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トラッカーカスタムの神バイク!! ホンダ「FTR250」は本物志向のドリフトバイクだった

バイクのニュース / 2024年5月13日 19時40分

1986年に登場したホンダ「FTR250」は、アメリカンモータースポーツへの憧れが生んだ新しいシングルスポーツです。本場のレースとバイク作りを知っていたホンダの本格的なフラットトラッカーは、軽量スリムで俊敏な走りのみならず、カスタムシーンでも大人気でした。

■土煙が似合う! フラットトラックのレーサーレプリカ

 ホンダ「FTR250」は、1986年に発売されたニュータイプのオン/オフバイクです。生産終了後、2000年頃に流行したトラッカーカスタムの人気モデル「FTR」(2000年発売)が、そのイメージを継承しています。

ホンダ「FTR250」(1986年型)は、AMAダートトラックマシンのレプリカでありながら、実際にダートトラックを楽しめる新感覚オン/オフマシンだったホンダ「FTR250」(1986年型)は、AMAダートトラックマシンのレプリカでありながら、実際にダートトラックを楽しめる新感覚オン/オフマシンだった

 1984年に、アメリカで人気のフラットトラックレースでHRC(ホンダ)の「RS750D」がチャンピオンを獲得したこともあり、そのバイク作りのノウハウを注ぎ込んで開発されました(実際にはHRC製のシングルエンジン「RS600D」のスケールダウン的レプリカ)。

 フラットトラックレースは、土を固く敷きつめた、左回りのシンプルなオーバルコースで行なわれます。最大出力よりも、扱いやすい強力なトルク特性のエンジンや、軽くてしなやかな車体が要求されます。

 この競技が注目されたのは当時、世界GPで活躍するアメリカ人ライダー達がこぞってフラットトラックの経験者だったからです。

「ならば日本でもこのブームを」と計画は盛り上がりますが、全国にできるはずのコースよりも先に「FTR250」が発売となりました。

 当時の競技志向のライダーは、すでにロードレースやモトクロスに傾倒しており、フラットトラックレースは一部の愛好家が楽しむ比較的小さなブームとなりました。

コース走行の際には簡単に取り外せるシンプルな構成のスピードメーター。オフロード車同様にタコメーターは装備しないコース走行の際には簡単に取り外せるシンプルな構成のスピードメーター。オフロード車同様にタコメーターは装備しない

 前述の通り、生産終了後のカスタムブームで注目を集め再浮上しますが、そのカスタムシーンの中で「FTR250」が、いわゆる「神バイク」となった理由は、フラットトラックレースに出場できるレベルの高い完成度を持つ「本物」だったからでしょう。

 エンジンは人気のオフロード車である「XLR250R」(1985年発売)の4ストロークSOHC単気筒をベースに、シリンダーヘッドはRFVC(放射状4バルブ方式燃焼室)システムを採用していました。

 キャブレターは低・中速域での鋭いレスポンスに優れる、吸入効率の良いフラットバルブPJ型を採用しています。

 エキゾーストパイプの集合部間の短縮や、新設計のDC-CDIユニット、6速ミッションなどと相まって、ストレートの加速やコーナーでの立ち上がりで俊敏な走りを発揮しました。

 フレームは他の250ccモデルとは異なるダブルクレードルタイプで、低重心とショートホイールベース、キャスター角24度と、フラットトラックのために用意されたものでした。

ヘッドパイプ直下から2本に分かれ、排気管を跨いでエンジン下に回り込むフレーム形状は、まさにアメリカのダートトラックマシン「RS600D」と同様のものヘッドパイプ直下から2本に分かれ、排気管を跨いでエンジン下に回り込むフレーム形状は、まさにアメリカのダートトラックマシン「RS600D」と同様のもの

 面白いことに、この車体は低いシート高(780mm)と大きなハンドル切れ角(50度)もあって、市街地でも軽快な取りまわしをライダーにもたらしました。

 グレードは2タイプ用意され、競技志向のキック始動のみと、市街地で便利なセルモーター付きがありました。

「FTR250」には直接的な後継車がありませんが、沸騰するカスタムブームの中で2000年に発売された「FTR」が、排気量223ccのエンジンを搭載したストリートトラッカーとしてそのイメージを継承しています。

シート後方から伸びるリアフェンダー部分は、ブラックアウトしてレーサーらしさを演出。この部分を取り外せばダートトラックマシンのルックスになるシート後方から伸びるリアフェンダー部分は、ブラックアウトしてレーサーらしさを演出。この部分を取り外せばダートトラックマシンのルックスになる

 ホンダ「FTR250」(キック仕様・1986年型)の当時の販売価格は38万5000円です。

■ホンダ「FTR250」(キック仕様・1986年型)主要諸元
エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC
総排気量:249cc
最高出力:27PS/8500rpm
最大トルク:2.4kg-m/7500rpm
全長×全幅×全高:2080×900×1095mm
始動方式:キック式
シート高:780mm
車両重量:122kg
燃料タンク容量:7.2L
フレーム形式:ダブルクレードル
タイヤサイズ(F):100/90-19 57P
タイヤサイズ(R):120/90-18 65P

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
※2023年12月以前に撮影

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