なんでバッテリーは「上がる」のか? もしかすると「暗電流」が原因かも!?
バイクのニュース / 2024年5月10日 11時10分
いざバイクに乗ろうとしたら、バッテリーが上がっていてエンジンがかからない(涙)。そんな経験のあるライダーも多いのではないでしょうか。そもそもバッテリーはなぜ「上がる」のでしょうか? 意外な落とし穴も!
■頻繁に乗っていれば、バッテリーは上がらない……のか?
バッテリーが「上がる」とは、どういう意味でなのしょうか? バッテリー=電池で、電池は「電気を溜める池」のことです。そして池の水が無くなってしまうことを「干上がる」と言うように、池から電気が無くなる状態を「バッテリーが上がる」と呼んだことが語源のようです(諸説アリ)。
電気を溜めておくバイクのバッテリー。画像は旧車に使われる開放型の鉛バッテリー ※画像のバッテリーは筆者所有のものです
それでは、バイクはどうやってバッテリーに電気を溜めているのでしょうか? それはエンジンに備わる「発電機」が、エンジンが回転することで電気を生み出し、その電気をバッテリーに充電しています。エンジンがかかっている間は発電機が発生する電気で点火プラグの火花を飛ばしたり、ヘッドライトやウインカー等の灯火類を点灯したり、近年のバイクならECU(エンジン制御ユニット)や燃料噴射装置などの様々な電子装置を稼働しています。そのため、エンジンがかかっている間は、基本的にバッテリーの電気が減ることはありません。
バッテリーの電気は、主にエンジンをかける際のセルモーターを回すために使われますが、そこで消費した電気は、ある程度走行することで充電されます。
となれば、バッテリーが上がることはないハズですが……。
■ライダーのミスと、故障が原因
発電機で充電しているにもかかわらず、なぜバッテリーは上がるのでしょうか? 故障やトラブルではない場合は、バッテリーの「自然放電(自己放電)」があります。
バッテリーはまったく電気を使わなくでも、少しずつ放電していきます。そのため長期間バイクに乗らないと、自然放電によって上がってしまします。これを避けるにはある程度の頻度でバイクに乗ってバイクの発電機で充電するか、充電器を繋いで補充電すれば良いでしょう。
メインキーの「P(パーキング)」。ライトやテールランプが点灯した状態でキーを抜くことができる。写真はカワサキ「ZRX1200DAEG」(2016年まで生産)のキーシリンダー
また、ライダーのミスでバッテリーが上がることもあります。ありがちなのは「キーをP(パーキング)の位置で抜いてしまう」ことです。
最近のバイクはあまり装備していませんが、ひと昔前までは多くのバイクのメインキーに「P(パーキング)」があり、ライトやテールランプが点灯した状態でキーを抜くことができました。なかにはハンドルロックの隣が「P」の位置の車両もあり、ライダーが意図せずに「P」の位置でキーを抜いて駐車してしまうこともありました。
すると、ライトやテールランプがバッテリーの電気をどんどん消費していくので、比較的短時間でバッテリー上がりを起こしてしまいます。
発電機が生み出した電気を整流・整圧するレギュレータ・レクチファイア
バイクの発電機や充電系統が故障したことで、充電できずにバッテリーが上がることもあります。近年のバイクはエンジンに備わる発電機が生み出した交流の電気を、レギュレータ・レクチファイアという部品で直流の電気に整流し、かつ充電に適した電圧(13ボルト前後)に整えています。
そのため、発電機やレギュレータ・レクチファイアが壊れると、エンジンがかかっていて走行しているにもかかわらず充電できません。
レギュレータ・レクチファイアの故障や不調は、単純に電圧が低過ぎて充電できない場合だけでなく、電圧が高くなり過ぎて過充電やバッテリーを壊してしまうこともあります。
もちろん、バッテリーそのものが寿命を迎えている場合もあります。バイク側の発電機や充電系統に異常が無くても、電気を溜めることができず、すぐに上がってしまうようになり、最終的にはまったく充電しなくなります。こうなると、新しいバッテリーに交換するしかありません。
■電気アイテムの「バッ直」に注意!
何カ月も乗っていないわけでなく、バイクの充電系やバッテリーにも問題が無いのに、それでもバッテリーが上がる場合は「暗電流」が原因かもしれません。
暗電流とは、メインキーをOFF(キーを抜いた状態)にしても、バイクの電気回路に流れている電流のことを指します。たとえばメーターに時計が備わっていれば、その時計を動かし続けるために、キーがOFFでも極めて微小な電気が流れています。これが暗電流のひとつですが、時計程度の暗電流ではバッテリーが上がることはまずないでしょう。
近年のバイクは盗難抑止装置としてイモビライザーを装備している車両が多く、こちらもキーOFF状態で電気を消費している場合がありますが、こちらは車種や機能によって暗電流の大きさが異なります。
国産車のイモビライザーの暗電流はかなり小さいようなのであまり心配はありませんが、外国車の盗難防止装置の中にはかなり暗電流が大きく、ともすれば数週間乗らないだけでバッテリーが上がる場合もあると言われています。
そして暗電流で気を付けたいのが、アフターパーツのUSB電源やグリップヒーター、ETC車載器など、電気・電子アイテムの「取り付け方」です。
電気を使うUSB電源やグリップヒーターなどのアフターパーツは、メインキーがONの時だけ電気が流れるACC配線に繋ぐことが基本。安易な「バッ直」は暗電流でバッテリーが上がる原因になる
これらは当然電気を使いますが、バイクにはメインキーをONにした時だけ電気が流れる配線(ACC=アクセサリー電源など)があり、そこに繋いであれば大丈夫です。ただしこの配線を探して繋ぐには、バイクの構造や整備の正しい知識が無いと難しいので、プロに任せた方が無難でしょう。
しかしこれらの電気・電子アイテムを「バッテリーの端子に直接つなぐ」、いわゆる「バッ直」も見受けられます。簡単に繋げられますが、これが暗電流でバッテリーが上がる原因になっているケースが少なくありません。
たとえば、「バッ直」のグリップヒーターはスイッチを切り忘れたら駐車中もどんどん電気を消費してしまいます。またUSB電源は、バッテリーの12Vから電子機器用の5Vに変換するだけで電気を消費する場合があるため、USBコネクターに何も繋いでなくても相応に大きな暗電流が発生し、バッテリー上がりの原因になります。
誤解がないよう繰り返しますが、これらのアフターパーツの電気・電子アイテムでバッテリーが上がるのではなく、安易な「バッ直」は避けた方が良い、ということをお忘れなく!
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