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バイクのオートマ化はホンダの執念か!? 1977年登場の「EARA(エアラ)」が新2輪世紀の幕を開ける

バイクのニュース / 2024年6月3日 19時40分

1977年に発売されたホンダ「EARA(エアラ)」は、大ヒット作の「CB750フォア」の並列4気筒エンジンに、クラッチ操作の要らない「ホンダマチック」と大人の雰囲気を組み合わせた、新時代の「ナナハン」でした。

■生まれた時代が早過ぎた? クラッチ操作不要のホンダマチック装備

 2024年6月に、ホンダからクラッチレバーの操作無しにシフトチェンジ可能な「E-Clutch(イークラッチ)」を装備した「CBR650F」および「CB650F」が発売され、クラッチコントロールを自動制御する画期的な新製品として話題を集めています。

1977年に発売された、クルマにも採用される「ホンダマチック機構」搭載の「エアラ」は、オートマチック変速の大型バイク1977年に発売された、クルマにも採用される「ホンダマチック機構」搭載の「エアラ」は、オートマチック変速の大型バイク

 1970年代にも、同じようにクラッチ操作不要で走れる大型バイクがありました。その名は「EARA(エアラ)」です。車体のベースとなった名車「CB750フォア」に比べると影の薄い存在ですが、今こそホンダのオートマチック車開発の歴史とともに振り返ってみたい1台です。

 ホンダの自動変速、あるいはクラッチ操作不要への取り組みは、1949年にまでさかのぼります。ホンダ初の本格的なバイクである「ドリームD型」から始まり、60年以上もの長い歴史を持っています。

 実際に販売されたメカニズムとしては「スーパーカブ」の自動遠心クラッチや、スクーターのVベルト式、大型バイクでは「DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)」がお馴染みです。

 珍しいところでは、バダリーニ式の油圧駆動型自動変速機「HRD(Honda R&Dの頭文字)」を搭載したスクーター「ジュノオM型」が1961年に発売されています。

「CB750フォア」の並列4気筒SOHCエンジンをベールに、バルブタイミングなどをホンダマチックに合わせたフラットなエンジン特性に「CB750フォア」の並列4気筒SOHCエンジンをベールに、バルブタイミングなどをホンダマチックに合わせたフラットなエンジン特性に

 HRDはその後「HFT(Human Fitting Transmission)」に進化し、ファクトリーマシンのモトクロスバイク「RC250MA」で1991年の全日本チャンピオンを獲得します。量産型HFTは2008年の未来型クルーザー「DN-01」に採用され、再び日本の公道を走りました。

 また近年では、発進にはクラッチレバー操作が必要ですが、走行中はクラッチ操作が不要なクイックシフターや、MotoGPのシームレスミッションも開発されました。

「エアラ」は1977年に発売されているので、世代的には「ジュノオM型」と「DN-01」の間ですが、構造的には全く違うもので、4輪車のオートマチックトランスミッションとしてお馴染みの「ホンダマチック」を搭載しています。

 ホンダマチックは「CB400T」などにも搭載され、4輪用のシステムをバイクのエンジンに合わせてコンパクトに設計し直し、大きくハミ出すことなく収まっています。

 構造的には油圧のトルクコンバーターを装備し、駆動力を滑らせながら発進や変速が可能。変速はそれぞれクラッチを設けて変速の際に切り替えるという構造でした。

丸型2眼メーターにはそれぞれローレンジが0-100km/hまで、スターレンジが0-155km/hまでをカバーする表示と、各レンジのインジケーターがある丸型2眼メーターにはそれぞれローレンジが0-100km/hまで、スターレンジが0-155km/hまでをカバーする表示と、各レンジのインジケーターがある

「エアラ」はエンジンを始動し、シフトペダルでローギアに入れて、アクセルを回せばそのままスムーズに発進できます。通常走行用のギアである「スターレンジ」を選択すれば、後はアクセルを回すだけで市街地から高速道路まで走行できます。

「ローレンジ」は曲がりくねった急坂の上り下りでも使用できます。停車の際にはサイドスタンドをセットすると、自動的に「Nレンジ」(=ニュートラル)に戻り、誤発進を防ぐ工夫もありました。

 走行中にライダーがシフトを切り替えるという意味では、セミオートマチックトランスミッションと言えそうですが、操作的には4輪のオートマとほぼ同じです。

 ベースとなった車体は「CB750フォア」ですが、ホンダは排気量750ccクラスのロングツーリングバイクとして打ち出し、それまでの大型バイク「ナナハン」が持つ豪快なイメージとは対照的な、大人のバイクとして相応しい雰囲気に仕上げられています。

 車体各所の仕上げは品質に気を配ったもので、静かで迫力ある佇まいと、フラットなトルク特性のエンジン、ゆったり走れる大人のバイクとホンダマチックとの組み合わせは、新2輪世紀の幕開けを感じさせるものでした。

ヘッドライトはハロゲンバルブを使用。左グリップにはクラッチレバーが無いヘッドライトはハロゲンバルブを使用。左グリップにはクラッチレバーが無い

 しかし速さや性能の向上が著しい1970年代のバイクシーンにおいて、「エアラ」はユーザーにさほど注目されることなく生産を終了します。販売的には成功しませんでしたが、現在の大型バイクのDCT隆盛を見ると、「やっと時代が追いついた」とも言えます。

 モデル名の「エアラ(EARA)」とは、時代を意味する英語のERA(エラ)と、Automatic(オートマチック)のAを組み合わせて作られました。また「オートマチックの時代を開く」との意味合いも込められているそうです。

 ホンダ「エアラ」(1977年型)の当時の販売価格は53万8000円です。

■ホンダ「EARA(エアラ)」(1977年型)主要諸元
エンジン種類:空冷4ストローク並列4気筒SOHC
総排気量:736cc
最高出力:47PS/7500rpm
最大トルク:5.0kg-m/6000rpm
全長×全幅×全高:2260×855×1230mm
始動方式:キック式/セルフ式併用
車両重量:262kg
燃料タンク容量:19L
フレーム形式:ダブルクレードル式
タイヤサイズ(F):3.50H19-4PR
タイヤサイズ(R):4.50H17A-4PR

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
※2023年12月以前に撮影

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