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俺のやってきた35年間を返せ!! スポーツ走行派にこそ欲しいホンダEクラッチ

バイクのニュース / 2024年6月14日 12時10分

ホンダEクラッチメディア向け試乗会が開催されたのは、クローズドコースの修善寺サイクルスポーツセンター。ライダーの手動によるクラッチレバー操作を不要とする機構をホンダはコレまでも開発し続けてきましたが、Eクラッチはマニュアルトランスミッションの進化版だといいます。いったいどんなものか、バイクジャーナリストの青木タカオさんの体験レポートです。

■もっとバイクを自分で操りたくなる!

 ホンダ開発陣は「“操る楽しさ”を求める幅広いライダーのライディング体験の質を向上させる」「幅広いライダーにワンランク上の走りを」と発表時に言いましたが、こうして乗るまではピンときませんでした。

 クラッチを巧みに操作してみせてこそ、バイクの運転は面白い。それをバイク任せにして、なにが楽しい!? そんな声も耳にしますが、実際に体感してみてわかりました。スポーツライディングする楽しさは一切失われていません!

ホンダの意欲作「E-Clutch(Eクラッチ)」を筆者(青木タカオ)が実際に走らせ体感!ホンダの意欲作「E-Clutch(Eクラッチ)」を筆者(青木タカオ)が実際に走らせ体感!

 それどころか、ライダーがもっとやれること、集中すべきことが明確になってスポーツライディングへの意欲がますます湧いてくるではありませんか!! 新型『CB650R』にて体験したホンダの意欲作「E-Clutch(Eクラッチ)」です。

 毎日のようにバイクに乗っていると、ただ走らせるだけならそこまで難しいとは感じないオートバイの操作ですが、無意識のうちに全身でバランスをとりつつ、両腕でハンドルをコントロールし、右手はスロットルグリップとブレーキレバー、左手はクラッチレバー、さらに右足はブレーキ、左足はシフトチェンジを操作するという具合に、まさに全身を駆使して走らせるモーターサイクル。

 ライディングはじつに奥深く、エキスパートやベテランになっても探究心を失うことはありません。難儀だからこそ夢中になれる。多くのライダーから聞かれる意見です。

 筆者もまた、クラッチ操作をなくしてしまうことに対しては懐疑的でした。スクーターも所有しますが、それは移動手段として利便性に優れるところが多いからで、オートバイを操るという意味合いからすれば、やはりマニュアルクラッチが絶対的におもしろいのは言うまでもありません。

Eクラッチ装備車での走行は、マニュアル派の筆者も虜にしてしまったEクラッチ装備車での走行は、マニュアル派の筆者も虜にしてしまった

 しかしEクラッチは、マニュアルシフト派の自分でさえも虜にしてしまいます。クラッチレバー操作を完璧にこなしてくれ、それ以上のこと、シフトチェンジやスロットルワーク、ブレーキ操作、体重移動やステップワークといったライディングの動作ひとつひとつに今まで以上に集中することができ、より研ぎ澄まされた感覚でバイクを走らせることができるのです。

■従来のバイクと変わらない構造に追加装備

 まず誤解しないでほしいのは、Eクラッチはオートマチック機構ではないこと。構造的に見ても、従来のマニュアルトランスミッションエンジンの構造を大幅に変更することなく、クラッチ機構部にクラッチアクチュエーターを追加で搭載するという、とてもシンプルなものです。

クイックシフターと組み合わせ、Eクラッチのモーター機構がクラッチ操作に介入するクイックシフターと組み合わせ、Eクラッチのモーター機構がクラッチ操作に介入する

 シングルクラッチやマニュアルトランスミッションは従来と同じものが使われ、それぞれの機構にもほとんど変化はありません。

 クイックシフターと組み合わせ、Eクラッチのモーター機構がクラッチ操作に介入します。簡単に言えば、従来のバイクの構造をそのままに、ライダーが左手でおこなう一連のレバー操作をやってくれるのです。しかも、人間より上手い。

 車速やエンジン回転、ギアポジションなど車体の状態や、シフトペダル荷重検知による点火時期/燃料噴射時間制御と組み合わせて、クラッチの切断/接続動作を電子制御にておこないます。

■クラッチレバーを握らず1速へ落とす!?

 発進時、ライダーはニュートラルから1速に入れる際、クラッチレバーを握ってクラッチを切った状態にしなければならないのは、二輪の免許を持っていればどなたでもご存知でしょう。

発進時、レバーを握らずとも1速に入れ、スタートすることができる発進時、レバーを握らずとも1速に入れ、スタートすることができる

 これを自動でやってくれるから、ベテランほど慄くかもしれません。レバーを握らずとも、1速に入れることができます。もちろんエンストしません。

 そして、発進時には半クラを巧みに使いつつクラッチミートします。Eクラッチではアクセルを開ければ自動的に、そしてなんとも悔しいことに上級者より上手くクラッチをつなぎます。発進のためのトルクを得ながらも、回転が上がり過ぎないところを使って走り出すから舌を巻くばかりです。

■まるで半クラ職人! Uターンも違和感なし!!

 運転を楽にしてくれるシステムは違和感だったり、もどかしかったりするのが、これまでの経験。しかし、Eクラッチはそうではありません。

 多くのライダーが苦手とする半クラがなんせ上手い。半クラを多用するのは狭い場所でのUターンや極低速走行などです。

極低速でのUターンも半クラッチを使わず速やかに行うことができる極低速でのUターンも半クラッチを使わず速やかに行うことができる

繊細なスロットルワークとクラッチレバー操作が求められ、ライダーは両手のレバー操作に集中しなければなりませんが、これを右手のグリップ開閉だけに専念できるのです。渋滞では絶大な威力を発揮し、ツーリングでも疲労を大幅に軽減するのは言うまでもないでしょう。

 どれほどクラッチミートが巧みなのか。クラッチに負担がかかるので本当はやってはいけませんが、6速で発進してみます。

 すると、エンストするわけでもないし、必要以上に回転数を上昇させるわけでもなく、シームレスにクラッチを繋いでみせたから驚きを隠せません。

■いつでもマニュアル車に戻れる

 クラッチレバーを操作したい時は、好きなタイミングでレバーを握れば、いつでもシステムによるクラッチ制御は終了し、通常のクラッチ操作ができます。そして、クラッチレバー操作を終えれば、すぐにまた自動でEクラッチによる制御が復帰します。

クラッチレバー操作したい時は、好きなタイミングでレバーを握れば、いつでもシステムによるクラッチ制御は終了し、通常のクラッチ操作ができ、クラッチ操作を終えれば、すぐに自動でEクラッチによる制御が復帰するクラッチレバー操作したい時は、好きなタイミングでレバーを握れば、いつでもシステムによるクラッチ制御は終了し、通常のクラッチ操作ができ、クラッチ操作を終えれば、すぐに自動でEクラッチによる制御が復帰する

 走行時はクイックシフターの機能もあいまって、シフトアップ&ダウンでレバーを握る必要はありません。ただし、このコーナーだけはクラッチレバーを握って自分でシフトダウンし操りたいなんていうときは構わずレバー操作すれば、違和感なくマニュアル操作に切り替わります。

 そしてまた、Eクラッチは自動的にアクティブに戻ります。メーターのインジケーターでON/OFFは確認できますが、慣れればそれを見ずとも不安はありません。

■スポーツ走行にもっと夢中になれる

 従来のスポーツバイクと変わらないダイレクトなシフトフィールで、慣れていくとクラッチ操作という動作をしないかわりに、冒頭で報告した通り、もっとスロットルワークを緻密にコントロールできたり、シフトチェンジのタイミングをいろいろと試せたり、荷重移動を積極的かつ丁寧におこなわえるのです。

Eクラッチを使うことで大胆に身体を動かせたり、アクセルを開けることができ、良いこと尽くめなのはちょっとした衝撃だったEクラッチを使うことで大胆に身体を動かせたり、アクセルを開けることができ、良いこと尽くめなのはちょっとした衝撃だった

 自動でスロットルを煽って回転を合わせてくれるオートブリッパーは備わっていないので、シフトダウン時にタイミングを合わせるのも面白味。スポーツライディングがつまらなくなるなんてことはまったくなく、もっと大胆に身体を動かせたり、アクセルを開けることができ、良いこと尽くめなのはちょっとした衝撃ですらありました。

 まだまだライディング技術が未熟だからでしょう。逆に考えれば、クラッチ操作にこんなにも自分は神経を費やしてしまっていたのかと、損した気分にもなるのです。

メーターディスプレイのシフトインジケーターが点滅し、ギヤが適切でないことを知らせてくれる(写真:Eクラッチ作動時)メーターディスプレイのシフトインジケーターが点滅し、ギヤが適切でないことを知らせてくれる(写真:Eクラッチ作動時)

 停止時もクラッチレバーを握る必要はなく、そのままストップ。勝手に1速に戻してくれるなんていう機能はなく、たとえば3速のままでも発進できてしまうから、ライダーがローに落とすのをサボってしまうこともありえます。そこはメーターディスプレイのシフトインジケーターが点滅し、ギヤが適切でないことを知らせてくれます。

「自分でレバー操作したほうが上手い」と、ホンダ開発チームに言おうと意気揚々と参加したEクラッチ体験試乗会でしたが、秀逸すぎて文句のつけようがありません。これは胸を張っておすすめできます。

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