【MotoE第4戦イタリア大会】スケジュールは変則的に。レース間2時間で充電は間に合ったのか?
バイクのニュース / 2024年6月9日 11時10分
電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』の第4戦イタリア大会が、2024年5月31日から6月1日にかけて、ムジェロ・サーキットで行なわれました。イタリア大会ではレース1の赤旗によってスケジュールが変則的になりました。充電時間は十分だったのか? 今後の課題は? MotoEエグゼクティブ・ディレクターのニコラ・グベールさんと、ドゥカティ eモビリティ・ディレクターのロベルト・カネさんに取材しました。
■フル充電にかかる時間が、大幅に短縮された
電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』(以下、MotoE)第4戦イタリア大会は、イレギュラーなスケジュールになりました。毎大会、MotoEは土曜日に2レースが行なわれます。今回のイタリア大会も同じで、まず12時15分にレース1がスタートしました。
【MotoE第4戦イタリア大会】昼のレース1で赤旗中断が発生。ピットレーンに戻ったマシンが、ポータブル充電器(右の紫の箱)から充電を行なっている
しかし、2周目の最終コーナーでルーカス・トロヴィッチ選手が転倒を喫し、赤旗が提示されます。これによってライダーたちはピットレーンに戻りました。そして、レース再開を待つ間、ピットレーン上で、ポータブル充電器からマシンへの充電が行なわれました。
トロヴィッチ選手の救護活動とその後のタイムスケジュールから、レース1はフルレースディスタンスの7周で、レース2後の18時40分スタートで行なわれる、と発表されます。
以降のタイムスケジュールについてまとめると、以下の状況です。
・16時10分 レース2スタート(7周)
・18時40分 レース1スタート(7周)
2019年から始まったMotoEには、これまでにも赤旗による中断はありました。2020年フランス大会レース1では、やはりライダーの転倒によって赤旗中断になっています。ただ、このときは1周目の転倒であり、確認できる限り、レース再開を待つ間にマシンへの充電は行なわれていませんでした。赤旗中断中のピットレーン上での充電は、今回が初めてのケースです。
ここで気になるのは、バッテリー充電についてです。「ピットレーン上で充電し、もしレースが再開された場合、バッテリー残量はどのように管理されるのか?」、そして「レース2終了後、レース1までの2時間以下の時間で、フル充電はできたのか?」ということです。
夕方のレース1を終えたあと、MotoEエグゼクティブ・ディレクターのニコラ・グベールさんに「ピットレーン上での充電」について質問しました。
「ポータブル充電器はエネルギー量が少ないので、充電できても1周だけなのです。今回のように、数周分をこのポータブル充電器だけで充電することになると、フルレース分の充電はできません。また、ポータブル充電器では、急速充電もできません。ピットの後ろにある充電器は17kWから20kWで、急速充電ができますが、ポータブル充電器は8kWから10kWで、速さは半分なのです」
ポータブル充電器はグリッド上で、サイティングラップを走った1周分の充電を行なうのが主な目的です(このポータブル充電器からタイヤウオーマーにも給電されています)。
「つまり、今はふたつの課題があります。時間(マシンへの充電時間)と、エネルギー(ポータブル充電器ではエネルギー量が十分ではない)です」
赤旗中断時点のバッテリー残量でレースを再開する、という可能性についても考えられますが、それは周回数によるでしょう。MotoEの全周回数は7~8周と短いのです。レース中盤に中断され、再開されたレースが例えば4周だったとしたら、あまりにもレースとしての魅力に欠けます。
これに近い理由で、2024年はイギリスがMotoEのカレンダーから外れているのです。シルバーストンはコース全長が長いため、雨などで周回数が減算された場合、5周のレースになるからです。よって、レースの途中で中断が発生した場合、バッテリー充電をどうするのかは、今後の課題となるでしょう。
ちなみに、グベールさんはセッション間の通常の充電について、来年はさらに充電時間が短縮されると明かしました。「来年は別のバッテリーで、もっと速く、30分くらいで充電できるようになりますよ。開発中です」ということです。
【MotoE第4戦イタリア大会】レース2は、ケビン・ザンノーニ選手(#21)が優勝
さて、もうひとつ気になるのが、レース2と夕方のレース1との間が2時間以下で、マシンへの充電は間に合ったのか? ということです。これについては、MotoEに電動レーサー「V21L」を供給するドゥカティのeモビリティ・ディレクター、ロベルト・カネさんに話を聞きました。
「わたしたちは充電時間についていつも計算していましたし、(充電時間は)十分でしたよ。バイクがフル充電にかかる時間はだいたい45分です。バッテリーの冷却システムがよく機能していますからね」
ドゥカティ「V21L」には、ドゥカティが独自開発したバッテリー冷却システム(水冷)が採用されています。カネさんは、電動バイクにとってバッテリーの温度管理が非常に重要だと分かっていたからです。こうした温度管理により、走行後の充電と2時間以下でのフル充電を可能にしたわけです。
今回の件で、充電に関する現状を確認できたと言えるでしょう。
イタリア大会のレースは、レース2で前戦カタルーニャ大会レース2で初優勝を飾ったケビン・ザンノーニ選手が優勝し、レース1では2023年チャンピオンのマッテア・カサデイ選手が優勝しました。
また、1km以上あるストレートで最高速が更新され、282.7km/hが記録されています(2023年の最高速記録は281.9km/h)。
MotoE第5戦オランダ大会は、MotoGP第8戦オランダGPに併催で、6月28日から29日にかけてTT・サーキット・アッセンで行なわれます。
■FIM Enel MotoE World Championshipとは
2019年にスタートした電動バイクによるチャンピオンシップ。2019年から2022年まではWorld Cup(ワールドカップ)として開催されていたが、2023年よりWorld Championship(世界選手権)となった。MotoGPのヨーロッパ開催グランプリのうち数戦に併催され、各土曜日に2レース開催で全8戦16レースが行なわれる。バイクはドゥカティ「V21L」のワンメイクで、タイヤはミシュラン。9チーム18名のライダーが参戦している。
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