公道版ホンダ「NSR」が登場!? グランプリの栄光とレーサーレプリカブームの沸騰
バイクのニュース / 2024年5月27日 19時40分
1980年代にレーシングマシンとの距離感が最も縮まったモデルが、1986年に発売されたホンダ「NSR250R」です。世界GPでタイトルを獲得したファクトリーマシンとそっくりで、しかも市販レーサー「RS250R」と同時開発された生粋のレーサーレプリカでした。
■レーシングテクノロジーが創造した、公道版GPレーサー
1980年代から1990年代にかけて、大流行したレーサーレプリカ車の代表的なモデルがホンダ「NSR250R」(1986年型)です。
ホンダ「NSR250R」(1986年型)は、世界GPマシン「NSR500」と「NSR250」のテクノロジーをダイレクトに反映した2サイクルスポーツ
ちなみにレーサーレプリカ車の定義はさまざまで、好きになったバイクや見てきたレースシーンでそれぞれ異なっています。
ホンダの2ストローク車で言えば、「MVX250F」(1983年発売)はV型3気筒エンジンなので「NS500」のレプリカだ、と言う人もいれば、市販レーサー「RS250R」と同時開発の「NS250R」(1984年型)がレーサーレプリカという意見もあります。さらにレプリカには構造的に近いファクトリーマシンの存在が不可欠というファンの声もあります。
いずれにしろ「NSR250R」は真のレーサーレプリカと呼ぶに相応しい設計や開発を経て、エンジンやフレームなどファクトリーマシンの構造やイメージをダイレクトに再現しています。
1975年代の免許制度変更や車検が無い事で排気量250ccクラスが人気となり、各社から2ストロークエンジンの250スポーツ車が発売されます。
ライバル車はモデルチェンジとともに性能向上をはかり販売台数を伸ばす中、ホンダは2ストローク車での開発で遅れをとり「MVX250F」や「NS250F/R」を登場させるも販売合戦では劣勢のままでした。
ブレーキフルードは別体タンク。クリップオンハンドルはトップブリッジの下に取り付けられている
一方、1984年になると世界GPなどのレースシーンでは500ccのみならず250ccクラスでもホンダ車の快進撃がスタートし、1985年にはフレディ・スペンサー選手が500ccと250ccのダブルタイトルを獲得します。
そうして翌年の1986年に、いよいよ「NSR250」を名乗るファクトリーマシンが登場します。そして同年10月に市販車の「NSR250R」がデビューしました。
その市販車「NSR250R」はGPマシン「NSR250」とそっくりのアルミ幅広ツインチューブフレームを採用していました。また、当時最新のケースリード方式+デジタル制御RCバルブを採用したエンジンなど、市販車ながら世界GPで活躍しているファクトリーマシンと歩みを揃えたような最新技術を満載していました。
ホンダ独自の中仕切りが入った断面が「目の字」型になるアルミ角パイプを使用した幅広のツインスパーフレーム
その速さとともに、GPレーサーと近い最新テクノロジーの数々にファンは熱狂します。
2ストロークのスーパースポーツ新時代の到来を告げる「NSR250R」の出現に、ライバル各社も自社のGPマシンに近いV型2気筒エンジンを採用するなど、レーサーレプリカブームはさらに加速していきました。
「NSR250R」はPGM(エンジンのデジタル制御)やガルアームやプロアームを採用したり、さらに乾式クラッチやマグネシウムホイールを装備したSP仕様も追加するなど、追いすがるライバルを振り切るかのようにモデルチェンジを繰り返しました。
1996年に発売された最終型は、1000台限定でHRCのチームスポンサーであるレプソルカラーの「NSR250R SP」となっています。
レーサーレプリカが熱かった当時を振り返る時には「NSR250R」とともに、2ストローク車でも「最強マシンはホンダ」のイメージが鮮烈に蘇ります。
ファクトリーマシン「NSR250」に似た大型リアカウルが人車一体のエアロフォルムを形成している
ホンダ「NSR250R」(1986年型)の当時の販売価格は55万9000円です。
■ホンダ「NSR250R」(1986年型)主要諸元
エンジン種類:水冷2ストローク90度V型2気筒
総排気量:249cc
最高出力:45PS/9500rpm
最大トルク:3.6kg-m/8500rpm
全長×全幅×全高:2035×705×1105mm
始動方式:キック式
シート高:750mm
車両重量:141kg
燃料タンク容量:16L
フレーム形式:ダイヤモンド
タイヤサイズ(F):100/80-17 52H
タイヤサイズ(R):130/70-18 63H
【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
※2023年12月以前に撮影
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