6800回転で生み出すこのエンジン。実はこの2台以外にも車体、フレームの基本を共用するモデルとしてV-STROM 800,800DEがあります。
スズキ「GSX-8S」「GSX-8R」と同時開発された「V-STROM 800」。エンジン、フレームの基本設計を共有しつつ、まったく異なる性格に仕上げられています
アドベンチャーツアラーとそれらを共用しつつ4台を同時開発したというスズキ。目的、用途が異なるだけに開発は風通しのよいように配慮し、どのモデルもキッチリ目的を果たすよう設計されたと言います。要となるエンジンもどのモデルでも成立しやすいような扱いやすくトルクフルなものを目指したそうです。
スズキ「GSX-8S」に試乗する筆者(松井勉)
結果として8S、8Rはこのエンジン特性の恩恵で、あらゆる場面で操るハードルが高くなく、むしろどんなシーンでも楽しさに変換してくれるのです。市街地から郊外路、高速道路の移動やワインディングまで、スポーティーさって何だっけ? という部分がバイクと“自分のコントロールにおける一体感にある”ことを解りやすく伝えてくれるのです。
■「フツーの速度域」が楽しい!
スズキ「GSX-8R」に試乗する筆者(松井勉)
例えば車体です。サスペンションやスチールフレームが“剛性一辺倒のスポーツ性最優先”という手強さがありません。ツーリング先のワインディングを通過する速度域でもしっかりと走りの手応えを楽しませてくれます。これ、とても大事でフツーの速度が楽しい。もちろん、8Rはサーキットを攻めても楽しめるよう作り込んだそうですが、攻め中心のバイクライフではありません。8R、8Sとも交差点を曲がっただけでも嬉しくなるのです。
ハンドリングもスキルレベルを問わず楽しめるでしょう。例えば旋回のキッカケとなるタイミングをシートの右側、左側に荷重をかけて寝かすような場合、素直で穏やかなマナーでしっとりとバイクがバンクし、旋回がはじまります。鋭さや素早さよりも安心感ある走りです。
■キッカケを与えればスポーティな走りを楽しめる
スズキ「GSX-8S」(左)と「GSX-8R」(右)。それぞれに専用のサスペンションが搭載されています
逆に素早い切り返しやスパッと寝かせたい時、ステップに荷重して寝かすキッカケを与えれば、タイヤが持つプロファイルに合わせてスパッと寝てくれます。このときの動きは鋭くもありスポーティーさのある一体感をライダーに楽しませてくれます。
そこにエンジンの特性を合わせてトラクションを掛ける、ゆったりと加速をする、という合わせ込みをライダーがすれば、意のまま感がさらに上昇。走りの時間が特別な時間となることは間違いありません。経験、楽しみ方、幅の広いライダーが楽しめる2台。
特に8Rではフロントタイヤの仕事量としての荷重があらかじめかかっているので、フロントからスっと曲がり始める感触がより濃厚にあり、8Sにしてもバイクのどこに荷重をかけて曲がるキッカケにするかで、そのさじ加減をライダーが発見する楽しさもあります。
■どちらの車両を選ぶべき?
スズキ「GSX-8S」と筆者(松井勉)
では、どのようなライダーが8S、8Rのユーザー候補でしょうか。結論から言えば、カタチ、色、好きなほうで選んで間違いなしです。ワイディングでの対話にも8R、8Sそれぞれの楽しみ方、深みがあるように、本当に甲乙つけがたい印象です。
どちらも取材時に、市街地+高速道路+ワインディングというツーリング想定でも24から25km/l程度を走ってくれました。ツーリングシーンでは30km/lを出せる実力もあり、楽しいのに燃費もナットク。総合的にいってオススメして間違いなし、な2台。VSTROM-800シリーズともども、“スゲーな、スズキ”と思った次第です。
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