年々増加するEVの「電欠」の救世主となるか!? 給電できるバイクの仕組みと課題とは?
バイクのニュース / 2024年6月15日 7時10分
ピストンリング、シリンダライナなどの自動車部品に加え、アルミ、ゴムや樹脂など多種多様な事業に取り組むTPR株式会社は、「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」で緊急時対応用の給電システムが搭載されたバイクを出展しました。
■増加するEVの「電欠」
ピストンリング、シリンダライナなどの自動車部品に加え、アルミ、ゴムや樹脂など多種多様な事業に取り組むTPR株式会社は、「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」で緊急時対応用の給電システムが搭載されたバイクを出展しました。
TPRが開発中の緊急時対応用の給電システム搭載バイク(250ccガソリン車)
昨今では、政府が2035年までにガソリン車の新車販売禁止を実現すると発表し、国内メーカーから急速充電10分・航続距離1200kmを可能にする「全固体電池」を搭載したEVの実用化を目指すと発表されるなど、EV市場の割合は増加していく傾向にあると予想されています。
しかし、ロードサービスを全国展開するJAFによると、2020年度、同社が実施したEVのロードサービス件数は5804件で、そのうち573件が「EVの駆動用電池切れ(電欠)」(全体の約10%)、2022年の電欠件数は700件を越え、年々増加傾向にあるといいます。
そうしたことを踏まえ、JAFでは応急的な急速充電が可能なサービスカーの試験運用を開始するなど、新たなサービス創生に向けて動きだしていますが、TPRが開発するシステムは、運用されれば2輪ならではの機動性を活かした迅速な対応が期待される画期的なものです。
■クランクシャフトに発電用モーターを接続
TPRが開発中の緊急時対応用の給電システム搭載バイク(250ccガソリン車)。車体右側、クランクケース横には発電用のモーターが搭載されています
TPRが開発するシステムは、エンジンのクランクシャフトに発電用のモーターとクラッチを接続したもので、発電機からコンバータ、商用電源化を行うパワーコンディショナーを介して充電器へ電気を供給。
あたかもクロスオーバーモデルを彷彿とさせる仕上がりとされています。
TPRが開発中の緊急時対応用の給電システム搭載バイク(250ccガソリン車)。タンデムシート右横にはサドルバッグ形状の充電器が備えられています
同車両の開発経緯について、TPRの営業企画部 伊藤 寿哲さんに話を伺ってみました。
―――給電できるバイクはどのような経緯で開発されたのでしょうか
高速道路で電動自動車が電欠したなどというニュースも耳にしましたので、“バッテリーEVの社会でなにか役に立てないかな“と考えた際にこの車両を開発することにしました。
ベースとなったのは250ccのガソリン車ですので、立ち往生したところにエンジン車で駆けつけて、現地で発電して給電するという仕組みです。
ちなみに、メーカーとの共同開発ではなく、独自開発となっています。
TPRが開発中の緊急時対応用の給電システム搭載バイク(250ccガソリン車)。発電時はコンピューターにより回転数の制御が行われています
―――給電システム搭載車はどれぐらいの発電量、充電・走行が可能なのでしょうか。
基本的に最大出力4.95kWなので、30分の充電で現時点では10km程度走れるかどうかという感じです。
―――バイクはアイドリング状態でも発電可能なのでしょうか。
回転を上げないといけないので、コンピューターを使って発電中はエンジン回転を自動で6000rpm程度まで引き上げて使うような仕組みです。
■課題はユニットの小型化
―――バイクの排気量は250cc程度が望ましいのでしょうか?
とりあえずは社内にあったバイクでやっているので250ccを使用していますが、欲をいえばもう少し大きい排気量であれば発電量は稼げるかなとは思います。
TPRが開発中の緊急時対応用の給電システム搭載バイク(250ccガソリン車)。ベースモデルから60kg増の車重240kgとなっています
―――エンジンの特性、例えばロングストローク、ショートストロークなどで発電の効率も変わってくるのでしょうか。
正直そこまでは見えていませんが、ある程度トルクは欲しいかなと。そういう意味でももう少し排気量の大きいバイクでやったほうがいいでしょうし、そもそもバランスがあまり良くないので、ユニットの小型化も進めないといけないですね。
―――車両重量はどれくらい増加しているのでしょうか。
もともとは180kgですが、一式でプラス60kgとなっています。240kgあるに加えて少しバランスが偏っている場所があるので、かなり特殊な乗り味と聞いています。まだ登録していないので、行動では走行していませんが、工場内では走行しております。
TPRが開発中の移動型給電システム。バイク以外にも四輪車への搭載も構想されています
―――悪路走破性の高いオフロード車などへの転用、災害時などの電気不足解消なども想定されているのでしょうか。
オフロード車でやってほしいというご意見はよく耳にしますね。災害時でも強いですし。
現状、ベースのバイクがオンロードですのでオフロード車ほどの悪路走破性はないかもしれませんが、レジャー時などでもこういったものが使えるのではないかと考えています。
―――バイク以外の転用も想定されているのでしょうか。
バイクに限らず色々なもので考えていきたいとは思っていますが、機動性を考えるとオートバイというところに行き着いてしまいますかね。あとはバイクの場合ですと雪道どおするの、などいろいろと課題もあります。
TPRが開発中の緊急時対応用の給電システム搭載バイク(250ccガソリン車)。パワーコンディショナーも容積50%減を狙った小型化の開発が進められています
―――今後の展開について教えて下さい。
家電を動かす目的としてより小さいバイクに搭載するなど、今後も様々な展開・転用を考えていきたいです。
※ ※ ※
東京都においては、脱炭素に向けた「ゼロエミッション東京」の取り組みのなかで、2035年までに都内で新車発売される2輪車すべてを「非ガソリン化」するという内容も掲げられていますが、TPRが開発する給電システム搭載車が来たるべき時代の救世主になる日もそう遠くないのかもしれません。
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