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後側方警戒支援システムの最新技術 聴覚で直感的に支援するヤマハ「感覚拡張HMI」について開発者に直撃インタビュー

バイクのニュース / 2024年6月16日 7時10分

ヤマハ発動機は、「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」で現在研究中の新技術「感覚拡張HMI」(HMI=ヒューマン・マシン・インターフェース)を出展しました。

■人に負荷を少なく、楽しみを最大限に

 ヤマハ発動機は、「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」で現在研究中の新技術「感覚拡張HMI」(HMI=ヒューマン・マシン・インターフェース)を出展しました。

ヤマハが研究中の新技術「感覚拡張HMI」(HMI=ヒューマン・マシン・インターフェース)シミュレーターの様子ヤマハが研究中の新技術「感覚拡張HMI」(HMI=ヒューマン・マシン・インターフェース)シミュレーターの様子

 現在、自車周辺環境の認識を支援する技術はミラーやカメラなど視覚を介した技術が主流ですが、ヤマハが研究する感覚拡張HMIは、聴覚を利用して後方認知を直観的に支援する技術です。

 同技術は、2017年にカリフォルニア工科大学との共同研究により開発されたもので、学会発表や特許の取得、基礎研究、いわゆる学術的な研究を経てシミュレーターを使った応用研究にたどり着いています。

ヤマハが研究中の新技術「感覚拡張HMI」(HMI=ヒューマン・マシン・インターフェース)。聴覚を利用して後方認知を直観的に支援しますヤマハが研究中の新技術「感覚拡張HMI」(HMI=ヒューマン・マシン・インターフェース)。聴覚を利用して後方認知を直観的に支援します

 今回の研究・開発を行った技術・研究本部 技術戦略部 博士(心理学)の末神 翔さんに話を伺ってみました。

―――感覚拡張HMIの一番の目的を教えて下さい。
 後ろから来たものを分かりやすく通知してあげる技術の開発で、いわゆるレーダーで探知して伝える後側方警戒支援システムの聴覚版となります。

 今の技術は見えないものを見せる技術なんです。しかし、人間の脳は後ろから来るものを聴覚で捉えるので周りのものがどういうふうに移動しているのかを、ある程度音で認識する仕組みになっています。

 本来、見えないもの、例えば『気配を感じる』というのは『音』なんです。

 なので見えないものを見せるというのはエンジニアリング的には正攻法なんですけど、人間の視点だと正攻法ではないんです。

 我々が日常的に行っている『聴覚』で認識するというほうが、遥かに自然で負荷が低いですし、負荷が少ないということはより楽しめる、ということにも繋がります。

ヤマハが研究中の新技術「感覚拡張HMI」(HMI=ヒューマン・マシン・インターフェース)シミュレーターの様子ヤマハが研究中の新技術「感覚拡張HMI」(HMI=ヒューマン・マシン・インターフェース)シミュレーターの様子

―――おそらくは、目線を動かすことが減るということに繋がると思いますが、そうした点もメリットと考えていいのでしょうか。

 視覚的に提示するのは結構リスクがあって、あちこちに提示すればするほどよそ見してしまうんですよね。

 あとはミラーで後ろのものを見るという時も目は前を向いているので、前を向いているという情報が認識されるんです。

 一方で対象物は後ろにあるじゃないですか。前を見ながら後ろを見るというのは凄く難しくて、かつ鏡に写っているのでそれを反転しないといけないので認知するまでに時間はかかるんです。

 また、認知に時間がっかるということは運転に集中できないですし、楽しめないということにも繋がります。

―――ミラーなどを付けずに走るレースなどでは特に重宝されそうな技術ですが、そういたった技術転用も考えられるのでしょうか。

 まさに仰るとおりで、レースなど極限で少しのリソースを争う状態こそ効果を発揮します。

 当然、安全性も高まりますが、そうした安全性と楽しさを両立できるのがヤマハらしい技術だと考えています。

■7つのスピーカーで音を伝達

―――後ろから伝わる音はどのような仕組みで伝達しているのでしょうか。

 ヘルメットの中にスピーカーが7つ入っています。後頭部中央から下側に扇形に配置されていますが、後ろから聞こえる音、基本的にはロードノイズですが、道路とタイヤの接地面から音がなります。

ヤマハが研究中の新技術「感覚拡張HMI」(HMI=ヒューマン・マシン・インターフェース)。ヘルメット後頭部、扇形に設置されたスピーカーにより後方からの距離、位置などを伝達しますヤマハが研究中の新技術「感覚拡張HMI」(HMI=ヒューマン・マシン・インターフェース)。ヘルメット後頭部、扇形に設置されたスピーカーにより後方からの距離、位置などを伝達します

 はるか遠くの音は耳の高さから聞こえるんですが、近づくにつれて低くなり、自分にぶつかる瞬間は足元から聞こえるんです。

 なので、耳の高さから足元までの一軸で距離を表現できるんです。

 直撃コースなのか、横に逸れるかは正中線(人間の前面、または背面の中央を縦にまっすぐ通る線)からの角度で表現できます。

 そのため扇形の配置にすれば、どういうコースでどれくらいの距離にいるのかというのは表現できるんです。

 ただし、これは二輪に限定する技術ではないので、四輪でしたらシートにスピーカーを埋め込んだり、立体音響技術を使うなど、色んな方法があると思います。

 また、何らかの理由で首が回りにくい方もいらっしゃると思いますが、そうした方にはうってつけの技術になるでしょう。

ヤマハが研究中の新技術「感覚拡張HMI」(HMI=ヒューマン・マシン・インターフェース)。ヘルメット内に流される音についても研究されていますヤマハが研究中の新技術「感覚拡張HMI」(HMI=ヒューマン・マシン・インターフェース)。ヘルメット内に流される音についても研究されています

―――音が聞こえない方にむけて、振動で伝達するなどの展開もありえるのでしょうか。

 今のところは音で考えていますが、音と振動は割と近い存在なので可能性はあると思います。

 ただし、気配のようなものを感じる際に何で実現しているかというと、音、または触覚(微妙な風を体毛で感じる能力)が主なので、基本は音で進めますが、耳が聞こえない方はまた他の感覚を使ってらっしゃいますので、そこに対しては色んな可能性があると感じています。ですから、発展の可能性はもちろんあります。

 もともとこの研究も耳の聞こえない方の学術的な研究もヒントになっています。耳の聞こえない方の聴覚領域は、実は周辺視野のサポートをするようになるんです。

 ですので、聴覚は実は周辺視野をサポートしているんです。

 そうした観点からみても、見えない、もしくは見にくい範囲を聴覚でサポートするというのは理にかなっているんです。

―――目処が立ったら市販車への転用もありえるのでしょうか。

 もちろんです。まだ目処は立っていませんし、二輪なのか四輪なのか、ほかのもので採用するかも含めて検討していますし、一緒にやってくださるパートナーも探しています。

 楽しいかつ安全というのを世の中に普及させるためにも実現したいですね。

※ ※ ※

 ちなみに、伝達の際に使われている音はヤマハのサウンドチームの協力を得たもので、後方に車両がいる場合は一般的に使われる「ピーピー」といった警告音ではなく不協和音、両が通過して安全になると和音に変化。これらの音についてもライダーにとって何が最適なのか、研究が続けられるといいます。

さん

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