ドゥカティがハイパフォーマンスシングルを新開発!! 「ハイパーモタード698モノ」で高揚感に浸る
バイクのニュース / 2024年6月6日 11時10分
ドゥカティが市販最強スペックを持つ単気筒エンジンを新たに開発。それを最初に搭載する「Hypermotard 698 Mono」の試乗会が、千葉県の茂原ツインサーキットとその近郊の一般道で開催されました。最新ビッグシングルスポーツの乗り味は、果たして!?
■かつてないほど真剣に開発された、ドゥカティらしさに溢れる市販単気筒エンジン
パフォーマンスを重視したエンジン開発は、全メーカーが縮小傾向にありますが、世界中のレースで圧倒的な強さを誇るドゥカティは違います。この時代に市販最強の単気筒エンジンを作り上げてきたのです。どの時代でもマイナーな存在だったビッグシングルスポーツのエンジンを、かつてないほど真剣に開発し、そして信じられないほどのパフォーマンスを与えることに成功したのです。
サーキットでドゥカティ新型「Hypermotard 698 Mono」(本国仕様)に試乗する筆者(小川勤)
2023年に発表された「スーパークアドロモノ」と名付けられたこの単気筒エンジンは、ボア×ストロークが116×62.4mmという超ショートストローク。排気量は659ccで、77.7psを9750rpmで発揮し、レブリミットは10250rpm(1速は10000rpm)という超高回転に設定されています。
この高回転でのパフォーマンスを実現するのは、ドゥカティがMotoGPマシンや数々の市販車で使ってきた「デスモドローミック」というバルブ開閉機構です。
通常のバルブスプリングとは異なり、デスモドローミックは高回転で正確にバルブの開閉を追従でき、さらにフリクションの少なさやカムシャフトの設計の自由度の高さなど、パフォーマンスを追求するエンジンにおいて様々なメリットがあるのです。
この夢のようなスペックを実現した「スーパークアドロモノ」を最初に搭載したドゥカティが、「Hypermotard 698 Mono(ハイパーモタード698モノ)」なのです。
エンジンを楕円状の鋼管パイプを使用したトレリスフレームに懸架し、スイングアームはエンジンから生えるピボットレス構造で、エンジンを車体剛体の一部に使うその考えは合理的かつシンプル。
サスペンションはフロントフォークにマルゾッキ製、リアにザックス製を装着。フロントのブレーキディスクは片側のみで軽量化を追求しています。
「ハイパーモタード698モノ」は、今回試乗するスタンダードのほか、派手なグラフィックとクイックシフトを標準装備する「REV」の2機種が用意されています。価格(消費税10%込み)はスタンダードが170万円、REVが182万円となっています。
■速さだけでなく、官能的な気持ち良さを備えた「スーパークアドロモノ」
2023年末の発表から「ハイパーモタード698モノ」に試乗できる日を本当に楽しみにしていました。茂原ツインサーキットを会場に、その周辺の一般道で本国仕様のメディア向け試乗会が行なわれました。日本仕様は前後サスペンションが40mm短くなり、それによりシート高も904mmから864mmになります。身長165cmの僕(筆者:小川勤)では本国仕様はまったく足が地面に着かず、少し緊張感が伴います。
サーキットでは電子制御を駆使しながら、自分好みのライディングスタイルに当てはめていくのが楽しい乗り味でした
エンジンを始動すると、とても軽やかな単気筒サウンドが響きます。ブリッピングすると659ccの大排気量を感じさせない「さすがドゥカティ」というレスポンスを披露。これだけで期待が高まります。
とても小さなメーターの中には様々な情報が詰め込まれており、「スポーツ」「ロード」「アーバン」「ウエット」のライディングモードから「スポーツ」をセレクト。コースインすると信じられないほど早く回転が上がっていきます。
タイヤを温めるために中速をキープしながら走ると、振動もなく、それでいてトルクフル。スロットルを開けると速さの中に官能的な刺激があり、その気持ち良さは思わずうっとりとしてしまうほどです。
単気筒エンジンらしい軽快感が際立つ馴染みやすい車体は、あっという間にペースアップをさせてくれます。スロットルを大きく開けるとタコメーターは10000回転を目指して一瞬で吹け上がり、3速、4速とシフトアップしても加速は鋭く、簡単に前輪の接地感がなくなります。
スペックの数値はそのまま体感することができ、それが市販最強単気筒エンジンであることを実感するのに時間はかからないでしょう。
■足着き性が大幅に向上する、日本仕様に期待!
スポーツシングルエンジン好きなら、一瞬でこのエンジンの虜になってしまうと思います。それほど「スーパークアドロモノ」は市販単気筒エンジンとして群を抜いた存在なのです。ピークパワーを発揮するのは9750rpmですが、軽々と10000回転を超え、オーバーレブ特性もマイルド。
軽快さと細さが際立つ一般道での乗り味。強心臓のパンチ力も楽しいですが、穏やかなモードで走るのも快適です
ペースを上げると小柄な僕には若干荷重ポイントが高く、前輪が少し遠いような感じがしますが、このあたりは国内仕様に乗って改めて見極めたいと思います。
サーキットを抜け出し、次は一般道へ。「ロード」「アーバン」「ウエット」のモードを切り替えて走ります。「ロード」は十分な速さと気持ちよさを披露。「アーバン」と「ウエット」はとても穏やかです。
一般道でも車体の軽さと細さが際立ち、エンジンは低中速でも小気味よく、それでいて軽やかな吹け上がりを見せてくれます。
サーキットでの高回転の伸びも見事でしたが、低中速域のセットアップも素晴らしく、扱いやすさが光ります。昔なら、低回転と高回転の両立は叶わなかったはず。さらにメンテナンス距離も長く、単気筒エンジンの弱点とも言える耐久性も見事に克服しています。
ドゥカティにとってはかなり久しぶりとなる単気筒エンジンを搭載する市販車。今後「スーパークアドロモノ」を使った車種展開にも期待したくなりますね
今の時代にこんなエンジンを作れるのは、きっとドゥカティだけでしょう。MotoGPやWSBKといったレースでのトップエンドだけでなく、市販車でも他の追従を許さない領域で勝負するのがドゥカティなのです。
モタードからスタートするドゥカティの新しい物語は始まったばかり。「スーパークアドロモノ」を使った次の物語に期待するのは気が早いかもしれませんが、想像するだけでワクワクしますね。
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