その転がりに歴史あり!? 自転車の車輪はどのように進化した?
バイクのニュース / 2024年6月12日 12時10分
自転車の基本的な機能である「走る・曲がる・停まる」を支える構造について、意外と知らないことがあるかもしれません。自転車の理解を深めることは、より気持ち良く自転車に乗るための手助けになるかも。自転車の「車輪」に注目してみます。
■「走る・曲がる・停まる」の根幹を支える車輪
クルマやバイクと比べると圧倒的にシンプルな構造を持つ自転車ですが、基本的な機能である「走る・曲がる・停まる」に必要な構造はほぼすべて目に見えていると言えます。基本的には、骨格となる「フレーム」、走行に必要なタイヤやチューブで構成される「車輪」、操作に必要な「ハンドル」、チェーンなどを含む駆動部である「ドライブトレイン」、そして停まるための「ブレーキ」という5つのパートで構成されています。
自転車の車輪にも、進化の歴史があった
いずれも誰に習う訳でもなくその仕組みについてなんとなく知っていると思いますが、深掘りしてみると意外と知らないことが見えてくるかもしれません。自転車の理解を深めることで、より気持ち良く自転車に乗るきっかけにもなるでしょう。今回は自転車の基本構造の中から「車輪」に注目してみたいと思います。
ひとことで「車輪」と言っても、さまざまな部品から成り立っています。外側から見ていくと、一般的には「タイヤ」「チューブ」「リム(リムバンド)」「スポーク」「ハブ」で構成されています。金属製の輪である「リム」と中心の軸となる「ハブ」が鉄線のような「スポーク」で繋がることで構造体となり、その外側にチューブとタイヤが装着されることで車輪全体が出来上がります。
そもそも、自転車の車輪も誕生した約200年前は木製でした。まだゴム製のタイヤやチューブは存在せず、リムもスポークも木製で、現在とは比べ物にならないほど太いものでした。
その後、表面が削れないように鉄の板を貼ってみたり、中身のつまったゴムの塊などで作られるなど改良は進みます。そして1800年頃になると、軽量化のために、技術力の向上もあって現代に通じる鉄線を張った車輪が登場したと言われています。
ただ、スポークはこの段階で鉄製に変わりましたが、リムは木製だったそうです。リムが鉄製に変わるきっかけのひとつが、空気入りのタイヤ・チューブの誕生です。
1888年に世界的なタイヤメーカーの創設者として知られるジョン・ボイド・ダンロップが空気入りタイヤを実用化しました。それによって、あまりに乗り心地が悪く「ボーンシェイカー(骨ゆすり)」とも呼ばれた自転車の乗り心地は格段にアップします。ところが、空気入りタイヤの逃れられない欠点として、パンクが起きてしまうようになります。
その当時、空気入りのタイヤは現在のようにタイヤとチューブに分かれておらず、ゴムの浮き輪のようなものを木製のリムに布などでぐるぐる巻いて固定していたそうです。道路事情も良くなかったのでパンクも起きやすく、修理するためにいちいち布を外さなければならず、大変手間がかかっていました。
そこで、現在のようにリムにタイヤのフチを引っかけて固定し、中にチューブを入れるという脱着が容易な仕組みが開発されることになります。当初はそれも木製で作られていたようですが、強度不足でやがて金属製で作られることになります。こうして自転車の車輪は現在の形の原型となる姿を手に入れたそうです。
ちなみに、上記でサラッと触れたスポークですが、じつはこちらにもリムやタイヤ・チューブと同様に進化の歴史があります。誕生当時のスポークはハブとリムをまっすぐ直線でつなぐ「ラジアル組み」という方法での張られていました。この組み方はハブとリムを最短距離でつなぐのでスポークが短くなり、結果として重量が軽くなるという利点などが存在し、現代でもロードバイクなどスピードを求める自転車で使われています。
ただ、残念ながら衝撃に弱いというデメリットがあります。構造上、路面から衝撃を受けた際に車輪の一部分だけにダメージが集中してしまうのです。そこで誕生したのが、スポーク同士を交差させて組み上げる「タンジェント組み」です。交差させることでハブを中心にねじれモーメントが発生して衝撃を分散させるので、強靭な構造体となっています。
一見、どれも違いが無いような車輪ですが、たとえば靴によって歩き・走り心地が変わるように、材質の違いや組み方の違いがその走り心地に影響します。
車輪の進化の歴史に思いを馳せつつ、自転車の車輪に意識を向けて走ってみて、その感触を実感してみると意外な気付きがあるかもしれません。
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